今年、はじめて株を買った人はどんな銘柄を買ったのでしょうか。今回は2019年投資未経験者が買ったデビュー株銘柄をランキング形式でご紹介していきたいと思います。
※楽天証券の口座で2019年1~11月末の期間で「投資信託または株の未取引者」が、初めての株取引で何を買ったかを順位付け

 ランキング上位の銘柄については、なぜ買われているのか、注目されているのかを簡単にお伝えします。

第3位は高配当銘柄

オリックス(8591)株価1,828円(12月19日終値)

 第3位には、リースや中小企業向け融資に強みを持ち、金融サービスを幅広く展開するオリックスが入りました。「安定した株価推移」と「高配当」が人気の理由です。

 配当利回りは、東証1部上場銘柄の平均値である1%台後半を大きく上回る年4%台超え。同社の株主還元方針は、配当性向30%もしくは1株当たり通期配当金76円のいずれか高い方を採用しており、今期の配当は前期同様に年間76円と決定しています。

 また、2019年内にも米不動産ローン会社を買収する予定のほか、今後も中長期視点に立ったポートフォリオの入れ替えを推進する流れとなっており、業績期待を背景に株価も堅調推移となっています。

第2位は底狙いのチャレンジャー?

日産自動車(7201)株価671.7円(12月19日終値)

 経営トップによる不祥事として話題となったのは、まだ記憶に新しい出来事です。役員報酬の過少申告を巡る金融商品取引法違反容疑で、昨年末に東京地検が当時の経営トップであったゴーン元会長を逮捕したと伝わりました。

 同社では同会長らの解任が決定しましたが、次いでCEO(社長兼最高経営責任者)となった西川広人氏にも、役員報酬を不正に受け取っていたことが判明。この約1年間という短い期間で2度のトップ人事交代が行われ、企業ガバナンスへの警戒感から株価も大幅に調整しました。

 また、11月半ばには円高などのコストアップ要因も重なり、11月には通期業績予想の下方修正を発表。年間配当見通しも未定に変更しており、減配の可能性があります。

 株価が大きく下落したことでトヨタ自動車(7203)ホンダ(7267)と比べて値ごろな金額で購入できる点が目を引いたのかもしれませんが、売上高や営業利益が3期とも前期比マイナスが続いています。初心者向きではない銘柄といえますので、こちらは十分に踏まえておく必要があります。

第1位は人気株主優待

イオン(8267)株価2,274円(12月19日終値)​

 そして、栄えある第1位は…イオンです!

 理由は人気の高い株主優待。買い物から保有株に応じて、3~7%ものキャッシュバックが受け取れる優待カード(オーナーズカード)は、イオングループで買い物をする主婦を中心に絶大なる支持を得ています。

 配当利回りも東証1部上場銘柄の平均値である1%台後半は出していることからも、配当・優待権利取りの最終売買日を迎える毎年2月末と8月末にかけては、これらの権利を取ろうとする売買の動きが活発となります。

 また、足元で業績改善が進んでいることも株価の上昇を後押ししています。直近10月に発表された今上半期決算は営業減益となりましたが、第1四半期(3-5月期)の前年同期比30%営業減益に対し、第2四半期(6-8月期)は同16%もの増益に転じるなど、想定以上に健闘しているとの市場評価に繋がりました。

 子会社の不正会計処理と会計処理変更の影響を除いた実質ベースでは、上半期は同7%の増益。不動産・ディベロッパー部門のほか、ヘルス&ウエルネスや金融セグメントなどが下支えとなっている状況で、低迷していた国内小売部門の回復待ちのなか、同社グループ全体への業績改善期待も株価の上昇に寄与したもようです。

デビュー株銘柄ランキング

順位 コード 銘柄名 配当利回り 最低投資額
(12/19終値)
一年間の値上がり率
(1/4~12/19)
1 8267 イオン 1.6% 227,400 4.24
2 7201 日産自動車 - 67,170 ▲ 22.78
3 8591 オリックス 4.2% 182,800 14.21
4 4689 Zホールディングス 2.1% 42,900 57.14
5 8411 みずほフィナンシャルG 4.4% 17,020 ▲ 0.23
6 9831 ヤマダ電機 - 57,500 8.49
7 2914 日本たばこ産業 6.1% 252,550 ▲ 2.38
8 8848 レオパレス21 - 35,300 ▲ 16.35
9 8306 三菱UFJフィナンシャルG 4.2% 59,900 11.40
10 9434 ソフトバンク 5.9% 143,550 2.61
出所:2019年1~11月末「投資信託または株の未取引者」が、楽天証券で買った人数が多い銘柄
最低投資額の単位:円、一年間の値上がり率の単位:%

第4~第10位は高配当銘柄

 第4位のZホールディングス(yahoo!)(4689)は、ZOZO(3092)LINE(3938)といったネット大手との経営統合を次々と発表したことで、話題を集めました。

 また、7-9月期決算での想定以上の収益回復を評価する向きや値ごろ感にある株価水準も手を出しやすい要因となったようです。ちなみに、そのZホールディングスの親会社であり、昨年末に上場したばかりのソフトバンク(9434)は10位にランクイン。5%を超える配当利回りに加えて、KDDI(9433)NTTドコモ(9437)などといった同業他社と比較して安定した業績面が好感されています。

 第6位のヤマダ電機(9831)は保有株に応じて受け取れる商品券が注目されました。高配当銘柄の代表格である日本たばこ産業(JT)(2914)(配当利回り6%超)、みずほフィナンシャルG(8411)三菱UFJフィナンシャルG(ともに配当利回り4%超)も上位にランクインしました。

銘柄選びの注意点

 みなさんが知っている企業が多く、高配当、株主優待でも人気な銘柄がランキングに登場しました。

 また、一般NISA(ニーサ:少額投資非課税制度)枠(現行120万円上限)で買える範囲だったことも初心者に人気な理由だったと思います。

 ただ、営業赤字やあまり良くないニュースがあった企業などへの投資に関しては十分に注意が必要です。ランキングは一つの目安として、銘柄を選んでください。

 また、単純に“株でもうける”という考え方ではなく、配当や株主優待などもふくめて、それぞれの企業の良い部分・悪い部分を見極めたうえで上手く自分の生活とリンクさせることが大事になってくると思います。

 最後に、2019年は「老後2,000万円問題」が話題となりました。老後を見据えた資産運用や貯蓄に対する関心が高まっていることは事実ではありますが、10月末に発表された総務省統計局の2019年4-6月期の家計調査によると、二人以上の世帯・勤労者世帯の平均貯蓄額は1,351万円となっており、現実はまだまだ厳しい状況です。

 iDeCo(イデコ:個人型確定拠出年金)など税制優遇を受けることができる仕組みも普及しつつあるほか、新しいNISAについても2024年に刷新するといった報道もあります。これらの制度をうまく使っていければと思います。