10~12月が強いと1月は弱い:1月のアノマリー

 日経平均株価は、昨年(2018年)来の高値に迫る2万4,000円前後まで上昇しています。12月30日大納会まで大きな材料は出ず、このまま高値圏で推移する可能性もあります。それでは、1月6日大発会から始まる新しい年の相場は、どうなるでしょう?

 1つ気になるのは、1月のアノマリー(季節ごとに繰り返す相場のパターン)です。日本株でも米国株でも、1月は、相場の流れ・物色動向が変わりやすいことで、知られています。実際、過去の日経平均を見ると、「12月まで高く、1月から安い」あるいは「12月まで安く、1月から高い」パターンが多いことがわかります。

 昨年も年末~年初で大きく相場の流れが変わりました。2018年12月に急落した日経平均は、2019年1月から急反発しています。2018年12月の日経平均が前月比▲10.5%だったのに対し、2019年1月は前月比+3.8%でした。

 ただし、年末安・年初高は、近年では珍しいパターンでした。一昨年(2017年12月~2018年1月)までの15年間で見ると、圧倒的に年末高・年初安のパターンが多かったことがわかります。

<12月・1月の日経平均騰落率(前月比):2003年12月~2018年1月>

年 月 12月 1月
2003年12月~2004年1月 +5.7% +1.0%
2004年12月~2005年1月 +5.4% ▲0.9%
2005年12月~2006年1月 +8.3% +3.3%
2006年12月~2007年1月 +5.8% +0.9%
2007年12月~2008年1月 ▲2.4% ▲11.2%
2008年12月~2009年1月 +4.1% ▲9.8%
2009年12月~2010年1月 +12.8% ▲3.3%
2010年12月~2011年1月 +2.9% +0.1%
2011年12月~2012年1月 +0.2% +4.1%
2012年12月~2013年1月 +10.0% +7.2%
2013年12月~2014年1月 +4.0% ▲8.5%
2014年12月~2015年1月 ▲0.1% +1.3%
2015年12月~2016年1月 ▲3.6% ▲8.0%
2016年12月~2017年1月 +4.4% ▲0.4%
2017年12月~2018年1月 +0.2% +1.5%
15年平均 +3.8% ▲1.5%
注:楽天証券経済研究所が作成

 日経平均だけでなく、NYダウ平均株価も、近年は1月に下がる傾向がありました。10~12月まで強かったNYダウが、1月は利益確定売りから始まるパターンがよく見られました。

 アノマリーと言われているものには、ただの偶然もあります。たまたま過去がそうだっただけで、今後も同じことが起こる理由が何もない場合もあります。たとえば「節分天井、彼岸底」という相場格言がそうです。「株が2月はじめに天井をつけて下がり、3月後半に底をつけて反発に転じる」という意味ですが、最近は、まったく当たっていません。

 私は、過去25年、ファンドマネージャーをやってきましたが、アノマリーなるものを、ほとんど無視して運用してきました。ただし、「1月に相場の流れが変わる」アノマリーだけは、無視することができませんでした。何回も、繰り返し起こるからです。

1月に相場の流れが変わるのは、「やるべきことは年内に」と考える人間心理が原因

 1月に相場の流れが変わるのは、偶然ではありません。それが起こりやすい理由がはっきりあります。それは、「やるべきことは年内にやっておこう」と考える人間心理が原因だと思います。その結果、以下のパターンを繰り返しています。

◆みんなが強気で10~12月に株が強いと、年明けに下落
 多くの人は、今年やるべきことは今年中に済ませようとします。新しい年に向けて、準備すべきことは年内に準備しておこうとします。たとえば、来年、日本株が大きく上昇するというのが、コンセンサスになっていたとします。すると、多くの人は、年内に株を買ってしまおうと考えます。「株を枕に越年で、よい初夢を」と考えるわけです。

 ところが、ほとんどの人が年内に株を買ってしまうと、皮肉なことに年明けから株の買い手がいなくなります。そこで1月には、わずかな利益確定売りから相場が崩れやすくなります。

◆みんなが弱気一色なら10~12月が弱く、年明けに上昇
 弱気がまん延していると、多くの人は年内に株を売ってしまおうと考えます。株なんか持っていたら、安心して越年できないというわけです。この場合は、年明けにはもう売り手がいなくなるので、上昇を始めます。

◆強気と弱気が混在していて、10~12月は方向感のない相場となると、1月に相場の転換は起こりません。リターン・リバーサルが起こるのは、あくまでも、12月になんらかのコンセンサスがあって、相場が一方向に動いたときだけです。

1月のリターン・リバーサル:過去の事例

 私は、ファンドマネージャー時代に、1月に物色動向ががらりと変わるケースをたくさん見てきました。代表的なものだけ紹介すると、以下のようなものです。

<1月のリターン・リバーサル:過去の事例>

◆1987年12月→1988年1月
 1987年10月にブラックマンデーがあって世界的に株が急落。12月まで下げ相場が続いたが、1988年1月から急反発。

◆1989年12月→1990年1月
 1989年12月末に日経平均は史上最高値(約3万8,000円)をつけ強気一色だったが、1990年1月から急落。

◆1999年12月→2000年1月
 1999年12月までITバブル相場でIT関連株が急騰したが、2000年1月からIT関連株が急落。

◆2005年12月→2006年1月
 2005年12月までミニITバブル相場でIT関連株が急騰したが、2006年1月から急落。

◆2008年12月→2009年1月
 2008年10月にリーマンショックが起こり12月まで景気敏感株が急落したが、2009年1月から景気敏感株は急反発。

 上記は、1月に極端なリターン・リバーサルが起こったケースです。小さなリターン・リバーサルはもっとたくさん起こっています。たとえば、2017年12月まで景気敏感株が大きく上昇していましたが、2018年1月から急落しました。2018年12月まで景気敏感株が急落していましたが、2019年1月から急反発しています。

 さて、2020年はどうなるでしょうか? 6日からの相場をじっくり見てみたいと思います。

▼もっと読む!著者おすすめのバックナンバー

3分でわかる!今日の投資戦略:
2019年12月23日:世界株高、いつまで続く?不況下の株高?来年の景気回復織り込み?
2019年12月16日:2020年の日経平均の行方ー2019年の振り返りと2020年の予想
2019年11月28日:12月の人気株主優待トップ10:アナリストの視点でチェック