FRB、緊急利下げに踏み切る!

 3日、FRB(米連邦準備制度理事会)が0.50%の緊急利下げを発表しました。

 緊急利下げは、リーマン・ショック直後の2008年10月以来となります。先週の週間下落幅がNYダウ平均株価で過去最大の3,583ドル、日経平均株価も2,243円安とリーマン・ショック以来の大きさとなったことが、FRBを動かしたようです。

 米国株の急落を受けて、先週パウエルFRB議長は緊急声明を発表。その後、日銀の黒田東彦総裁の談話、ECB(欧州中央銀行)のラガルド総裁の声明と続いたことから日米欧の金融緩和協調行動の期待は高まっていました。

 FRBが発表した緊急声明では「適切に行動する」と、これまで利下げを示唆する表現が使われていたため、次回3月17~18日のFOMC(米連邦公開市場委員会)での利下げがほぼ織り込まれ、0.50%の利下げも9割以上織り込まれている状況となっていました。この期待から、週明け2日のNYダウは8営業ぶりに大幅反発となり、1,293ドル高と過去最大の上げ幅を記録しました。

 また、利下げのタイミングとして想定していたのは、緊急利下げ、12日のECB理事会に合わせた欧米の協調緩和、そして、3日に予定されていたG7(先進7カ国)財務相の電話緊急会議で協調行動を取るとのシナリオを予想していました。

 しかし、G7電話会議終了後の声明文では「財政政策を含めたすべての適切な政策を取る用意がある」「適時かつ効果的な措置について、さらなる協調の用意がある」という内容でしたが、具体的な協調行動が示されませんでした。そのため、声明文発表後は失望感から株もドル/円も売られました。実はこのコラムの原稿もそういうシナリオで書き終えたところで、緊急利下げのニュースが入ってきました。

 FRBの緊急利下げ幅は、期待通りの0.50%でした。

 発表直後、サプライズからNYダウは380ドル超、上昇しましたが、前日に過去最大の上げを記録し材料出尽くしで、その後は売られ一時1,000ドル弱下落し、785ドル安で終えました。上下で1,400ドル近く動く乱高下の相場となりました。

利下げ効果なし?

 FRBが利下げをしたにもかかわらずNYダウが下落した理由は、材料出尽くしの他に、新型コロナウイルス感染拡大の影響を利下げで対応できるのかという、不安もあったようです。では、利下げしても株は下げ止まらず、ドル/円もどんどん円高が進むのでしょうか。今後の見方として、以下の3つのポイントを注目したいと思います。

1:さらに緊急の追加利下げのシナリオも?

 パウエルFRB議長は記者会見で「新型コロナウイルスの感染拡大は新たなリスクだ。米経済の見通しに影響を与えている」と警戒感を示し、FOMC声明文では「米経済は力強いが景気見通しへの影響を注視し、経済を支えるために適切の行動する」と追加緩和を示唆する表現を使っています。従って、3月17~18日のFOMCでも追加利下げのシナリオを想定しておく必要がありそうです。また、3月に利下げがなくても4月や6月に利下げ、あるいは2回目の緊急利下げも想定しておいた方がよさそうです。

2:G7の財政政策は?

 新型コロナウイルス感染拡大の影響はヒト、モノ、カネが動かなくなった需要縮小です。リーマン・ショックのような金融危機ではないため、利下げは効果があるのかという見方もありますが、G7各国は電話会議で「すべての適切な政策を取る用意がある」と確認しているため、今後、各国が金融政策だけでなく財政政策を含めたあらゆる政策を取ってくる可能性が高いと見た方がよさそうです。

 FRBの緊急利下げは、G7が動いたということを象徴する出来事であり、今後、株が急落した場合もG7が動くのではないかという抑止力になることが予想されます。

3:ドル安圧力続くか?

 G7の政策対応によって株価急落や激しい上下動がなくなれば、ドル/円の円高も止まってくるかもしれません。しかし今回、日欧の利下げ余地が制約されていたため協調利下げができずFRBの単独行動になったことは、今後もFRBの利下げのみが進む可能性が高く、ドル安圧力が続くものと予想されます。従って、ドル/円は、株が戻しても戻りは鈍いことが予想されます。

中国景気は過去最低の水準に

 2月29日(土)に発表された中国の2月の製造業PMI(購買担当者景気指数)が35.7と、景気の上向き・下向きの分岐点である50を大きく下回り、さらに前月より14.3低く、リーマン・ショック直後の2008年11月(38.8)をも下回り、過去最低となりました。新型コロナウイルスが中国経済に深刻な打撃を反映した数字となりました。

 今後、相次いで各国の2月分経済指標が発表されます。悪い数字が発表された場合、さらなる株安、円高が続くのかどうか。あるいは、新型コロナウイルスの影響によって経済が一時的に止まっているだけで「需要の先送り」と悪い数字は予想の範囲内と判断し、マーケットは冷静な反応をするのかどうか、注目です。この中国PMIの数字を見て、まだ30台をキープしているのは予想よりも良かったことと楽観的な見方をするエコノミストも現実にいます。

 パウエル議長は、記者会見で「新型コロナウイルスの影響がどれくらいの規模でどれくらい続くかは極めて不透明で、状況は依然流動的だ」と発言しており、今の状況はパウエル議長も悩ませる状況です。この感染拡大が長引けば長引くほど経済への影響も長引きますが、感染拡大のペースが緩やかになれば、経済活動の回復率も上がってくることが期待されます。

 安倍晋三首相は感染拡大のペースを抑えるために、あと1~2週間が重要局面と国民に説明しています。じっと見守り、新型コロナウイルスが早く終息していくことを期待したいものです。