今日のポイント

・円安、北朝鮮不安の緩和、解散総選挙を受けて、先週の日経平均は急騰。一気に年初来高値を更新した。
・日本の景気、企業業績は良好なので、円安トレンドが続き、解散総選挙で自民党が大きく議席を減らすことがなければ、日経平均は2015年の高値(2万868円)を目指す可能性もある。

日経平均が一気に高値を更新した背景

 先週の日経平均は1週間で387円上昇し、2万296円となりました。21日には年初来高値を更新し、一時2万481円まで上昇。22日は、北朝鮮が太平洋で水爆実験を行う可能性を表明したことを嫌気し、日経平均は反落しました。

日経平均日足:2017年8月1日~9月22日

注:楽天証券マーケットスピードより作成


 8月前半に下値をトライした日経平均が急反発し、一気に高値を取ったのには、以下の3つの理由があります。

(1)ドル長期金利上昇を受けてドル高(円安)が進んだこと

 8月から9月の前半にかけて、ドル長期(10年)金利が低下し、ドル安(円高)が進んでいました。円高を受けて、日本株に外国人投資家の売りが増えました。ところが、9月の後半にドル長期金利が反発。これを受けてドル高(円安)が進み、日本株に外国人の買いが増えました。

米長期(10年)金利と、ドル円為替レートの動き:2017年8月1日~9月22日
 

注:ブルームバーグより作成

 まとめると、8月~9月前半は、ドル金利下落→円高→日経平均下落が進み、9月中旬以降は、ドル金利反発→円安→日経平均反発が進んだことになります。8月~9月前半は、大型ハリケーンの被害で米景気が減速し、それにより米金融引き締めの継続が難しくなるという見方が広がり、米金利が低下しました。

 ところが、9月中旬以降は、ハリケーンの被害は一時的で、復興需要も出るので米景気は好調を維持すると見方が変わりました。そして、米国のFRB(連邦準備制度理事会)は緩やかな金融引き締めを続けるとの、見方が復活しました。

 実際、9月20日に発表されたFOMC(連邦公開市場委員会:米国の金融政策決定会合)の結果は、ややタカ派的とみられる内容でした。事前予想通り、利上げはありませんでした(FF金利の誘導水準を1.00~1.25%に据え置き)が、FOMCメンバーの予測(中央値)では、年内あと1回0.25%の利上げが見込まれています。一時「年内利上げなし」の見方が広がっていましたので、12月に再利上げの見通しを示したことは、タカ派的とみなされました。


 また、事前予想通りですが、FRBの保有資産(米国債)の縮小を10月より開始すると発表しました。資産縮小のペースは当初は緩やかで、長期金利を上昇させる効果は当面はあまり大きくないと考えられます。それでも、米国が、量的緩和の縮小開始(2014年1月)→量的緩和の終了(2014年10月)→量的引き締め開始(2017年10月)と、着実に緩和の出口戦略を進めていくことを再確認したことは、意味があります。

(2)北朝鮮が孤立しつつあること

 北朝鮮の脅威は、株式市場では低下しつつあると見ています。北朝鮮の暴走が止まる気配はありませんが、以下の点が、抑止力になる期待はあります。

●北朝鮮に対する経済制裁を国連安保理で決議できた(中国・ロシアが拒否権を発動しなかった)こと。
●北朝鮮を政治・経済両面で支えてきた中国が制裁に協力し始めていること。
●中国と北朝鮮の間にも対立が生じ、北朝鮮が孤立していること。

(3)安倍首相が、衆院の解散総選挙を実施する方針を固めたこと

 森友学園・加計学園の問題で、安倍内閣の支持率が急低下し、政策実行能力が低下したことは、外国人投資家が、日本への投資を避ける要因となってきました。解散総選挙を実施することがほぼ確実になったことを受けて、外国人の一部は、日本株を買い戻したように見られます。安倍内閣が力を取り戻しつつあると、感じたようです。

 選挙は水物で、解散総選挙で、自民党が敗北する可能性もあります。それでもヘッジファンドなど、先物中心に素早く動く外国人は、解散総選挙のニュースを受けて、とりあえず日経平均先物を買ってきました。

 自民党が勝つかどうかはわかりません。それでも、少なくとも、「安倍首相が、解散総選挙をやりたいと思えるくらい、自民党に優位な流れが出つつある」ことを評価したと考えられます。民進党から離党が相次いでいること、北朝鮮の脅威が強まったことが与党の支持を固める効果があったこと、などが安倍首相を強気にさせたと思います。

 その空気を感じて、外国人投資家は、日本株の組み入れを増やすべきだと判断したようです。

日経平均は、2015年の高値を更新するか?

 日本株の動きを決めているのは、外国人です。外国人から見て、日本株が買いたい対象となるか否かで、日経平均の上値は決まります。

 先週まで、日経平均を急反発させたのは、ヘッジファンドなど先物中心に動く短期筋だと予想されます。現物を売買する海外年金やソブリン・ウェルス・ファンド(政府系ファンド)が、これから日本株を買い増しする判断をするか否かが鍵を握ります。日本の景気・企業業績は好調ですので、以下の条件が満たされれば、外国人の日本株買いは、ここから本格化すると考えられます。

・適温相場が続く

 米FRBが引き締めを継続することから、円安が進みやすくなります。ただし、急激な引き締めを行うと、米国株が急落するリスクが生じます。米FRBが、米国株を急落させないように、ゆるやかなペースで引き締めを続ける姿勢を維持すれば、「適温相場」(景気は良いが、急な引き締めはない)が継続する期待が高まります。

 そうなると、出遅れ感のある日本株へ外国人の買いが続く可能性があります。

・北朝鮮の暴走に一定の歯止めがかかる

 北朝鮮への中国の支援が低下し、北朝鮮が孤立感を深める中、経済制裁が時間をかけて功を奏していけば、北朝鮮の脅威が徐々に低下する可能性もあります。

・解散総選挙で、安倍内閣の支持率が回復する

 外国人から見ると、安倍政権は、成長戦略を重視する内閣です。安倍首相が勝利すれば、好感されます。

 経済成長を重視する安倍内閣の支持率が高まることは、外国人の目から見て、プラスと映り、日本株買いを増やす効果があります。これから発表される解散の「大義名分」が、国民の納得を得られ、自民党が高水準の議席を維持できれば、外国人は日本株の買いを続けると考えらえます。

 もちろん、自民党が「まさか」の敗北を喫し、安倍首相が責任を問われ、支持率をさらに低下させることもあり得ます。そうなると、外国人の売りを誘うことになると思います。

 今後のドル金利、ドル円レート、解散総選挙の情勢を見て、気づいたことがあれば、報告します。