日経平均の大幅な下振れに警戒を
先週末21日(金)の日経平均は2万3,386円で取引を終えました。前週末終値(2万3,687円)からは301円安、週足ベースでも2週連続の下落です。
前回のレポートでも指摘した通り、先週の日経平均もいわゆる新型肺炎ウイルスに対する「揺らいだ気持ち」(不安と期待のそれぞれを先取りして、1月下旬から2月上旬に動いた2万3,000~2万4,000円の値幅)の範囲内で、株価の落ち着きどころを探っていく展開となりました。
すでにある程度の心理的要素を織り込んでしまっている相場環境では、先週の株式市場が示す通りレンジ内での日柄調整になりやすく、新しい材料やムードの変化、きっかけが出てくるまでは動きづらくなります。
しかし、新型肺炎の状況は国内での感染拡大が続くなど「感染当事国」としての認識が強まり、事態が悪化している他、日本が休場だった24日(月)の海外株市場がそろって軟調な展開になっているなど、2月最終週となる今週は、株価の大幅な下振れに警戒する必要が出てきました。
まずはいつもの通り、足元の状況から確認していきます。
■(図1)日経平均(日足)の動き(2020年2月21日取引終了時点)
先週の日経平均を振り返ってみると、「前週からの下落基調を引き継いで下げ幅を広げた後に反発を見せたものの、上値も限定的」という値動きでした。結局は上値も下値も伸ばせず、2万3,500円水準を挟んだもみ合いでした。そして、このもみ合いによって、2月4~5日と5~6日に空けた二つの「窓」を埋めるような格好となっています。
同時に、このもみ合いで「三角もちあい」を形成しつつあるようにも見えます。となると、今後の日経平均はもちあいを抜けた方向に進んでいくというのがセオリーになりますが、では一体どちらの方向に抜けそうなのかを考える上で、注目するのは20日(木)と21日(金)のローソク足です。
25日と75日の2本の移動平均線を20日は実体、21日はヒゲが下抜ける、いわゆる「二本抜け」が2日連続で出現しています。株価が底打ちから反発しつつあるにもかかわらず、移動平均線を上から下に跨いでいる状況のため、下方向への意識の強さが感じられます。そのため、三角もちあいは下抜けによる株価の下げ加速に注意が必要と考えられます。
24カ月移動平均線(約2万2,000円水準)で下げ止まれるか
■(図2)日経平均(日足)の動き その2(2020年2月21日取引終了時点)
このまま下げ足を早めてしまえば、上の図のように中期的なトレンドも「トリプル・トップ」の形成が意識されます。つまり、「下げ加速」ボタンが押されてしまうと、チャートの形が下落トレンド入りを強めてしまうことになるわけです。
■(図3)日経平均(月足)の動き(2020年2月21日取引終了時点)
この場合、目先のポイントは月足チャートの24カ月移動平均線で下げ止まれるかどうかになります。上の図3を見ると、過去の日経平均が24カ月移動平均線を下回ったところでは、下げ足が早まるか、しばらく低迷が続いていたことが分かります。先週末時点の24カ月移動平均線は大体2万2,000円の水準です。
米国株はトレンド転換のサイン、中国株は急落分を取り戻すも今後は不透明
最後に、米国株と中国株の動きもチェックしていきます。
■(図4)NYダウの動き(日足の平均足)とMACD (2020年2月24日取引終了時点)
上の図4で米NYダウ平均株価の動きを見ると、平均足が陰転し、MACDがシグナルを下抜けるクロスが出現しており、トレンド転換のサインになっていることが分かります。他の指標(S&P500やNASDAQ)も同様となっているため、これまで好調だった米国株で軟調が続いた場合、日本株も下げ足を早める可能性があります。
米国株は新型肺炎の影響が比較的少ないと見られていることや、金融政策への期待によって、まだ相場が崩れていないような印象ですが、先日発表されたPMI(購買担当者景気指数)の悪化にも表れているように、実体経済の状況が株価に反応しやすくなっている可能性があり注意です。
■(図5)上海総合指数(日足)の動き(2020年2月24日取引終了時点)
一方の中国株市場ですが、上海総合指数は節目となる3,000pを回復し、春節の休場明けに見せた急落分を取り戻しています。新型肺炎の影響はあるものの、中国当局による経済政策期待が不安を打ち消している格好ですが、まだ実体経済への影響度は不透明な中で、期待をかなり先取りしている可能性があり、さらに上値を伸ばすのは難しく、ここからは、ネガティブな材料に反応しやすくなる可能性があります。
今後、国内外で発表される経済指標や業績見通しについても、そろそろ新型肺炎の影響が反映され始めることになるため、冒頭でも触れたように、「揺らいだ気持ちに対する実体経済への影響」の見極めや答え合わせがこれから本格化します。
今週想定される株価の大幅下落は、その答え合わせの前にさらなる不安を先取りする動きと捉えれば、今が絶好の買い場という判断になります。各国の対策や金融緩和期待が支援材料になると思われますが、想定以上に新型肺炎の事態が長期化してしまえば株価の戻りには時間がかかりますし、そもそも、新型肺炎の影響による「ヒト・モノ・カネ」の経済停滞が懸念される中で、金融緩和でカネだけ動かしても、効果が限定的になることも考えられます。
したがって、積極的な売買を仕掛けるにはかなりの勇気が要る相場局面に差し掛かったと言えそうです。
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