THE S&P 500 MARKET: 2020年1月

 実現確率71.4%を誇るウォール街の格言「1月の相場がその年の相場を占う」が2020年1月に遭遇したのは、S&P 500指数の0.16%の下落でした。月中に終値で過去最高値を6回更新したにもかかわらずです。ちなみに、ダウ・ジョーンズ工業株価平均(ダウ平均)は最高値を5回更新しました。市場関係者はこぞって今一度「納得できる理由を探そう」としているようです。1月相場に関しては、スケープゴートが見つかりました(Appleを除くと、S&P 500指数の下落率はさらに大きく0.43%)。

→1月の騰落率が11.17%のマイナスとなったエネルギーセクターを除いたS&P 500指数の騰落率は0.34%のプラス
→1月の騰落率が2.80%のマイナスとなった金融セクターを除いたS&P 500指数の騰落率は0.23%のプラス

 好調な企業業績、米中貿易協議の第1段階の合意署名に加えて、米・イラン間の緊張関係の開始(第3次世界大戦に対する懸念)が終了(一件落着)したことを背景に、1月のS&P 500指数は順調な値上がりを見せ、最高値更新が続きました(1月17日時点の騰落率は3.06%の上昇)。原油価格が1バレル=64ドルを突破する場面も見られましたが、月末には51ドルまで下落し、S&P 500指数はこうした材料を消化しながら、楽観ムードと上昇基調を維持しました。しかし、この流れも新型コロナウイルス感染拡大が最大の懸念材料に浮上するまでのことで、月末にはこの問題が市場の話題を独占しました。市場関係者の間で議論となったのは、今回の市場の反応に関して、どの程度が新型肺炎によるものかという点です。大きく値を下げることなく最高値更新が続いたことから、市場は利食い売りの理由を探していたのかもしれません(1日で市場が1%下落したのは2019年10月以来です)。「私たち」全員が売り時を模索していたことから、調整のタイミングにあったというのが答えかもしれません。しかし、現実には、中国が大規模な感染防止の対策を講じ、5,600万人に移動制限を課しました。さらに、コロナウイルスの流行を防ぐために膨大な資源と資金を振り向けていますが、こうした措置の効果それ自体が、全世界に影響を及ぼすでしょう(人は孤立した島でありません)。2019年10月8日(1日で1.56%下落)以降で初めてとなる1日で1%以上の下落(1.57%下落)を記録した理由が何であれ、今回の相場の下げはフリーフォールというよりも、むしろ制御された売りのように見えました。また、翌日には、買い注文が入り割安株を物色する動きから1.01%上昇するなど反発し、2019年10月11日(1.09%上昇)以来となる1日の上昇率が1%を超えました。

 1月31日に再び1.77%下落したものの、買い手は様子見に徹していたようでした(注文を手控え、一段の値下がりを期待した待ちの姿勢を維持)。新型コロナウイルス感染の問題は引き続き世界的な懸念材料となっています。こうした中国発の問題が長引けば、世界のサプライチェーンと各種コストに影響し、瞬く間に米国株式市場の問題となるでしょう。そして、現時点で貿易問題、政局、金利動向をよそに、米国市場の懸念リストのトップに挙げられるのも当然と思われます。

 過去の実績を見ると、1月は63.7%の確率で上昇し、上昇した月の平均上昇率は4.20%、下落した月の平均下落率は3.96%、全体の平均騰落率は1.24%の上昇となっています。また、「1月の相場がその年の相場を占う」という相場格言の実現確率は71.4%です。2月は53.8%の確率で上昇し、上昇した月の平均上昇率は2.88%、下落した月の平均下落率は3.34%、全体の平均騰落率は0.01%の上昇となっています。今後の米連邦公開市場委員会(FOMC)のスケジュールは、3月17日-18日、4月28日-29日、6月9日-10日、7月28日-29日、9月15日-16日、11月4日-5日(米大統領選は11月3日)、12月15日-16日、2021年1月26日-27日となっています。

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