1.米国株はどこまで下がる

 ベア相場入りしたあとも下がり続ける米国株式市場(2020年3月12日時点)。どこまで下がるかは、この相場が心理的パニックによる過剰反応なのか、今後の景気後退を反映したものなのかによって異なります。

 前者であれば、株価の下落は数週間で終わるでしょう。しかし、マクロ経済を反映したものであれば、長期戦になる可能性があります。

S&P500の増減率とGDP成長率の推移(2020年3月12日まで)

出所:ブルームバーグデータより楽天証券作成

 2007~2009年の世界金融危機時のように、GDP(国内総生産)の大幅なマイナス成長が連続することが最悪のケースです。そうなった場合、株価はここからさらに下がるリスクがあります。

 一方、GDPの成長率がマイナスになったとしても、金融危機並みの深刻さではないと分かれば、株価水準は落ち着きを取り戻しそうです。

2.本格反発のタイミングは

 問題は、現時点ではどれほどの経済ダメージが起きているのか、これから起こるのか、見えないことです。株式市場は、先が見えないことを嫌います。

 したがって今後は、毎週発表される新規失業保険申請件数などをヒントにしようとする動きになるでしょう。もし失業者が増えていけば、本格的なリセッションが意識されます。 

 ただし、各国政府が、今後、一段と踏み込んだ救済策を打ち出すことに成功すれば、経済の傷口が広がるのを防げます。

 こうした背景を考慮すると、米国株式市場が本格的に反発するタイミングは、「新型コロナウイルス及び原油価格急落の影響がある程度把握できるようになり、それに対する効果的な対策が打ち出されたタイミング」、さらに、「対策などの効果で経済悪化の影響度合いが改善してきたタイミング」と考えられます。

 それまでは、投機的な買いや売りで市場のボラティリティーが高い状態が続きそうです。

3.物色される高配当ETFにはパフォーマンスの差がある

 本格的な反発時のために、次に投資するタイミングを狙っている投資家も多いと思います。その中でも、金利が低下する中、高配当銘柄が物色される流れが予想されます。高配当銘柄に個別で投資するのも良いですが、こういう相場では、銘柄分散ができるETF(上場投資信託)を保有するのも一つの方法だと思います。

高配当ETFの例

ティッカー 銘柄名 分配金
利回り
経費率
SPYD SPDR ポートフォリオS&P 500 高配当株式ETF 6.25 0.07
DHS ウィズダムツリー 米国株 高配当ファンド 4.98 0.38
DEW ウィズダムツリー 世界株 高配当ファンド 5.00 0.58
VYM バンガード・米国高配当株式ETF 3.69 0.06
HDV iシェアーズ コア米国高配当株 ETF 4.21 0.08
SDY SPDR S&P 米国高配当株式 ETF 3.07 0.35
出所:各種資料より楽天証券作成
※分配金利回りは2020年3月13日時点のもの(分配金は過去1年の実績ベース)

 利回りに目が行きがちな高配当ETFですが、長期保有の場合、経費率もポイントになります。さらに、構成銘柄などの違いによってパフォーマンスにも差が出ています。

高配当ETFの株価推移(2019年12月末を100とした場合)(2020年3月12日まで)

出所:ブルームバーグより楽天証券作成

 最も利回りの高いSPDR ポートフォリオS&P 500 高配当株式ETF (SPYD)は、年初来のパフォーマンスでは最下位となっています。3月12日は年初来で35%下落。直近の構成銘柄トップは以下のとおりです。

SPYDの保有トップ

順位 ティッカー 銘柄名 関連するテーマ
1 GILD ギリアド・サイエンシズ 医薬品
2 DLR デジタル・リアリティ・トラスト データセンター
3 CCI クラウン・キャッスル 無線インフラ/不動産投資トラスト
4 ABBV アッヴィ 医薬品
5 GIS ゼネラル・ミルズ 食品
6 O リアルティ・インカム 不動産投資トラスト
7 IRM アイアン・マウンテン 情報管理サービス
8 LB Lブランズ 衣料品
9 DUK デューク・エナジー 電力・ガス
10 D ドミニオン・エナジー 電力・ガス
出所:各種資料より楽天証券作成(データ取得日:日本時間2020年3月13日)

 一方、パフォーマンスが相対的に健闘しているSPDR S&P 米国高配当株式 ETF (SDY)の直近の構成銘柄トップは以下のとおりです。3月12日時点では年初来で26%下落。SPYDのターゲットはS&P500の高配当指数ですが、SDYのターゲットはS&P1500で、20年以上連続増配か、配当利回りが高いか、などでスクリーニングされています。

SDYの保有トップ

順位 ティッカー 銘柄名 関連するテーマ
1 ABBV アッヴィ 医薬品
2 T AT&T 通信
3 IBM IBM コンピュータ関連製品
4 O リアルティ・インカム 不動産投資トラスト
5 CAH カーディナルヘルス 医療サービス
6 SJM JMスマッカー 食品
7 PBCT ピープルズ・ユナイテッド・バンク 銀行
8 AMCR アムコール 包装
9 NFG ナショナル・フュエル・ガス ガス・パイプライン
10 XOM エクソンモービル 原油と天然ガスの探鉱・生産・販売
出所:各種資料より楽天証券作成(データ取得日:日本時間2020年3月13日)

 両者の直近のパフォーマンスに約10%の乖離(かいり)があることを考慮すると、高配当ETFの中でも分散を図ったほうがよいかもしれません。