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 2019年の金融市場は、FRB(米連邦準備制度理事会)が昨年末までの金融正常化の方針を一転し、『金融緩和』姿勢に転じたことで、世界的に『金融緩和』の波が広がりました。背景にあるのは米中貿易摩擦の激化などによる世界経済のリスクの高まりです。景気減速を下支えするためFRBによる3度の予防的利下げが実施されるなか、世界的に緩和の流れが広まり『金融緩和』ドミノとなりました。

【ポイント1】米国が『金融緩和』へ方針転換

2019年は3度にわたり予防的利下げを実施

 米中貿易摩擦に伴う景気減速懸念や、英国のEU(欧州連合)離脱などへの不確実性が高まったことから、FRBは昨年末まで進めていた金融正常化を一転し、今年に入りハト派姿勢を強めました。そして7月のFOMC(米連邦公開市場委員会)で『金融緩和』へと舵を切り、2008年12月以来となる政策金利の引き下げが実施されました。続く9、10月と3会合連続で利下げが実施され、一段と『金融緩和』が進みました。

 同じく金利正常化を進めていたECB(欧州中央銀行)も、米国に追随しハト派姿勢を強めたあと、9月の理事会でマイナス金利の深掘りと、量的緩和の再開などを決定しました。

【ポイント2】『金融緩和』は世界に波及

長期金利は世界的に大幅に低下

 米国に追随するように『金融緩和』は世界中に広がりました。米中貿易摩擦等に起因する世界的な景気減速に対し、各国中銀が『金融緩和』でテコ入れを図るためです。米国の『金融緩和』により新興国通貨に対する米ドル高圧力が低下し、『金融緩和』の余地が生まれたことから、新興国の中央銀行も相次いで利下げを行いました。

 今年の5月以降でみると、アジアや南米等を含む主要17カ国・地域が『金融緩和』に踏み切っており、この結果、世界的に長期金利が大幅に低下しました。米国の『金融緩和』により投資家のリスク選好姿勢が強まり、新興国市場にも資金が流入しました。

【今後の展開】『金融緩和』環境は継続する見込み

 世界経済への重石となっている米中貿易交渉においては米中が第1段階の合意に達したことから、2020年の世界経済は持ち直しが期待されます。FRBは12月のFOMCで4会合ぶりに政策金利を据え置くとともに、利下げサイクルの終了を示唆しました。一方、利上げを見込むほどのインフレも見込まれないため、2020年にわたり政策金利を据え置くと予想されます。このことから、世界的な『金融緩和』環境は来年も続く見込みです。