毎週金曜日夕方掲載

本レポートに掲載した銘柄:アドバンテスト(6857)東京エレクトロン(8035)

アドバンテスト

1.2020年3月期3Qは7%減収、31%営業減益

 アドバンテストの2020年3月期3Q(2019年10-12月期)は、売上高699億1,700万円(前年比6.7%減)、営業利益142億5,300万円(同31.2%減)となりました。

 今3Qの売上高と営業利益は今2Qの売上高715億8,600万円(前年比1.5%減)、営業利益177億1,800万円(同1.3%減)に比べて減収減益となったものの、高水準でした。今3Q営業利益は前年比で大幅減益でしたが、これは前3Qの業績水準が高かったこと、前3Qの営業利益に年金制度の変更等による一時利益約35億円が含まれていたことが影響しています。この一時利益を除くと、今3Qは実質17.4%営業減益となります。また、研究開発費の増加、サービス要員増加による人件費増加も営業減益の要因です。

 今3Qの全社受注高は729億円(前年比16.3%増、前期比(今2Q比)25.0%増)と好調でした。事業別に見て最も金額が大きいSoCテスタ(非メモリ・テスタ)の受注高は315億円(前年比26.9%減、前期比5.4%減)と伸びはありませんでしたが、高水準でした(SoCテスタ受注高は、今1Q436億円、今2Q333億円、今3Q315億円)。5G用テスタの受注が高水準でした。

 また、メモリ・テスタ受注高は159億円(前年比2.8倍、前期比62.2%増)と大幅に増えました(今1Q63億円、今2Q98億円、今3Q159億円)。NAND型フラッシュメモリ向けが回復してきたことに加え、2020年1-3月期から量産が始まる次世代高速DRAM「LPDDR-5」(DDR-5の低電力版)向けのメモリ・テスタ受注が好調でした。

 この他、メカトロニクス関連事業(多数の半導体をテスタに乗せるテスト・ハンドラやデバイス・インターフェース[各種付属機器])とサービス他(サポート、メンテナンスなど)の受注も回復しました。後工程の半導体設備投資が活発になってきたことを示しています。

 地域別受注高を見ると、SoCテスタ受注が高水準であることを反映して台湾向けが堅調です。韓国向けはNAND向け、LPDDR-5向けの寄与で回復してきました。また、中国向けが急速に伸びていますが、これは中国民族系半導体メーカーのSoCテスタ、メモリ・テスタの発注が増えているためです。中国向けの伸びは今後も続くと思われます。

 今3Q末の全社受注残高は643億円と今2Q末613億円からやや増加しました。引き続き高水準の受注残を持っています。

 テスタ売上高の動きを見ると、SoCテスタは、今1Q448億円、今2Q418億円、今3Q379億円と緩やかに減少しています。今1Qに5G用テスタの受注、出荷が活発だった反動がでていると言えます。一方でメモリ・テスタ売上高は、今1Q61億円、今2Q102億円、今3Q114億円と増加トレンドに入っています。今1Qにメモリ・テスタ売上高が減りすぎた反動が出ていること、今3QはNAND向けが回復していることで上向いていると思われます。

表1 アドバンテストの業績

株価    5,670円(2020/1/30)
発行済み株数    198,372千株
時価総額    1,124,769百万円(2020/1/30)
単位:百万円、円
出所:会社資料より楽天証券作成
注1:発行済み株数は自己株式を除いたもの。
注2:当期利益は親会社の所有者に帰属する当期利益。

グラフ1 アドバンテストの半導体テスタ受注動向

単位:億円
出所:会社資料より楽天証券作成

グラフ2 アドバンテストの全社受注高

単位:億円
出所:会社資料より楽天証券作成
注:2000年3月期1Qから2002年3月期4Qまでは会社資料を基に楽天証券推定

2.2020年3月期会社予想業績は上方修正された

 今3Qまでの高水準な業績を見て、会社側は2020年3月期予想業績を前回予想の売上高2,470億円(前年比12.6%減)、営業利益450億円(同30.4%減)から、売上高2,700億円(同4.4%減)、営業利益560億円(同13.4%減)へ上方修正しました。事業別売上高の会社予想を見ると、SoCテスタ、メモリ・テスタだけでなく、メカトロニクス関連事業、サービス他も上方修正されています(表2)。

 新しい会社予想では、今4Qは今3Q比で減収、大幅営業減益となり前年比でも減収減益となる見通しです。ただし、業績のトレンドに勢いがあるため、楽天証券では、2020年3月期通期予想を売上高2,750億円(前年比2.6%減)、営業利益580億円(同10.3%減)と予想します。このため、今4Qの楽天証券予想は、売上高673億円(同5.3%増)、営業利益109億円(同6.6%増)と今3Q比では減収減益となるものの、前年比では増収増益に転換すると予想します。

 なお、今期末に繰延税金資産の計上を行うため、今期の見掛け上の税率が低くなる見込みです。

表2 アドバンテストの事業別売上高

単位:億円
出所:会社資料より楽天証券作成。

3.2021年3月期はSoCテスタ高水準、メモリ・テスタ本格回復で業績続伸へ

 会社側は表3のように、2020年のテスタ市場の見通しを、SoCテスタは横ばい、メモリ・テスタは23.1%増と伸びはするが比較的低い伸びに留まるとしています。会社側は足元の高水準な業績について、SoCテスタの中の5Gテスタは想定より早く拡大しすぎており、メモリ・テスタはLPDDR-5向けが想定よりも早く立ち上がっているため、今後反動がありうることを懸念しているもようです。ただし、私の見解では会社側の5G用テスタの需要見通しは5Gスマホの需要と生産の勢いから考えて控えめ過ぎると思われます。

 楽天証券では、来期2021年3月期を売上高3,300億円(前年比20.0%増)、営業利益810億円(同39.7%増)と予想します。前回予想の売上高3,200億円、営業利益800億円から上方修正しますが、これは今回買収した米Essai社(テスタ用ソケットの大手、年間売上高約1億ドルで黒字)の収益を上乗せしたことによります。来期もSoCテスタ需要は一定の伸びが続き、メモリ・テスタはNAND向けの伸びにLPDDR-5向けの本格化が加わって大きく伸びると予想します。メカトロニクス関連、サービス他も今期同様伸びると予想されます。

表3 アドバンテストの半導体テスタ市場予想

単位:100万ドル、暦年
出所:アドバンテスト資料より楽天証券作成

4.今後6~12カ月間の目標株価は9,000円を維持する

 今後6~12カ月間のアドバンテストの目標株価は、前回の9,000円を維持します。楽天証券の2021年3月期予想EPS329.2円に想定PER25~30倍を当てはめました。引き続き投資妙味を感じます。

表4 アドバンテストの受注高

単位:億円
出所:会社資料より楽天証券作成

表5 アドバンテストの売上高

単位:億円
出所:会社資料より楽天証券作成

東京エレクトロン

1.2020年3月期3Qは10%増収、10%営業増益

 東京エレクトロンの2020年3月期3Qは、売上高2,954億5,400万円(前年比10.2%増)、営業利益647億1,000万円(同10.2%増)でした。今1Q、2Qは前年比40%以上の営業減益でしたが、今3Qは前3Qの水準が低かったことから増収増益となりました。四半期ベースでみると、今1Qを底として業績は順調に回復中です。

 今3Qの半導体製造装置の新規装置売上高は2,097億円(前3Q1,698億円、今2Q1,984億円)と堅調に伸びました。これのアプリケーション別内訳を見ると、ロジック&その他向け(MPU、その他)が構成比35%、売上高734億円(今2Q635億円)と順調に伸びました(表7)。インテルのCPU生産能力増強などが寄与したと思われます。ロジックファウンドリ(半導体受託製造業者)向けは構成比27%、売上高566億円(今2Q357億円)と順調に伸びました。TSMCの7ナノ、5ナノ設備投資の増加などを反映していると思われます。

 また不揮発性メモリ(NAND型フラッシュメモリ等)は、構成比20%、売上高419億円(今2Q476億円)となりました。今2Qより減収となりましたが、今1Q196億円から急速に回復しています。NAND市況の底打ちによりNAND向け設備投資が回復しています。ただしDRAM向けは、構成比18%、売上高377億円(今2Q516億円)と傾向的な減少が止まっていません。DRAM市況の下落が続いていることが要因と思われます。

 地域別売上高を見ると(表8)、ロジック半導体向け、ロジックファウンドリ向けの増加を反映して、北米、台湾向けが傾向的に増加しています。中国もメモリ(DRAM、NAND)中心に、外資系、民族系とも能力増強投資が活発で、傾向的に売上高が大きくなっています。ただし、韓国向けはメモリ向け設備投資の低迷を反映して減少が続いています。

表6 東京エレクトロンの業績

株価    23,950円(2020/1/30)
発行済み株数    155,500千株
時価総額    3,724,225百万円(2020/1/30)
単位:百万円、円
出所:会社資料より楽天証券作成
注1:発行済み株数は自己株式を除いたもの。
注2:当期純利益は親会社株主に帰属する当期純利益。

表7 半導体製造装置のアプリケーション別売上構成比と売上高(新規装置のみ)

単位:%、億円
出所:会社資料より楽天証券作成。
注:売上高は会社公表の売上構成比から楽天証券計算。

表8 東京エレクトロン:半導体製造装置の地域別売上高

単位:億円
出所:会社資料より楽天証券作成。
注:端数処理の関係で合計が合わない場合がある。

2.会社側は2020年3月期会社予想業績を維持。来期は増収増益へ転換へ

 会社側は前回の2020年3月期会社予想業績、売上高1兆1,100億円(前年比13.2%減)、営業利益2,250億円(同27.6%減)を維持しました。今4Qは前年比で減収減益となる見込みですが、ロジックファウンドリ、ロジック半導体向けが続伸し、NAND向けが回復すると予想されます。また、DRAM向けは減少が続く見通しです。

 2021年3月期は増収増益に転換すると予想されます。会社側では、2020年暦年の半導体設備投資の動向について、ロジック半導体とファウンドリ向けでは最先端(5ナノ)から14ナノまでの投資が高水準を維持すると見ています。NAND向け投資では、段階的な投資再開を予想しており、今の9x層(90層台)から12x層(120層台)への移行に伴う投資が増加するとしています。DRAM向け投資の再開も予想しており、今の1Xナノ(18ナノ)の次の世代である1Yナノ(17ナノ)、1Zナノ(16ナノ)の微細化投資が予想されますが、時期は不透明です。

 いずれの分野でも、エッチング、成膜、洗浄の各製品群で事業機会が増えると会社側は見ています。

 ロジックファウンドリ向けは、2020年の5ナノ半導体量産開始から2年後の2022年には3ナノの量産が開始されると思われます。そのため、2021年からそのための準備に入ると思われます。また、ハイパフォーマンスコンピューティング(HPC)の市場が拡大しており(ゲーミングPC、画像処理用PC、ディープラーニング用PCなど)、そのためのハイエンドCPUへの設備投資も継続すると予想されます。そのため、ロジック半導体とロジックファウンドリ向け投資が今後数年間、切れ目なく増える可能性があります。

 これらの状況を考慮して、楽天証券では来期2021年3月期業績予想を、前回と同じ売上高1兆3,000億円(前年比17.1%増)、営業利益3,100億円(同37.8%増)とします。

グラフ3 東京エレクトロンの半導体・FPD製造装置販売高

単位:億円、四半期ベース
出所:会社資料より楽天証券作成

3.今後6~12カ月間の目標株価を、前回の3万円から3万4,000円に引き上げる

 今後6~12カ月間の東京エレクトロンの目標株価を、前回の3万円から3万4000円に引き上げます。楽天証券の2021年3月期予想EPS 1530.5円に想定PER20~25倍を当てはめました。2020年の半導体設備投資では前工程向け投資が本格的に動き出すと予想されることから、想定PERを前回の20倍から今回は20~25倍にしました。引き続き投資妙味を感じます。

本レポートに掲載した銘柄:アドバンテスト(6857) 東京エレクトロン(8035)