今週の予想

欧米の株式に注目しつつ、日経平均は底値を探る自律反発の動きも

 今週は、トランプ米政権が発表した給与税減税が盛り込まれる、決定的な財政・金融刺激策が打ち出されるかどうかにかかってきそうです。

 米国株は先週の動きが投げ売り(セーリングクライマックス)に近い形となり、今週から底入れを期待する見方もあります。しかし、今回の下げは収束の見通しが立たない新型コロナウイルスが原因のため、過去の動きがそのまま通用するかどうかは不透明です。そのため、各国の政府が思い切った財政・金融を総動員し、市場の下落を支えられるかどうか試す以外に方法はないと言えます。

 この状況下、日経平均株価は米国株の展開を見ながらの動きとなります。

 需給関係で見ると、12日発表した3月第1週(2~6日)の投資部門別売買動向は、4週連続の売り越しに。今週は17日にFOMC(米連邦公開市場委員会)、18日にパウエルFRB(米連邦準備制度理事会)議長会見、日銀金融政策決定会合、19日に日銀総裁の黒田東彦氏の会見と、日米のイベントが予定されていました。しかし、双方とも予定を前倒し、FRBは事実上ゼロ金利を打ち出し、日銀も金融緩和の強化を決定しました。

 この5週間で2万3,000円台から1万7,000円台割れまで、一直線に7,000円以上も下落しているので、自律反発が起きやすい局面でもあります。

 先週末のNYダウ平均株価が約2,000ドルの上昇を受けて、16日の日経平均は+155円の1万7,586円で寄り付き、その後は、前日終値を挟んだもみ合いでした。ここへ日銀が決定会合を前倒しして、金融緩和の強化を発表。これに反応して一時、上昇しましたが、その後は失速。引けは▲429円の1万7,002円と大幅下落で終わりました。

(今週の指標)日経平均株価

 今週は、欧米市場で新型コロナウイルスの感染拡大の悪材料が広がる中、株式市場の暴落に歯止めがかかるかどうかが焦点。米国政府の大規模財政出動の実現が、相場の回復のカギを握りそうです。そのため、日経平均は欧米株式市場を見ながら当面は、センチメンタルに基づく株価の動きとなっていくため、明確なボトムの見極めはつけにくいところ。しかし、チャートで見ると1万6,000円台はボトム圏の可能性もあり、下げ幅からタイミング的には自律反発するところです。

(今週の指標)NYダウ平均株価

 NYダウは先週末、米国の大規模な財政措置が待たれる中、世界各国が金融・財政刺激策を発表したことが好感され急反発。アップルが中国の一部で営業を再開したこともサポートとなっています。

 しかし、新型コロナウイルスの感染拡大で世界経済の後退は避けられない状況になっています。米国の財政支援策がカギを握っており、トランプ米大統領が推奨している給与税減税が盛り込まれた決定的な政策が早期に発表されれば、相場の回復要因となります。

(今週の指標)ドル/円

 米長期金利上昇でドルが買われた先週に引き続き、FRBが事実上のゼロ金利政策を導入すると15日(日)に発表したことから、今週もドルは底堅い動きが想定されます。FOMCの利下げはかなり織り込んでいるものの、さらに大規模財政出動への期待は意識されており、ドルはしっかりした動きになると思われます。

先週の結果

新型コロナ感染拡大止まらず、米株安を受け一時3年4カ月ぶりの1万7,000円割れ

 3月はじめの週から13日(金)のメジャーSQ(特別清算指数)までの2週間は、大きな上下動を伴った調整になるとしました。先週は円高進行によって上値を重くしており、まず2万円の攻防を想定し、週末にはメジャーSQを控えてボラティリティが高いため波乱商状が続くとしました。

 ところが、想定していたような波乱商状ではなく、世界暴落となって週を通して日本株は全面安商状でした。この背景は、米国を始め世界の主要国に新型コロナウイルスの感染拡大が止まらないことがあります。11日(水)にはWHO(世界保健機関)がウイルスの世界的大流行(パンデミック)を宣言。NYダウは▲2,352ドル(約10%)とブラックマンデー以来の急落となり、下落幅では過去最大となりました。このため世界の株式市場は全面安となって底値が見えない状況です。

 週末の日経平均は一時▲1,869円の1万6,690円まで急落。引けは▲1,128円の1万7,431円でした。2万円攻防の予想が1万9,000円、1万8,000円、1万7,000円を切って1万6,000円台後半まで下げたわけですから異常です。異常の原因の一つには、AI(人工知能)にあると言えます。市場ではAIによる、一定の条件での取引が繰り返されるアルゴリズム取引が超高速で行われています。感情を挟まずに、収束の見通しのない新型コロナウイルスの分析を冷静に行ったため、サーキットブレーカーが発動されるほどの株価の下落が起きたのでしょう。収束のキッカケが出てくると、これとは逆に上昇し続ける可能性があります。チャートを見る限り1万6,000円が当面の下値ポイントのように見えます。しかし、AIの行動からは1万6,000円も1万5,000円も機械的に下げていくことが考えられます。

9日(月):▲406円の2万343円で寄り付き、一時▲1,277円の1万9,472円と1年2カ月ぶりに2万円を割り込みました。後場になると日銀のETF(上場投資信託)買い観測を支えに、大引けにかけて下げ渋りを見せるものの、戻りは限定的で▲1,050円の1万9,698円と大幅続落となりました。 

10日(火):前日の米国市場で、OPEC(石油輸出国機構)プラスでの減産協議が決裂し原油が暴落。これを受けてNYダウが▲2,013ドルの2万3,851ドルの急落となったことで、前場の日経平均は一時▲806円の1万8,891円まで下げましたが、その後、急速に下げ幅を縮小。後場は+272円の1万9,970円まで上昇し、終値は+168円の1万9,867円と3日ぶりに反発しました。日足を見ると下ヒゲの長い陽線となっているので、普通ならここでいったん反発となるところ。しかし、新型コロナウイルスの感染拡大の前では期待できそうにありません。 

11日(水):前日の米政府の景気対策への期待からNYダウは、+1,167ドルの2万5,018ドルへと反発するものの、時間外取引で米株先物が下落していたことで、日経平均は▲108円の1万9,758円で寄り付きました。後場には▲474円の1万9,392円まで下げて、終値は▲451円の1万9,416円の大幅反落となりました。

12日(木):前日の米国市場は政府の景気対策への期待が大きく後退したことで反落に転じ、WHOがウイルスのパンデミックを宣言したことで、NYダウは▲1,464ドルの2万3,553ドルと大幅反落。これによって日経平均も大幅反落。さらに午前10時ごろ、トランプ大統領が英国を除く欧州からの入国を30日間停止したことで、一時▲1,076円の1万8,339円まで下落。終値は▲856円の1万8,559円と大幅続落しました。

13日(金):前日の米国市場では米国政府の経済政策への失望、欧州からの外国人の入国禁止、ECB(欧州中央銀行)が利下げせず欧州株が急落したことを受け、NYダウは▲2,352ドル(下落率10%)とブラックマンデー以来の急落。これを受けて、日経平均は▲376円の1万8,183円で寄り付き後、一時▲1,869円の1万6,690円の暴落。前引けは▲1,478円の1万7,081円、後場になると米株先物が上げに転じたことや円安基調で一時1万8,184円まで戻すものの、買いは続かず終値は▲1,128円の1万7,431円と3年4カ月ぶりの1万7,500円割れとなりました。

 3月のSQ値は1万7,052円だったため、週の終値ではSQ値を上回って引けました。

 引け後の米国市場では、トランプ大統領が「国家非常事態を宣言し、新型コロナウイルス検査体制の強化や、学生ローン金利支払いの免除や、戦略的備蓄からの石油放出など対策を発表したことで、NYダウは+1,985ドルの2万3,185ドルと急反発。ドルが買われて円は1ドル=108円台まで売られました。シカゴの日経先物は+1,140円の1万7,930円でした。