パラジウム、ビットコイン、原油、大幅下落

 先週は、パラジウムとビットコイン、原油が大幅下落となりました。
パラジウムとビットコインは、普段から上昇しても下落しても、変動率が比較的高い傾向があります。

 原油は20%を超える、記録的な下落となりました。WTI(ウェスト・テキサス・インターミディエイト)原油先物価格は、先週のはじめに一時30ドルを割れ、逆オイルショックの時期(2016年年初)につけた安値、26ドル台に迫りました。

 急落の主因は、3月6日(金)に行われたOPEC(石油輸出国機構)・非OPECの会合が決裂。2017年1月から続いた協調減産がこの3月末で終了することが決まり、OPECの盟主サウジアラビアが、4月から大増産をする構えを示したことです。

 また、進行中の新型コロナウイルスの世界的な感染拡大によって、石油の消費量が減少する懸念が高まっていたため、OPECなどの生産増加と世界規模の消費減少懸念が同時に発生し、需給バランスが極端に供給過剰に傾く懸念が広がったことも、下落に拍車をかけたとみられます。

 原油相場の下落は、複数の面で主要株価指数の下落要因になります。(1)原油価格が急落すると、世界の景気が急激に悪化しているように見え、リスク資産から手を引く(リスクオン)ムードが強まり、(2)原油価格が下落することで、エネルギー関連株が下落。その株式を構成銘柄としている株価指数の下落の一因となるため、(3)逆オイルショックの際に一部で見られた、産油国の資産売却が株価下落の一因となった経験が想起され、株式市場で手じまいが進む要因になるためなどです。

 上記の複数の側面から、原油相場の急落が、複数の主要株価指数の下落の要因になったと考えられ、先週は主要株価指数の中でも、ナスダック総合指数、S&P500種株価指数、NYダウ平均株価、日経平均株価などの日米の株価指数の下落が目立ちました。日経平均株価については、10%を超える下落率となりました。

 米国内の一部で気温が低くなる予報が出たことなどで上昇した天然ガスと、週初から急反発したドルを除けば、下落した銘柄が多く(23銘柄中16銘柄が下落)、産油国会合の決裂、そして先週に引き続き、新型コロナウイルスの世界規模の感染拡大の影響を受けた週だったと言えます。

3月6日(金)から3月13日(金)までの週のジャンル別騰落率

注:楽天証券のマーケットスピードⅡのデータより楽天証券作成
注:ビットコインは楽天ウォレットののビットコイン価格を参照。日本時間の前々週土曜日午前6時と前週土曜日午前6時を比較
注:プラチナ、パラジウムは楽天証券のマーケットスピードCX内「海外市場」のデータを参照
注:騰落率は週足の終値をもとに算出。(前週終値-前々週終値)÷前々週終値

先週の「ジャンル横断・騰落率」を受けた今週の見通し

 先々週に続き、先週もジャンルを横断し、多くの主要銘柄が下落したのは、原油相場の下落の他、新型コロナウイルスの世界的な感染拡大が挙げられます。

 すでに世界では、米国を含む10を超える国で、新型コロナウイルスの感染拡大に対し、非常事態宣言が発令されています。日本では“まだその状態ではない”ものの、3月13日(金)に新型コロナウイルスを新型インフルエンザ等対策特別措置法の対象にする改正法が成立し、非常事態宣言を発令する準備が整いました。

 また、米欧日などの先進国の中央銀行が、同ウイルスの感染拡大を受けて世界経済に大きな打撃を与えていることを受け、緩和的な措置を実行または実行することを宣言し、金融面での協調体制が整いつつあります。

 それに加えて、G7(先進7カ国)は、同ウイルスへの対策を話し合うため、16日(月)に電話会議を行うことを決めており、感染拡大を防ぐことや、足元の経済情勢を回復させるための具体的な施策が話し合われるとみられます。

 先述のとおり、同ウイルスの発祥の地である中国では、感染者の拡大が小規模になってきていますが、目下、イタリアでは爆発的に、そして米国でも日に日に感染者が拡大していることから、世界全体としては、全く予断を許さない状態です。

 国を超えた協調体制による各種施策が功を奏し、新型コロナウイルス感染拡大が早期に鎮静化することが望まれます。同ウイルスの世界的な感染拡大が与える甚大な影響は、心理的な面だけでなく、実体経済にも及びます。

 実体経済への影響を把握する上で重要な手がかりとなるのが、随時公表される各国の経済指標です。今週は、複数の主要国で、2月の景況感を把握する上で重要な、同月の小売売上高や鉱工業生産が公表されます。

 2月は、中国で月初から月半ばまで爆発的に感染が拡大し、欧米で月半ばから下旬にかけて爆発的な感染が始まった月でした。この2月の小売売上高や鉱工業生産の内容は、各国での感染拡大が実体経済にどのような影響を与えたのかを知る重要な手掛かりとなります。

 3月16日(月)に、中国で2月の小売売上高と鉱工業生産が、17日(火)に、日本で2月の鉱工業生産、米国で2月の小売売上高と鉱工業生産が公表されます。

 その他、先述の金融面での経済対策に関連し、週明け早々に米国が緊急利下げを行いました、3月17日(火)から2日間にわたり、FOMC(米連邦公開市場委員会)が行われ、2日目の18日(水)には、政策金利の公表とパウエルFRB(米連邦準備制度理事会)議長の会見が予定されています。

 今週は、各国の経済指標の内容をにらみながら、各国の経済対策、金融政策の内容が今後に期待を残すものかどうかを見極める週になりそうです。また、先週幅広い銘柄の下落要因にになった原油相場がどの程度反発するかどうかにも注目です。

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