2月最終週、日本株は目を覆うような急落に見舞われました。意気消沈している個人投資家も多いと思います。そんな個人投資家に、処方箋となる対策を届けます。

「コロナショック」で世界同時株安に発展

 2月最終週、新型コロナウイルスの影響が世界中に広がりを見せるとともに、それに伴う景気悪化の懸念から世界各国の株価が急落しました。

 前週末2月21日に2万3,386円74銭だった日経平均株価が、一時2万916円40銭まで下落。2万1,000円を切ってきています。
 NYダウ平均株価も急落に達し、2008年のリーマン・ショック以来の大幅な下落となりました。

 個別銘柄ベースではこの短期間に30%、40%と値下がりしている銘柄もあり、まさに急落、暴落、パニック売りといった様相です。

自分の投資スタイルの確認とそれを今後続けるかを考える

 ここまでの短期間での値下がりとなると、特に大きなショック安を経験していない個人投資家の方は、頭がパニックになってしまいます。

 そこでまずは、ご自身の投資スタイルの確認をしてください。

 もし、ご自身の投資スタイルがバイ・アンド・ホールドの長期投資であり、それを今後も続けるのであれば、今の株価下落は「単なる途中経過」でしかありません。株価がこれからさらに下がろうが、そのまま持ち続けていいのです。それが長期投資というものです。

 でも、長期投資のつもりで始めてみたが、どうしてもこの株価下落には耐えられない…なら、投資スタイルの変更を検討した方がよいと思います。

 株価というのは、短期間に30%、50%、時には70%と下落することもあります。この下落にじっと耐えることができる人でなければ、売るべきでないタイミングで投げ売りしてしまったりして、逆効果になってしまいかねないからです。

 筆者は買った株が大きく含み損を抱えることに耐えることができません。だからバイ・アンド・ホールドの長期投資はしていないのです。いわゆるトレンドフォロー戦略と呼ばれる、上昇トレンドの間だけ株を持ち続け、下降トレンドになったら株を持たないという手法を用いています。

長期投資からトレンドフォロー戦略に

 ここからは、ご自身の投資スタイルがバイ・アンド・ホールドの長期投資ではない、もしくはこれを機に長期投資を止めたい、という方に向けてお話しします。

 例えば筆者のように、トレンドフォロー戦略を取っている投資家であれば、株価が大きく下がった2月末時点で、保有株はほぼゼロになっています。

 なぜなら、筆者の場合、「25日移動平均線を割り込んだ保有株は売却する」というルールを決めているからです。2月末時点で、25日移動平均線を割り込んでいない銘柄はほとんどないので、保有株もわずかです。

 だから、25日移動平均線を大きく割り込んでいる銘柄ばかりの今でも、損失の拡大を防ぐことができていますし、これ以上株価がいくら下落しても、損失を被ることがないのです。

 これを逆に下落の途中で中途半端な逆張りで買い向かってしまえば、今は含み損を抱えてしまう結果となっているでしょう。

 逆張りで成功している個人投資家もいますから一概に逆張りがダメとは言いませんが、逆張りで含み損を抱えた塩漬け株ばかり作ってしまっている…という方は、順張り(トレンドフォロー)に切り替えてみてはいかがでしょうか。

一にも二にも「ルール作り」

 株価がここまで急激に下落してしまうと、多くの個人投資家から次のような質問が出てきます。

「株価下落はいつまで続くの?」
「持っている株は売るべき? それとも持ち続けるべき?」
「これから日本株や世界の株はどうなる?」

 こうした質問に対して、丁寧に回答している専門家もいますが、私であれば次のように答えます。

「分かりません」と。
 そもそも、これが自分で分かる、もしくは分かる人のアドバイスを受けられているのであれば、大きな損失などしないはずです。

 しかし、専門家・評論家の方も、株価がここまで短期間に急落するなど事前に予想できていませんでした。これは、専門家・評論家の方が無能なのではなく、そもそも「予想などできない」のです。

 株式投資で重要なのは、「これからどうなるか?」を予想するのではなく、これからどうなっても生き残るためのルールを作り、それを守ることなのです。

 残念ながら、多くの個人投資家は、株価下落の度に上記の質問を繰り返し、そして多額の損失を積み重ねていきます。

 でも、「どうなったら株を買うのか? 売るのか?」という明確なルールを設定してそれを守れば、このような質問など一切する必要がなくなります。

 現に、筆者が今回の株価急落を少しのダメージ(実際は空売りやプットオプション買いの利益があるのでプラス)で切り抜けているのは、決して株価急落を予想できたからではありません。

 ルールに従って、25日移動平均線を割り込んだ保有株を淡々と売却していっただけです。

 筆者が主宰している株式投資塾では、筆者の投資手法やルールを実践した塾生さんから「今までの自分なら大損していましたが、今回は明確な売買のルールがあったので少しの損で乗り越えられました!」という感謝の声を数多くいただきました。

 結局重要なのは、株価下落を見抜く能力ではなく、株価が下げ始めたらどう動くかというルールなのです。

生き残れば夜明けは来る

 ここまで厳しいことをお話ししてきましたが、それは株式投資という世界は弱肉強食の世界だからです。

 株価急落で多くの個人投資家が痛手を負う一方、空売りにより利益を得た投資家も少なくありません。

 また、株式マーケットは個人投資家だけでなく、外国人投資家やプロ投資家も一堂に集って売買・投資をする場です。アマチュアだからといって大目に見てもらえることは絶対にありません。

 でも、生き残りさえすれば夜明けは来ます。筆者も、2008年のリーマン・ショックの時はルールを守らなかった結果、頭がクラクラし、食事が喉を通らないほどの損失を被りました。それでも所有資産の50%以内のダメージで済んだことで、その後の上昇相場で損失の何倍もの利益を取り戻すことができています。

 もし今回の株価急落で大きな損失を被ってしまった方は、今は厳しいかもしれませんが、今後同じ轍(てつ)を踏まないための良い機会をもらったと思ってください。なぜ今回失敗したのかを分析し、それを繰り返さないようにすれば、間違いなく成功に近づくのですから。

 株式マーケットは5年後も10年後も20年後も、きっと開いていることでしょう。その間には、利益を得やすいような環境も訪れるはずです。今回の下落で悔しい思い、つらい思いをしていても、それは良い勉強の機会だったのです。失敗を繰り返さないように株式投資を学び、あせらず損失を取り戻していきましょう。