新型肺炎はしばらく世界の市場をかく乱する

 新型肺炎の関連ニュースが多くの時間を使って報道され、世界的な関心と国民の不安が高まっています。

 過去のSARS(重症急性呼吸器症候群)もそうでしたが、生命の危機が迫っている場合、経済も縮む時期があります。一方で、いずれ人類は解決策を見いだし、社会・経済は回復に向かうことも間違いありません。

 SARSのときは、ウイルス原因の特定や対応策の確立に時間を要しました。それでも半年から1年をかけて、経済は回復に転じています。

 今回も、関係各所の努力が行われていますが、取り組み不足と批判する人も少なくなく、ゴシップ、誤報などもネットでは飛び交っているようです。しかし、私たちは落ち着いて日々の生活を送り、世の中の動きを見守りたいものです。

 さて、投資初心者、積立投資家にとって、こうした経済の急変時にはどう対応するべきでしょうか。パニック時に積み立て投資家が絶対にやるべきこと、この機会に考えてみましょう。

積み立て投資家にできること。それは何もしないこと

 もし、あなたが個別銘柄を中心とし、どちらかといえば短期売買取引を想定しているのであれば、こうした時期は銘柄が割安になったかどうかを考え、投資するチャンスといえます(トウシルにもそうした記事があるので、参考にしてください)。

 しかし、あなたがiDeCo(イデコ:個人型確定拠出年金)やつみたてNISA(ニーサ:少額投資非課税制度)をベースに少額の積み立て投資を行っているとしたら、どうでしょうか。また、投資信託やETF(上場投資信託)を中核に運用していた場合はどうでしょうか。

 実はあなたにできることは、あまりありません。

 あなたがNISA口座を使っているなら、保有している商品を売ってしまうことは非課税投資期間を終了させるということ。もう一度買い直すことは、今年のNISA枠を使うことになってしまいます。特に、つみたてNISAを行っている人は、無理をして過去数年にわたり、積み立ててきた投資資金を焦って売却する必要はありません。

 iDeCoではどうでしょうか。こちらは売却したとしても、非課税口座の中に資金を残し、また再投資をすることが可能です。しかし、投資信託の性質上(iDeCoにはETFや個別銘柄投資はない)、売買タイミングは選択できません。明日、あるいは明後日の基準価額で売買することになり(運用指図のタイミングと投資信託の条件による)、「今日下がったから売る(買う)」のような判断をしても、翌日相場が反転したりして裏目に出る可能性がしばしばです。

 それにあなたの投資のゴールがまだまだ先であるなら、今慌てて売ったところで、また再エントリーするタイミングを考えなければいけません。

 仮に10%下がろうと20%下がろうと、あなたの投資のゴールである未来には、新型肺炎を世界が克服できると思えるなら、値下がりや含み損の発生を気にする必要はなく、そのままポジションはキープすればいいのです。

あなたがやってはいけないことは「積み立て投資をやめること」

 逆に「やってはいけないこと」はあるでしょうか。もしあるとすればそれは、積み立て投資を中断することです。

 定期的な拠出を中断することは積み立て投資家にとってあまり賢い投資行動とはいえません。

 積み立て投資家、特に長期で積立投資を行う個人にとっては、短期的な値下がり時に拠出を続けることが一番効率的な投資になりえます。むしろ、値下がりと値上がりが繰り返すのであれば、値下がり時期に積み立て投資をすることが必要です。

 良くないのは「下がっている時期は積み立て投資を中断し、上がっている時期に積み立て投資を再開する」のような判断です。これは一見賢いように見えますが、(将来回復したのであれば)値下がり時期の新規購入を自ら停止させていたことになります。

 また、こういう投資行動を一度選択してしまうと、中断時点に株価が回復したとしても投資再開を行わない可能性が大です。再開しない理由は「まだ分からない」と考えてしまうことだったり、「面倒だったので忘れていた」というミスだったりします。

 積み立て投資を中断した人が、「その代わりに積み立て定期預金を同額継続します」ということもまずありません。これも積み立て投資家が投資を続けるべき理由の一つです。投資を止めたが貯金をしないのであれば、元本も積み上がらないだけの期間を設定することになってしまいます。仮に月2万円であったとしたら、1年の中断は元本24万円に相当しますが、貯金しなかった人が1年後に24万円を確保することは困難でしょう。

 ここまでちょっと難しいことを書いたように思いますが、実はあなたが「絶対にやるべきこと」は「何もしないこと」なのです。あなたは「何もしない」でただ次回の積み立て投資の引き落としをすればいいだけなのです。

積み立て投資家は焦るべからず

 冒頭申し上げたように、人類はいつか新型肺炎を克服します。どれだけ時間がかかるかは分かりませんが、治療方法が確立することは間違いありません。

 今はショッピングモールやアミューズメント施設に行かない家族も安心できるようになればまたお出かけをします。つまり今冷え込んだ消費があってもいつかまた復活して消費が戻ってきます。

 下がった株価も戻ってきます。ですから長期積み立て投資家は焦らないでください。iDeCoもつみたてNISAも安易な売り注文や定期拠出の中断が、長い目で見て資産形成の中断になることはもったいないことです。

「何もしないをする」というとおかしな表現ですが、むしろ今こそ堂々とそのままの積み立てを続けてください。きっと1年後には「何もしないでよかった」と思うことになるはずですよ。