投資スタートの「第一歩」は節約と家計管理にあり

 私がお金に関するセミナーで必ず指摘する問題の一つに、「投資以前」という点があります。投資は「拠出」と「運用」の組み合わせで成り立っていて、「投資以前」というのは「拠出」の前、つまり投資の資金を作るための節約を、私たちはつい忘れがちだからです。

 特に、若い世代の資産形成において重要なのは、投資資金を100万円貯めるまでがんばることではなく、まずは毎月少額でいいので、積み立て投資を始めることです。これまで消費に使っていた分の中から「毎月の一定額」を資産形成に回すことになれば、今までよりも少ない額で生活をやりくりしなければなりません。

 例えば、毎月1万円の積み立て投資をiDeCo(イデコ:個人型確定拠出年金)にするなら1万円を、毎月2万円をつみたてNISA(ニーサ:少額投資非課税制度)口座に入金すると決めれば2万円を、家計から確保しなければいけないわけです。

 すでに貯金をしている人の場合、その貯金にはすでに目的があるはずで、これをiDeCoやつみたてNISAに回すわけにはいかないでしょう。住宅購入資金や子どもの入学金のために積み立てている貯金は、そのまま継続する必要があります。しかし、老後に向けての資産形成は必要であり、その枠を新たに確保する必要があります。

 そのため、ほとんどの人にとって、投資を考えるということは「節約」を意識することなのです。そして、節約を実現するために必要なのは、家計の可視化、家計管理です。

スマホ家計簿を使って自動的に「見える化」してみよう

 オンライントレードと並び、フィンテックが個人に直結しているものとして「家計簿アプリ」が挙げられます。モバイルバンキングの口座、クレジットカード、EC(電子商取引)サイト、電子マネーのアカウントなどを登録すると、自動的に出費の履歴データが反映され、一元管理ができます。加えて、証券口座やiDeCoのアカウントも登録可能です。

 こうした機能を「アカウントアグリゲーション」と言いますが、銀行引き落としの水道代○○円とか、楽天市場で買い物○○円といった支出を、カンタンに集約できるのです。

 また、現金払いのレシートは、その場でカメラ撮影すれば、高精度で自動認識が可能です。実は最新のテクノロジーを上手に活用することで、ほとんど手間がなく家計簿は自動作成できるのです。

 代表的な家計簿アプリは「Zaim」「マネーフォワードME」「LINE家計簿」「マネーツリー」「Dr.Wallet」などがあります。基本使用料は無料であることもうれしいところです。

 もちろん、小計、合計などの集計も自動ですし、グラフ化して前月比などのチェックもまた自動計算。電卓をたたく作業からも、完全に「さよなら」できるわけです。

実践!固定費のムダを削る基本テク

 トウシル掲載のコラムとしては異色かもしれない節約講座ですが、家計簿を自動化すれば、おおむねのお金の流れは把握できます。

 最初にメスを入れたいのは「固定費」です。通信費や公共料金など、自動的に引き落とされているお金をチェックします。

 サービスを利用していないものはまず徹底的に「解約」します。解約すればそのまま差額が貯金に変わるからです。利用しなくなった動画や雑誌などのサブスクリプション月会費、通っていないジムの月会費など、どんどん解約していきましょう。

 次に、サービスがより安いものに置き換えられるのなら、「乗り換え」を検討します。例えば、格安スマホや電力自由化などです。特に家族4人がスマホをまとめて乗り換えたりすると、通信費が半減することもあります。

 これだけの見直しで、月1万円以上浮かしたいものです。中途半端に利用する月会費などは一度退会してから再検討してもいいと思います(たいてい、一定期間内での再入会には入会金を取らないので)。

実践!日常生活費のムダを削るテクニック

 次に考えたいのは、家計簿アプリを使った日常生活費の節約です。

 こちらは大項目(食費、日用品、交通費など)で、まずチェックします。

「なんでこんなに使っているの?」という項目があれば、それはあなたのイメージと実際に乖離(かいり)がある状態です。まずはそこから優先的に削りましょう。

 交通費が高いという人は遅刻寸前や終電逃しでタクシーを利用していないでしょうか。飲み代は削らなくても、終電逃しのタクシー代を削るだけで節約になるわけで、これなら無理なく実行可能なはずです。

 食費がやたら高いという人は、まとめ買いで節約するはずが逆に買い過ぎて、実はフードロス(賞味期限切れの廃棄)をしてはいませんか? あるいはお菓子の買い物を減らして、この機に節約とダイエットを実行するのもいいかもしれません。

 当たり前のつもりでやっていた「コンビニやカフェで午後3時の買い物」の習慣を止めても、仕事の生産性はあまり変わらないかもしれません。当たり前の消費を一度ストップしてみるのもいいでしょう。

 また、月1万円削りたいなら、1週間あたり2,500円、あるいは1日あたり350円くらい、というように具体的に目標設定してみるといいでしょう。いろいろ試してみてください。

最低でも月1万円、できれば月2万円の生活費を削って投資に回そう

 家計簿アプリを活用したことで、節約を継続できそうな自信がついてきたら、積み立て投資の金額を増額(あるいは新規設定)してください。

 とにかく、自動引き落としを設定することが積み立て投資を続けるコツです。引落日を指定できるなら、給料振込日の直後とするのがオススメです。たとえばiDeCoは基本的に26日引き落としです。給料振込日直前(25日なら24日)のように指定すると、残高不足になる可能性がありますのでオススメできません。同じ積み立てをするなら、振り込み直後が心理的にも負担感が少なくて済みます。

 また、「Aの節約」をしたものを「Bの支出増」に振り返るようでは意味がありません。ぜひ実現した節約を「積み立てC」に導く流れもセットにしましょう。

月2万円の積み立て投資で資産は1,028万円!

 最後に、節約がどれくらいの資産形成に資するか試算をしてみましょう。家計簿アプリのおかげで月2万円の節約に成功し、40歳から65歳まで25年積み立てることができたとします。

 これは原資600万円の確保に成功するということです。運用益として600万円を稼ぎ出すのと同じことを、日々の節約から私たちは確保できるわけです。

 さらにこの月2万円を投資に回し、年率4%の運用益を加味すると、さらに約400万円の運用益を上乗せし、1,028万円まで増やせます。退職金をこれに加えれば老後の不安は相当少なくなるでしょう。制度としてはもちろん、つみたてNISAやiDeCoを活用するといいでしょう。

 ぜひ、「投資の入り口としての節約」についても考えてみてください。