やりたい仕事やキャリアアップを実現させるために転職したのはいいけれど、期待と違って残念ながらすぐに退職することはあるものです。こんなことならすぐに転職せずに、失業保険をもらいながらじっくり再就職活動をすればよかった……と考える人も多いようです。

 GW明けの5月病が多くなるこの時期は、とくにこのようなケースが増えると聞きます。そこで今回は雇用保険の失業手当について説明します。

雇用保険の基本手当、もらえる条件は?

 一般的に失業保険と言われている雇用保険の基本手当。雇用保険に加入していた人が失業した場合にもらえるものですが、受給するためにはいくつかの要件を満たすことが必要です。

失業の状態にあること

 失業と聞くと、倒産・リストラなど会社の都合で退職するイメージがありますが、結婚、起業、親の介護などで、自ら退職する場合も失業に該当します。

ハローワークで求職の申し込みを行っていること

 ただし、失業してもすでに転職先が決まっている、起業する、専業主婦(夫)になるような場合は、失業給付はもらえません。あくまで就職する意思および能力があるにもかかわらず、職業に就くことができない「失業の状態」にある人に対して支給されるものです。

雇用保険に加入していた期間を満たしていること

 自己都合の場合と会社都合の場合で、必要とされる雇用保険への加入期間が異なります。

・自己の都合
離職の日以前2年間に雇用保険の被保険者期間が通算して12カ月以上
・会社都合
離職の日以前1年間に被保険者期間が通算して6カ月以上

 転職したけど早々に退職すると……お給料も失業保険ももらえない?!

 せっかく転職しても、転職後の会社を早々に退職するケースは実は結構あるものです。たとえば転職先の空気が合わなかったり、転職後まもなく親の介護で辞めざるを得ないなど。

 転職先を退職することで収入がなくなりますから、収入面での頼みの綱は失業手当です。このようなケースでの失業手当の受給可否を考えてみましょう。

前職の退職時

 仮に雇用保険の加入期間を満たしていても、次の転職先が決まっていたための自己都合退職では、職業に就くことができない「失業の状態」ではなく失業保険はもらえません。

転職後の会社の退職

 自己都合退職の場合は雇用保険に12カ月以上加入していることが必要です。この加入期間条件を満たしていない場合は失業保険はもらえません。

雇用保険の通算制度を知っておこう

 実は、雇用保険の加入期間は1つの会社で12カ月以上加入していないといけないわけではありません。

 上で挙げた受給条件の文言をよく確認してみると、「『離職の日以前2年間に』雇用保険の被保険者期間が『通算して』12カ月以上」となっているのがおわかりでしょうか。

 つまり、雇用保険は前職と現職を通算できることを知っておきましょう。転職後の加入期間だけでは12カ月に満たなくても、前職と通算することで加入期間が12カ月を超えると失業給付受給の権利が発生します。

 とはいえ、受給条件の2の部分で説明したように、ハローワークで求職の申し込みをしていないと失業手当はもらえません。「どうせもらえないのに手続きするのが面倒くさい」と思って何もしないでいると、せっかく権利があっても失業手当はもらえませんから、加入期間は通算できるということを知っておきましょう。

雇用保険を通算するにも条件あり!?

 とはいえ、加入期間を通算するためにも条件があります。

1.前職の退職時にハローワークで求職の申込みをしていないこと

2.前職の退職日から再就職の日までの空白期間が1年以内であること

 前職の退職で失業給付を受給していたり、前職と再就職の空白期間が1年以上になると、それまでの被保険者期間はゼロになってしまいます。つまり転職時からの加入期間は振り出しにもどりますから通算して12カ月以上という条件から外れてしまいます。

退職時には必ず離職票をもらおう

 ハローワークで求職の申し込みをする際には退職した会社の離職票が必要ですが、前職の雇用保険を通算するためにも前職での離職票をハローワークに提出しなければなりません。

 離職票とは、従業員が退職するときに会社から交付される書類のひとつですが、転職による退職など、「どうせもらえない」というケースでは離職票をもらわなかったり、もらっても捨ててしまったりという人もいるようです。

 最初の退職時には失業給付なんて関係ないと思っていても、予定外に失業給付が必要になることもあります。受給有無に関係なく、退職時にはきちんと離職票をもらい、保管しておくようにしてくださいね。

賢い保険の入り方・見直し方を学ぶ

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(續恵美子)

※この記事は2019年5月20日にマネラボサイトで公開されたものです。

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