1.最近の米国株式市場
2020年は、米中貿易戦争の影響の一巡による企業業績の改善が見込まれていましたが、新型肺炎の感染拡大が米国経済の先行きを見えづらくしています。
感染拡大を食い止めるため実施されている中国国内の人・物資の移動の制限が、中国の製造活動等に悪影響を与え、中国の製品を輸入する米国企業にもその余波が伝わり、2020年1-3月期の業績発表時に数字になって表れてくるでしょう。
電化製品や衣類を販売するリテール企業、中国の観光客に支えられていた高級ブランドなどへの打撃が予想されますが、中国にサプライチェーンがあるメーカーとして、アップル(AAPL)も業績への影響懸念を表明しています。直近では、イタリアや韓国でも新型肺炎の感染拡大が報道されており、これがさらに多くの国に広がった場合にどのような影響が企業業績に発生するのか、見極めようとする動きが当面続くとみられます。
2.新型肺炎で注目される医薬品関連企業
新型肺炎関連で物色されやすいのは医薬品関連企業でしょう。ワクチンでは、ジョンソン・エンド・ジョンソン(JNJ)や、フランス企業でインフルエンザワクチンなどを展開するサノフィ(SNY)が開発を進めると公表、バイオ医薬品会社、ノババックス(NVAX)も開発を目指していると報道されています。
また、ノルウェーやインド政府、ビル&メリンダ・ゲイツ財団などで創設されたCEPI(感染症流行対策イノベーション連合)は、イノビオ・ファーマシューティカルズなどとの提携を発表しています。ワクチン開発の成功は通常時間がかかるため、現時点でどの会社が一番乗りとなるかは分かりませんが、頭の隅に残しておきたい材料です。
治療薬では、ギリアド・サイエンシズ(GILD)のエボラ出血熱の治療向けに開発していた治験薬の「remdesivir」を新型肺炎の治療にも使えないか模索しているもようですが、一方で、この薬の転用に関する特許を中国が取得しようとしているという報道もあり、本当に恩恵を受けるのかは未知数です。
一方、現時点で、中国の他日本でも患者(中国の方)への投与が確認されているのが、リトナビルとロピナビルを配合した抗HIV薬です。
この配合剤は、アッヴィ(ABBV)の抗HIV薬「カレトラ」とみられます。「カレトラ」に効果があると認められ利用が他の患者にも広がれば、同社の追い風になるかもしれません。仮にその可能性がなくなっても、同社の業績は堅調に推移しそうです。
同社はアイルランドの医薬品関連企業アラガン(AGN)を買収しており、美容医療の「ボトックス」や統合失調症治療薬「カリプラジン」などの他、アラガンの後期開発医薬品を手に入れて新たな成長機会を得ました。
アッヴィの代表的な医薬品、関節リウマチの治療などに使われる「ヒュミラ」の特許切れが近づいてきたことが問題になっていましたが、それを巨額の買収という手段で乗り切ろうとしています。
今年は同社の思惑通りの成長ストーリーが描けるかを確認する年となりそうですが、バリュエーションに割高感が感じられないことから、株価の下落は限定的かと思います。(2020年の予想PERは10.9倍。2020年2月18日の終値93.61ドル、2020年の市場予想EPS8.56ドル。ギリアド・サイエンシズの予想PERは12.1倍。2月18日の終値67.01ドル、2020年の市場予想EPS5.54ドル)
アッヴィの株価(ドル)
期間:2月18日まで
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