短期間で大きな利益も狙える信用取引ですが、使い方を間違えると大きな損失にもつながります。2つの事例を元に、失敗の理由と回避策を一緒に考えていきましょう。

信用取引に対する一般的なイメージは?

 怖い?でも気になる!信用取引をはじめてみよう!で、信用取引のメリットとリスクをお伝えしました。筆者は信用取引を多用していますが、なかなか踏み出せない方も多いです。そんな方がこぞって口にするのが「信用取引は危険だ」とか「バブルの時に近所のおじさんが信用取引で一文無しになった」というマイナスのイメージです。

 このイメージは間違っていません。ただ少し誤解を招いているのが、失敗したケースしか耳に入っていないという点です。信用取引は使い方を誤らなければ非常に有効なツールだということがまだ浸透していないような気がします。

 次の事例は、筆者の方で少し脚色していますが、事実と異なるニュアンスにはしていません。実際にあった話をベースにしています。

事例1:突然の悪材料で一転借金に

 Aさんは、X株にとても入れ込んでいました。プロよりも詳しいのではないかと思うくらい、X株のことを研究し、「ほぼ間違いなくX株は大きく上昇する!」と確信していました。

 そこで、X株にほぼ全財産を投入し、さらに現物のX株を担保にして信用取引でもX株を買いました。このように、現物の株式を担保に入れ、現物と同じ銘柄を信用取引で買うことを「信用2階建て」と呼び、とてもリスクの高い方法です。

 その後、X株は順調に上昇し、Aさんの持ち株の評価額も1億円に迫る勢いでした。ところがある日、X株に、非常に大きな悪材料が発表されました。その結果1週間もストップ安比例配分で売るに売れない状態が続き、ようやく売れた頃には株価は4分の1に下落していました。

 その結果、信用取引で買ったX株が多額の含み損を抱え、証券会社により強制決済されました。担保としていた現物株も売却しましたが、株価の下落が大きかったため担保だけでは損失を穴埋めできず、結局は証券会社に対して数千万円の借金を抱えることになってしまいました。

事例2:「絶対下がる」と空売りを続けた結果一文無しに…

 2つ目の事例は信用売り(空売り)です。Bさんはある金融機関Y社が不祥事により業績が悪化したのを見て、「Y社は近い将来倒産も十分あり得る」とY株を大量に空売りしました。

 しかしY株は意に反して上昇しました。そこでBさんは「株価が上がるなんておかしい」とさらにY株の空売りを追加しました。

 でもY株の上昇は止まりません。これ以上Y株が上昇して損失が拡大すると、全財産を失うどころか、自宅まで売り払わないといけなくなってしまうところまで追い込まれました。

 結局BさんはY株の空売りを返済し、自宅売却の危機は免れましたが、財産の大部分を失うことになってしまいました。

2つの事例から学ぶべきこと

 財産を失わないようにするには、どうすればよかったでしょうか。

 1つ目のAさんの事例は、1つの銘柄に資金を集中させてしまったことが原因です。もし1つの銘柄に絞るのではなく、資金の10分の1で同じことをしていたら、ここまでの致命傷にはならなかったわけです。

 確かに、集中投資や空売りを仕掛けることで、大きな利益を得られることもあります。でも、100%成功するわけではありません。逆の目が出た場合、大きな損失につながる危険性も十分考えられるのです。

 どんなに自信がある銘柄でも、資金を集中させ過ぎないことが肝要です。

早期の損切りが自分の財産を救う

 また、Aさんのケースでは突然の急落なので実行できませんが、Bさんのケースでは早期に「損切り」をしておけば、間違いなくここまで悲惨な結果にはなりませんでした。

 損切りをせずに損失が拡大しても我慢し続けた結果、最後には我慢の限界を超えてほぼ一文無しになってしまったのです。

 空売りをした後で株価が逆に上昇し、含み損が拡大しているなら、早めに諦めて空売りの買い戻しを行い、決済すべきだったのです。

 しかし、Bさんは空売りした株の損切りではなく「空売り」を追加してしまったのです。これは非常に危険な行為と言わざるを得ません。

 ただでさえ、空売りした株が上昇して損失が拡大しているのに、そこに空売りを追加した後にさらに株価が上昇したら、さらに損失が大きく膨らんでしまいます。

 信用取引で大きな失敗をする方は、意識してか無意識かは分かりませんが、自分自身の行動に絶対的な自信を持っています。だから自分の予測と逆方向に株価が動いても、行動を訂正せずに我慢してしまうのです。

 信用取引は、たった一度の失敗が、取り返しのつかない結果をもたらすことも多々あります。どんなに自信があっても資金を1つの銘柄に集中しないこと、そして思惑と逆方向に株価が動いたら早期に損切りを行うこと、この2つは絶対に守るようにしてください。