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 環境(E)、社会(S)、企業統治(G)の課題に取り組む企業の株式などに資金を投じる、『ESG投資』が世界的に拡大しています。ESGに優れた企業は社会の発展に貢献し、将来も持続的に成長するとの考え方が普及してきたことが背景です。日本の投資額も急速に伸びるなか、日本企業はESGに関する非財務情報の開示を拡大しています。高い評価を得る日本企業も増えており、『ESG投資』の動向が注目されます。

【ポイント1】世界の『ESG投資』は約3,400兆円、日本も急拡大

 国際団体「GSIA」(世界持続可能投資連合)は2年に1度、『ESG投資』の統計を発表しています。それによると、2018年の世界の『ESG投資』残高は30兆6,830億ドル(約3,400兆円)と、2016年から34%増加しました。日本の金額は全体の7%にとどまっていますが、この間の伸び率は約4倍増と突出しています。

『ESG投資』が拡大している背景には、2006年に国際的な「PRI(責任投資原則)」が定められるなど、気候変動や人口増加といった地球規模の課題解決に投資の力を活用するという考えが普及してきたことがあります。過去2年で日本で急拡大したのは、巨額資金を扱うGPIF(年金積立金管理運用独立行政法人)が2015年にPRIに署名し、2017年から『ESG投資』を開始したことが要因だと考えられます。

【ポイント2】日本企業もESG情報の開示を拡大

 日本で『ESG投資』が急速に伸びるなか、GPIFなどの声に応え、日本企業はESG(環境・社会・企業統治)などの非財務情報の開示を拡大しています。

 企業の情報開示を支援するエッジ・インターナショナルによると、財務と非財務の両方を網羅した「統合報告書」を発行する企業数が2019年末で513社(非上場企業なども含む)と、2016年末の277社から大幅に増えました。

【今後の展開】日本企業への『ESG投資』拡大が期待される

 英国の非政府組織CDPが発表した「気候変動リポート2019」によると、気候変動への取り組みで最高ランクの「A」評価を獲得したのは全世界で179社でした。調査対象となった8,000を超える企業のうち、わずか2%です。このうち、日本企業は38社と、2位の米国企業35社を上回り、最多となりました。CDPの調査は世界500以上の機関投資家から委託されたもので、『ESG投資』の重要指標となります。

 日本企業のESG情報開示への取り組みが評価されることで、ESGに優れた企業への投資が拡大し、国内の株式市場が活性化することが期待されます。