FRBが利下げを発表

 FRB(米連邦準備制度理事会)が3月18日(水)に予定されていたFOMC(米連邦公開市場委員会)を急遽繰り上げ、日曜日の夕方に1%の利下げを発表しました。新しいFF(フェデラルファンズ)レートは0%から0.25%です。

 同時にFRBは米国財務省証券5,000億ドル、住宅抵当証券2,000億ドル、合計7,000億ドルを市場から購入する量的緩和政策を発表しました。

 今回のようにFRBが日曜日の夕方に政策変更を発表するのはとても異例です。FRBがいま動く決断をした理由は、先週、米国債が円滑にトレードできない局面があったからです。

 米国財務省証券(=米国債)の市場は多くの金融商品のレファレンスを提供する金融システムの礎であり、それが機能不全に陥ることは、まずいのです。

 FRBはディスカウントレートも1.50%利下げし、0.25%としました。そして金融機関に「積極的に利用して!」とアピールしました。

先週のNY市場は急落

 新型コロナウイルスとサウジアラビアの原油増産のニュースで、先週のニューヨーク株式市場は翻弄(ほんろう)されました。週間ベースでS&P500総合株価指数は▲8.8%の下落でした。

 俳優トム・ハンクスが新型コロナウイルス陽性だったこと、プロ野球をはじめとするイベントの中止などのニュースに接し米国民は、(新型コロナウイルスは結構重大な事件だな)と感じ始めています。

トランプ大統領、米国行政・立法府の対応は?

 CDC(米国疾病予防管理センター)は一度に患者が病院に殺到しないよう、伝染病拡散の速度を抑えるキャンペーンを展開。たくさんの人が集うイベントの中止を訴えています。

 そして、トランプ米大統領は先週、非常事態を宣言しました。これは国民を怖がらせるためにやっているのではありません。むしろ非常事態宣言をすることで500億ドルの緊急予算を使えるようにするための行政手続きによる発表です。

 トランプ大統領は、(1)新型コロナウイルスのテストを増やす、(2)スチューデント・ローンの毎月の返済を一時猶予、(3)米国政府が戦略備蓄として原油を購入することで価格を支えるなどの措置を発表しました。

 一方、立法府に目を移せば、ナンシー・ペロシ下院議長は財政出動のための法案策定に着手。スティーブン・ムニューシン財務長官と連絡を取り合い、整合性のある法案を目指しています。同法案は早ければ、今週中にも上院の投票に付される見通しです。

世界各国の対応

 英国の中央銀行であるBOE(イングランド銀行)は、先週0.50%の利下げを発表し、政策金利を0.25%としました。

 ドイツはKfW(復興金融公庫)を通じ、企業に無制限の特別融資を実行すると発表。これは売上高の急減で資金繰りに困る企業を救済するための措置で、ドイツとしてはかなり思い切った政策です。

今は買い時か?今後の投資戦略

 米国の株式市場は高値から▲20%以上のザックリとした調整となり、定義の上で「ベアマーケット入り」しました。値幅的にはもう十分調整したと思います。

 その半面、ここへ到達するまでのペースがあまりに急だったので、日柄の面ではいまだ調整は十分でないと思われます。

 米国株式市場がベアマーケット入りしたからといって、米国が必ずリセッション(景気後退)になるとは限りません。1987年のブラック・マンデー時のようにリセッションを回避できたケースもあります。

 先週の相場はドットコムバブル崩壊と、9.11同時多発テロ事件、リーマン・ショックなどを想起させる、恐ろしい相場でした。このような状況では、いても立ってもいられなくなり、全部売りたい衝動に駆られます。

 しかし、長期で見れば過去のそのような場面は買い場でした。今回も米国の強さ自体が根底から揺らいでいるわけではないと思います。

 従って長期にわたって保有できる銘柄を仕込む好機だと考えます。