つみたてNISA、どの投資信託を選べばいいの?

 今回は「つみたてNISA(つみたてニーサ:積み立て型の少額投資非課税制度)」の活用法について考えていきます。

 最初に押さえておきたいのは、「制度」ありきで考えないこと。

「つみたてNISA」に関心をお持ちの方は制度を使うのが目的ではなく、稼いだお金の一部を貯蓄や投資に回して、長期的にお金を育てていく(=資産形成を行う)ことが目的ですよね。

 ですから、制度を目いっぱい使うとか、効率的に使おう、と考える前に、まずは家計の現状把握(資産や負債、収支など)や、投資する目的、運用できる期間、投資に回す金額などを整理しましょう。大事なのは、運用方針を明確にした上で、制度をどう使うかを決めることです。

 つみたてNISAに向いているのは、対象となっている投資信託(インデックス投信が中心)を活用して、年間40万円以内でコツコツ資産形成をしていきたい人です(iDeCo《イデコ:個人型確定拠出年金》や企業型確定拠出年金と併用して使うとより効果的)。つみたてNISAはETF(上場投資信託)も対象になっていますが、対象商品が少ないため、ここでは投資信託を中心にお話します。

 この制度は1.運用益が非課税、2.投資信託の手数料が低い(対象商品はすべて購入時手数料が無料で保有中にかかる運用管理費用《信託報酬》の料率にも上限あり)、3.非課税期間が最長20年――という特徴があります。長期で効率的な運用ができるので、金融資産全体で考えると、なるべく期待リターンの高い商品で運用するのが合理的です。

 そもそも、つみたてNISAは「株式に投資する投資信託」か、「株式を含む資産複合型(バランス型)」が対象です(債券やREITだけに投資する商品などは対象外)。長い期間をかけて運用していける人は「株式に投資する投資信託」をメインに据えたいところです。

株式を保有していない人は、世界の株の投信を

 従来世界の株にまとめて投資するには日本株、先進国株、新興国株に投資する投資信託をそれぞれ購入するか、日本株と日本を除く世界株(先進国株+新興国株)を組み合わせて持つ必要がありました。

 2018年1月につみたてNISAがスタートしたのを機に、2017年から1本で日本を含む世界の株に投資できる投信が登場してきました。つみたてNISAの対象となっています。

 具体的にはMSCIオール・カントリー・ワールド・インデックス(MSCI ACWI)に連動することを目指すインデックス投信や、FTSEグローバル・オールキャップ・インデックスに連動することを目指すインデックス投信です。

 例えば、前者MSCI ACWIに連動する投資信託には「eMAXIS Slim全世界株式(オール・カントリー)」(三菱UFJ国際投信)などがあります。後者の代表例は「楽天・全世界株式インデックス・ファンド<愛称:楽天・バンガード・ファンド(全世界株式)>」(楽天投信)や、「SBI・全世界株式インデックス・ファンド(愛称:雪だるま(全世界株式))」(SBIアセットマネジメント)です。 

 初心者の方からは「複数の投資信託を組み合わせるのは難しい」「面倒」という声を耳にします。

 まずは1本で世界の株にまとめて投資できる、幅広く分散された商品を購入していく方法もあります。

 あるいは、すでに日本株(個別株でも投資信託でも)を持っているという場合は、海外の株に投資する投資信託だけを積み立てていくという選択肢もあります。

 例えば、「MSCI オール・カントリー・ワールド・インデックス(除く日本、円ベース)」に連動する投資信託なら、1本で先進国と新興国の株にまとめて投資できます。「野村つみたて外国株投信」(野村アセットマネジメント)や「eMAXIS Slim全世界株式(除く日本)」(三菱UFJ国際投信)などが代表例です。

 あるいは、「MSCI KOKUSAI インデックス」や「MSCIエマージング・マーケット・インデックス」に連動する投資信託のように、先進国株と新興国株に投資する投資信託を組み合わせてもいいでしょう。

 例えば、先進国株のインデックス投信には「<購入・換金手数料なし>ニッセイ外国株式インデックスファンド」(ニッセイアセットマネジメント)や、「たわらノーロード 先進国株式」(アセットマネジメントOne)、「eMAXIS Slim 先進国株式インデックス」(三菱UFJ国際投信)などがあります。

繰上償還リスクの少ない商品を

 日本を含む世界株に投資するタイプは、商品が少なめですが、それ以外、例えば、先進国株のインデックス投信は同じ指数「MSCI KOKUSAI インデックス」に連動する商品はたくさんあります。

どんな基準で選ぶ?

 つみたてNISAでは投資信託を解約するとその枠は再利用できません。繰上償還(償還予定前に償還されること)された場合も同様です。ですから、なるべく繰上償還されるリスクの低い商品を選びたいところ。

 同じ指数に連動するインデックス投資信託がたくさんある場合には、「運用実績がある(新規設定でない)」「運用管理費用(信託報酬)が相対的に低く、運用管理費用(信託報酬)の引き下げ実績がある」「純資産総額が安定的にふえている」という観点で選びましょう。

 ここではインデックス投信の例を挙げましたが、一部アクティブ投信もつみたてNISAの対象になっています。運用理念や、投資先の企業を選ぶプロセス、運用実績などを調べた上で、共感・納得できる投信があればそれも選択肢になります。交付目論見書や月次レポートをしっかり読んだり、投資信託の説明会(動画・対面の説明会)があれば聴講・参加したりするとよいでしょう。

 長期で運用するなら、株式に投資する投資信託をメインに据えたいところ(金融資産全体でみたときに積立額はそれほど多くないと思われるため)ですが、値動きが大きいものは抵抗があるという人も。

 本来は、投資する金額で調整する(=つみたて投資に回す金額を減らす)のが基本ですが、「値動きをもう少しマイルドにしたい」「長期で運用しない可能性もある(引き出す時期が比較的近いかもしれない)」という人は、バランス型を持つという選択肢もあります。

 バランス型は中身(株式と債券だけか、不動産投信も含まれるか)や配分(国内と海外の比率や各資産の比率等)が商品によって異なるので、必ず確認しましょう。とくにリスク(どの程度変動するのか)は数値をみておきましょう。

押さえておきたいこと3つ

 最後に、つみたてNISAを活用する上で覚えておいてほしいことを3つ挙げます。

1.俯瞰する

 金融資産全体をみるクセをつけましょう。他に運用しているものとかぶっていないかを考えた上で、つみたてNISAでは何を運用していこうかな、というふうに考えてください。

2.続けること

 つみたてNISAでは、幅広く分散された商品をコツコツ「継続的に」買っていき、長く保有することが大切。とくに、「暴落のときに積み立てをやめない」「解約しない(損を確定しない)」ことが大切です。長い目でみてください。

3.ベストよりベターを

 ここまで「つみたてNISA」の活用例についてお話してきましたが、唯一の正解はありません。繰り返しになりますが、属性や運用できる期間、保有する預貯金などの安全資産の額などによっても、「つみたてNISA」との付き合い方は異なります。自分にとってベターな活用法を考えましょう。

 例えば、個別の株式を買いたい人は一般NISAでよいでしょうし、つみたてNISAの対象となっていない投資信託を買いたい人は一般NISAや特定口座で購入するという選択肢もあります。自営業の人で「節税しつつ老後資金づくりを優先したい」という人は小規模企業共済やiDeCoからスタートしてもよいでしょう。

 つみたてNISAをきっかけに、自分なりの運用方針を、この機会に改めて考えてみるとよいのではないでしょうか。