今日は、2月13日「NISA(ニーサ:少額投資非課税制度)の日」。NISA口座で投資していくのに相応しいと考える4銘柄をご紹介します。株主優待が魅力的で、かつ配当利回りが高い(3%以上)銘柄から選びました。

 なお、配当も優待内容も現時点での会社予想にもとづいていますが、予告なく変更される可能性があることはご了承ください。

NISA口座で株式投資すると5年間非課税。ただし、途中で売却すると非課税枠は無くなる

 日本株は、配当利回りや買収価値から見て割安と、私は判断しています。投資で得られる配当金や売却益が非課税になるNISA口座を活用して日本株に投資していくことは、長期的な資産形成に寄与すると思います。

 ただし、1つ注意すべきことがあります。NISA口座で投資すれば5年間非課税ですが、もし5年経過前に売却すると、売却した部分の非課税枠は消滅します。

 例えば、NISAで上限いっぱいの120万円で日本株を買ったとします。その1カ月後に10万円値上がりして130万円になったところで、30万円売却したとします。すると、売却益は非課税ですが、売却した30万円分、非課税投資枠は減少します。まだ売却していない残りの100万円だけが非課税口座に残ります。

 さらに、その1カ月後に、残りの100万円をすべて売却すると、売却益は非課税ですが、非課税枠はすべて消滅します。5年の非課税枠とはいっても、それは売らずに持っていた場合だけです。短期で売ったり買ったりするのには、NISA口座は適していません。

 では、NISA口座で日本株に投資する場合、どのような銘柄を選んだらよいでしょう。5年以上の長期にわたってじっくり保有したいと思える銘柄を選んだら良いと思います。その候補に、株主優待の魅力的な高配当株があります。

 優待や配当を目当てに投資する場合、通常は長期投資となります。長期で保有して、優待品や配当金を受け取るのを楽しむ投資となるからです。したがって、財務内容が良好、収益基盤が堅固で、優待や配当が魅力的な銘柄が、NISA口座で投資するのに適していると判断できます。

「株主優待」で人気の銘柄から、予想配当利回りの高いものを選ぶ

 日本には、「株主優待」という世界でも珍しい制度があります。上場企業が、株主に感謝して贈り物をする制度です。株主への利益還元は、原則、配当金の支払いによって行うものですが、それとは別に、優待を実施している企業があります。個人投資家にとって魅力的な制度なので、積極的に活用したら良いと思います。

 ただ一部の「優待好き」投資家に、優待品の魅力ばかり見て、配当利回りを見ていないことがあるのには、首をかしげます。というのは、人気の優待銘柄には、配当利回りの低い銘柄が多いからです。

 配当利回りを見ず、ひたすら優待品だけ見て投資するのは、必ずしも、合理的な投資行動とはいえません。優待品がたくさん送られてくるのは嬉しいですが、それよりも、たくさん配当金をもらって、それで自由に好きなものを買った方がいいとも言えます。

 理想的には、「株主優待と配当利回りが両方とも魅力的な銘柄」を選んで投資したら良いですが、それは意外とありそうでありません。配当利回りの高い会社には、「株主への利益還元は、配当金でやるべき」という考えを持っていて、株主優待を行わない企業が多いからです。

 実はかんたんに、優待も配当利回りも魅力という銘柄も見つけられます。今日は、楽天証券の「株主優待検索」で、優待人気上位20社に入っている銘柄の中から、予想配当利回りが3%以上の銘柄を選びました。ただ、アナリストとしては、それだけで選ぶこともできません。中長期の収益力や財務内容が良好なものを選ばなければなりません。そこで、直近決算での営業利益率が10%以上のものに絞りました。以下の4銘柄は、その条件を満たしています。

<優待人気上位20社のうち、予想配当利回り3%以上、営業利益率10%以上の4社>

コード 銘柄名 配当利回り 営業利益率 最低投資金額:円 優待内容
2914 日本たばこ産業 6.7% 23.1% 230,700 優待内容
8591 オリックス 3.9% 13.5% 195,000 優待内容
9433 KDDI 3.3% 20.0% 344,000 優待内容
9201 日本航空 3.6% 11.8% 308,700 優待内容
出所:配当利回りは、1株当たり年間配当金(会社予想)を2月12日の株価で割って算出。日本たばこ産業は2020年12月期会社予想ベース。他は2020年3月期会社予想ベース。営業利益率は、日本たばこ産業は2019年12月期実績、他は2019年3月期実績。

日本たばこ産業(JT)の投資魅力

 JTは、12月決算銘柄です。6月末と12月末の株主は配当金を得る権利が得られます。予想配当利回り(会社予想ベース・6月末と12月末の配当金を合わせたベース)は、2月12日時点で、6.7%です。配当利回りの高さが魅力的です。

 JTは優待でも人気ですが、一つ注意があります。今から投資しても、最初に優待の権利が得られるのは、1年10カ月先の2021年12月からとなります。JTは年1回、12月末時点で1年以上継続保有している株主に、株主優待品(自社製品・食品など)を贈る権利を付与するからです。今から投資しても、今年の年末ではまだ1年経過していませんので、2020年12月末の権利は得られません。

 JTは、株式市場で不人気ですが、私は、安定高収益の高配当株として、評価しています。詳しくは、以下のレポートを参照してください。

2019年8月29日:配当利回り6.9%、株主優待でも人気のJT。投資価値を再評価

オリックスの投資魅力

 オリックスは、3月決算企業です。中間決算期末(9月末)と、本決算期末(来年3月末)に、配当金を得る権利が確定します。予想配当利回りは、2月12日時点で3.9%です。

 オリックス株を保有すると、配当金とは別に、年1回(3月末)、優待品を受け取る権利が確定します。ふるさと優待カタログBコースから、1点選んだものを贈呈されます。

 オリックスは、長期保有の株主は、優待内容が増加する制度にしています。3年以上、オリックス株を保有する株主には、1ランク上のふるさと優待カタログAコースから、1点選ぶことができます。

 カタログギフトとは別に、半期ごとに贈られる株主カードを使えば、オリックスグループが提供する各種サービスを割引価格で利用できる特典もあります。

 オリックスは金融株であり、金融株全般に、低金利が長期化する中で収益が圧迫される不安があり、株価は低迷が続いています。ただし、オリックスはリース事業を中核に多面的な業務展開で安定的に高収益をあげていく力を持っていると私は評価しています。前期(2019年3月期)純利益は、5期連続で最高益を更新しています。割安な株価と、配当に注目して、長期投資する価値があると判断しています。

KDDIの投資魅力

 KDDIは、3月決算企業です。中間決算期末(9月末)と、本決算期末(来年3月末)に、配当金と株主優待品を得る権利が確定します。予想配当利回り(会社予想ベース)は、2月12日時点で、3.3%です。

 KDDI株を保有すると、配当金とは別に、年1回(3月末)、優待品を受け取る権利が確定します。同社が注力する総合通販サイト「Wowma!」より、「全国47都道府県のグルメ品」から自由に選べるカタログギフトが、贈呈されます。

 KDDIは、長期保有の株主ほど、優待内容が増加する制度にしています。100株を保有する場合、保有期間5年未満の株主には3,000円相当、5年以上保有すると5,000円相当のカタログギフトが贈呈されます。詳しい内容は、同社HPで確認してください。

 KDDI株は、携帯電話事業の競争激化懸念で株価の上値が重くなっていますが、業績は好調です。世界景気に影響されずに安定成長を続け、2020年3月期に18期連続の増配を予定しています。携帯電話収入は、減少し始めていますが、通信と融合したライフデザイン事業の利益拡大によって、成長を続けています。これからも安定高収益を維持していくと予想しています。

日本航空(JAL)の投資魅力

 JALは、3月決算企業です。中間決算期末(9月末)と、本決算期末(来年3月末)に、配当金と株主優待品(航空割引券)を得る権利が確定します。予想配当利回り(会社予想ベース)は、2月12日時点で、3.6%です。ただし、株主優待で得られる航空割引券は、有効期限が1年と限られています。自分で使うのが理想ですが、使わない場合は、ネットなどで売却することもできます。有効期限の残りが短くなり過ぎる(1カ月以内)と買い手がいなくなりますが、そうでなければ、ネットに出店しているチケットショップなどで簡単に売却できます。

 JALは、観光ブームの恩恵を受け、業績堅調でした。ところが、短期的には中国武漢で発生した新型肺炎の影響で、業績が悪化する見込みです。それを嫌気して、株価が足元下落しました。

 私は、短期的に訪日外国人観光客は減少するものの、長期的には増加トレンドを取り戻すと予想しています。短期的な不安から株価が大きく下がった今は、長期投資の好機と判断しています。

 同社の収益力への貢献が大きいのは、羽田発着便です。世界の航空業界を見渡すと、既存の大手航空会社は、LCC(低運賃の航空会社)との競争激化で、軒並み業績が悪化しています。日本の航空会社の業績が好調なのは、海外に比べると、まだ国内ではLCCとの競合が少ないからと言えます。特に、羽田空港では、深夜しかLCCが発着しないので、羽田空港が航空会社のドル箱となっています。将来、羽田空港にLCCが大量に入ってくるようになる場合は、投資判断を変える必要が出ます。羽田空港の発着枠は簡単に増やせないことと、現時点での日本の航空行政を見る限り、そのリスクは低いと考えています。

 日本の航空大手2社は、ANA HD(9202)と、JALです。業績を比較すると、ANAが連続して最高益を更新しているのに対し、JALは利益が伸び悩んできました。その差は、羽田発着分の新規割り当て数の差で説明できます。ANAは、JALよりも後から国際便に進出したため、これまで優先的に羽田発着便の配分を受けられました。それが、ANAの最高益更新に貢献していました。

 ただし、ANAへの羽田便の優先配分は、前期までで終了しました。今後は、JALにもANAにもそれぞれ羽田空港の国際線発着枠の増枠は、応分に配分される見込みです。

 ANAも、JALと同様、株主優待(航空割引券)で人気です。配当利回り(会社予想ベース)が2月12日時点で2.2%と、3%に達していないので、上記のリストに入りませんが、配当利回りは悪くない水準です。ANAも投資していく価値のある銘柄と判断しています。

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