NYダウと原油の相関が崩壊

 先週のレポートで、「逆説的に言えば、新型肺炎の流行が経済的サプライチェーンの崩壊と経済的荒廃をもたらしたとしても、むしろFRB(米連邦準備制度理事会)のセーフティネットが大きな売りを防ぐことを意味している。これは、『ニューアブノーマル』という奇妙な逆さまの世界であり、『ニューアブノーマル』相場では危機が起こるたびに相場が上がっていく」というニューアブノーマル相場を取り上げた。

 モルガンスタンレーが「市場の修正が始まった。しかし、Fedはそれを5%に保つだろう」と予想していたように、NYダウ平均株価は4%下落後に反転している。NYダウの下げは4%で済んだが、原油は高値から21%も下げている。米国では新型肺炎よりインフルエンザの大流行で死者が増えているが、あまり話題になっていないのは、人は未知のものに恐怖を抱くのであって、知っているものには恐怖を感じないからだ。いずれにせよ、世界景気後退懸念は株価でなく原油などの商品相場が織り込んだ形となっている。日経平均やNYダウと連動性が高い原油相場だが、これほど大きく動きが乖離(かいり)したのは久しぶりである。株と原油のどちらかが間違っているのであろう。

NYダウ(青)とNY原油先物(赤)の日足の推移

出所:石原順

 ナスダック総合指数(日足)

 新型肺炎騒動の中、ナスダック総合指数は新高値を更新

出所:石原順

テスラ(週足)投機筋の買戻しとカネ余りでテスラが大暴騰

中国の18兆円バズーカ砲

 現時点では、相場の下げを止めたのは米国のFRBではなく、中国の人民銀行である。中国人民銀行(中央銀行)は2月2日の声明で、春節休暇明けの2月3日にリバースレポの公開市場操作を通じて1兆2,000億元(約18兆円)を金融市場に供給すると発表した。新型肺炎の感染が拡大する中、ミンスキーモーメント(パニック売りによる流動性パニック)を回避するため市場に潤沢な流動性を供給した。株価のPKO(プライスキーピングオペレーション/価格維持政策)と銀行の貸し渋りや貸しはがしを防止するのが狙いである。また、中国は相場下落を緩和するため、先物市場の夕方の取引を3日から停止し、中国証券監督管理委員会はファンドに対して「株式を売り越さないように指導した」と報道されている。噂では保険大手が春節明けに100億元の株式買い入れを実施したらしい。

上海総合指数(日足)順張りの標準偏差ボラティリティトレードモデル

出所:石原順

 豪ドル/円(日足)順張りの標準偏差ボラティリティトレードモデル

 中国株の上昇で豪ドル/円の売りトレンドは消滅した

出所:石原順インディケーター(楽天MT4)

ドル/円(日足)逆張りのATRチャネルトレードモデル

 三角もちあいの上値抵抗線にふたたびトライ中…

出所:石原順インディケーター(楽天MT4)

 景気サイクル(景気後退)は中央銀行が金融緩和、政治家が財政出動で対処するので、市場から合理性が失われ、「今後も株式市場は記録的な上昇をするのではないか?」という楽観的な意見が多い。現在、FRBは月額600億ドルを購入しており、その期限が切れる「6月までは全部買いだ!」との強気意見が圧倒的だ。

 実際、貸借対照表の資産の累積は新記録となっている。2002年以来、FRBのバランスシートは445%増となり、S&P500指数の総合リターンは404%増となった。国家管理下の人為相場だが、レバレッジの増加によって促進される成長は決して持続可能ではない。それでも、その持続不可能な金融政策は、それが終わると誰にも受け入れられない結果が待っているという単純な理由から継続している。

ラリー・ウィリアムズの日経平均予測

 米著名投資家ラリー・ウィリアムズは引き続き日本株に弱気の見方をとっている。これは新型肺炎とは関係のない理由だ。

「株式市場ではこれまでネガティブでしたが、やっとブレイクダウンしてきました。特に、日経平均は興味深いです。緑線の小口投機家は直近のピークで大量に買っています。実際、彼らが前回、ここまで買っていたのはチャートの左端までさかのぼります。彼らがネガティブになるまで、マーケットは下げ続けるでしょう。コマーシャルズは日経 225 先物を買っていません。引き続き、日経 225 先物は下降していくと思います。途中、反発してバウンドすると思いますが、それは売りシグナルを探すチャンスです」と、述べている。

ラリー・ウィリアムズの日経平均予測

出所:ラリー・ウィリアムズの週刊マーケット分析(ラリーTV)2020年2月3日 ラリー・ウィリアムズおよび国内代理店パンローリングの掲載許可をとって掲載。有料レポートのため、チャートおよび文章の一部を隠しています。

2月5日のラジオNIKKEI「楽天証券PRESENTS 先取りマーケットレビュー」

 2月5日のラジオNIKKEI「楽天証券PRESENTS 先取りマーケットレビュー」は、楽天証券株式事業部の紙田智弘氏をお招きして、「経営への圧倒的な熱量!イーロンマスクが率いるテスラと米国株投資の魅力」というテーマで話をしてみた。

 ラジオNIKKEIの番組ホームページから紙田智弘氏と筆者の資料がダウンロード出来るので、投資の参考にしていただきたい。

2月5日: 楽天証券PRESENTS 先取りマーケットレビュー(ラジオNIKKEI)

出所:YouTube

3月7日投資戦略フェアで石原順逆張りインディケーターをプレゼント!(楽天FX石原順講演)

 投資戦略フェアEXPO 2020(3月7日東京開催)で、石原順の講演があります。投資戦略フェア石原順講演参加者全員に石原順逆張りインディケーター(楽天MT4専用)をプレゼント!します。ぜひ、ご来場ください。

投資戦略フェア2019年(大阪)の様子

出所:石原順、楽天FX提供