日本が休日だった2月24日(月)、新型肺炎の影響が世界的に広がる懸念から、世界的に株が急落しました。NYダウ平均株価は、前週末比1,031ドル安の2万7,960ドルと急落しました。これを受けて、CME日経平均先物は、2万2,165円まで下がっています。今日の日経平均株価も急落が予想されます。

新型肺炎の影響で、日本は短期景気後退へ

 先週の日経平均は1週間で301円下がり、2万3,386円となりました。日本が、2019年10月から2020年3月まで「景気後退期」に入っている可能性が高まったことが嫌気されました。2013年から19年まで7年にわたり「戦後最長の景気拡大」が続いてきたと言われていますが、ついにそれが途切れる見込みです。

日経平均日足:2019年10月1日~2020年2月21日

出所:楽天証券経済研究所

 

 内閣府が17日に発表した2019年10-12月期のGDP(国内総生産:速報値)は前期比年率▲6.3%でした。中国景気の悪化と消費増税(8%→10%)の影響で、予想以上に大きなマイナスとなりました。

 今、株式市場では、中国で発生した新型肺炎によって1-3月以降の日本の景気・企業業績がどれだけ悪化するか議論されているところです。新型肺炎の影響が出る前の10-12月に、すでに景気後退に近い状態にあったことが確認されたことで、不安心理が高まりました。

 2020年1-3月のGDPもマイナスになると、2019年10月から2020年3月まで2四半期連続のマイナス成長となります。そうなると、景気後退の定義を満たすことになりそうです。

日本の実質GDP成長率(四半期ごと、前期比年率):2013年1-3月~2019年10-12月

出所:内閣府

 米中貿易戦争の影響で中国景気は10-12月にはかなり悪化が顕著でした。そこに新型肺炎の追い打ちがあり、1-3月の中国景気はかなりダメージを受ける見込みです。日本は、中国に次いで新型肺炎のマイナス影響が大きい国と見られ始めています。中国と、地理的にも経済的にも結びつきが深いからです。

 景気後退への不安が高まりつつある日本を見て、先週は外国人投資家から、日本株の売りが出たと考えられます。

 1-3月は、米中通商交渉で「第1段階合意」が成立し、一時的に対立が緩和することによって中国景気が少しずつ持ち直すと期待されていた時期です。それが、新型肺炎によって、米中対立が一段とエスカレートしたのと同様の、深刻なダメージを受けつつあります。

それでも好調な米国景気

 新型肺炎が中国や日本の景気に及ぼすマイナス影響は、予想以上に大きくなりそうです。それでも、世界景気が後退期に入る不安は、徐々に低下しています。米景気が好調だからです。米景気が好調な背景は、以下3点です。

【1】米企業が世界のITインフラを支配、第4次産業革命の恩恵を受ける

 IT活用の最先端で、第4次産業革命と言われる変化が起こりつつあります。2020年は、AI(人工知能)・IoT(モノのインターネット化)・ビッグデータ分析・ロボットの活用によって、世界的に産業構造の革新が加速する見込みです。これをバックアップする通信インフラとして、5G(第5世代移動体通信)への投資も本格化する見込みです。

 新型肺炎の影響で、5Gや半導体への投資は若干遅れるかもしれませんが、それでも第4次産業革命が世界的に進展していく流れは変わらないと考えます。

 グーグル、アマゾン、フェイスブック、アップル、マイクロソフトなどの米IT大手は、世界のITインフラを支配しているので、第4次産業革命が進む恩恵を受け、成長が続くと考えています。米景気は、その恩恵から堅調を保つと予想しています。

【2】シェール・オイル&ガス革命の恩恵が米国に大きい

 米国はかつて、世界最大の原油輸入国でした。ところが、シェール・オイルの増産が続き、2018年には世界最大の産油国となり、原油を輸出するようになりました。かつて採掘することができなかったシェール層から大量のシェール・オイル、シェール・ガスを産出するようになった効果はとても大きく、米国経済の競争力を高めました。その恩恵が、今も続いています。この大きな変化を、シェール・オイル&ガス革命と呼びます。

【3】移民パワー

 米国は移民により人口が増加する国です。移民は当初、低賃金労働力として米経済を支え、貯蓄ができるとさまざまな消費財を買い、有効需要の拡大につながってきました。

 ただし、好調だった米国株も24日には、急落しました。当面、調整局面が続く可能性があります。

日米の景気格差を映し、円安進む

 日本に景気後退懸念が出ている中、米景気は好調です。日米景気格差を映して、先週は、円安ドル高が進み、一時1ドル=112円台をつけました。

ドル/円為替レート推移:2018年1月1日~2020年2月21日

出所:楽天証券経済研究所

 先週の日経平均は、円安の進行を受けて、一時急反発しました。円安によって、日本の企業業績が改善すると期待されたからです。ところが、円安好感の買いは続かず、すぐに売り直されました。1-3月の日本の企業業績は、新型肺炎によって悪化する見込みで、それは円安が進んだだけではカバーできないと考えられるからです。

「円安なら株高」という、これまでの経験則が、今回は通用しませんでした。日本の景気見通しが悪化している「悪い円安」と解釈されたことになります。

それでも、日本株は「押し目買い方針」と考える理由

 新型肺炎によって、1-3月の日本の景気・企業業績は不調と考えられます。ただし、新型肺炎の影響はいずれ終息するので、新型肺炎で世界的に株が売られる局面は、いずれ買い場となると考えています。しばらく世界的に株が下落する局面が続く可能性もありますが、日本株は押し目買いのタイミングをはかりたいと考えます。

 新型肺炎の脅威は、5月以降、徐々に低下していくと考えています。5月以降、新型肺炎の脅威が低下し、米中対立が一時的に緩和するならば、2020年後半には世界景気は回復に向かうと考えています。第4次産業革命の進展が追い風となりそうです。

 この連載で繰り返し書いている通り、新型肺炎に対する株式市場の恐怖は、現実の脅威が終息するより半年以上早く終息します。今から半年後に、新型肺炎の治療法や予防法が明確になり、感染拡大が鈍化していると仮定すると、株式市場での恐怖は数カ月以内に終息すると予想されます。したがって、新型肺炎への不安で売られる日本株は、買い場を迎えると判断しています。配当利回りの高い大型株から買っていくべきと考えています。

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