日本株は配当利回りから見て割安と判断

 日本株は、配当利回りや、PER(株価収益率)などの株価指標で見て、割安と判断しています。長期投資で、資産形成に貢献する投資対象と考えています。

日本の長期金利(10年もの新発国債利回り)と東証一部予想配当利回りの推移:1993年5月~2019年12月(18日まで)

注:楽天証券経済研究所が作成

 1993年当時、長期金利が5%あった時、東証一部配当利回りは1%未満でした。この時、長期国債は割安で、日本株は割高でした。ところが、2019年12月18日時点で、長期金利はゼロ近くに低下しましたが、配当利回りは2.24%まで上昇しています。今は、長期国債が割高で、日本株が割安と判断しています。

6万円から始める高配当利回り株への投資

 日本株は、配当利回りから見て割安で、長期投資対象として魅力的と考えています。ただし、銘柄選択は大切です。人気株に飛び乗って高値づかみとなり、株価が急落すると大きな損失をこうむることもあります。

 これから日本株への投資を考える初心者は、日経平均に連動するインデックスファンドや、6万円以下で買える株への小口投資から始めたらいいと思います。一度に大きな金額を買うのではなく、毎月一定額を買い付けるなど、堅実に投資を増やしていく買い方が良いと思います。

 そこで、今日は、6万円以下で買える高配当利回り株をご紹介します。

スーパースクリーナーを使って銘柄選択

 楽天証券HPでは、さまざまな条件を指定して、その条件に合った銘柄をスクリーニング(抽出)する「スーパースクリーナー」というツールを提供しています。スーパースクリーナーの使い方は、以下をご参照ください。

「スーパースクリーナーを使った銘柄分析方法を動画で解説」

 今日は、スーパースクリーナーを使って選ぶ、6万円以下で投資できる高配当利回り株を、ご紹介します。以下の手順で絞り込みます。

◆6万円以下で買える663銘柄を抽出

 まず、東証一部・二部・東証マザーズ・ジャスダック・名証に上場する銘柄について、「投資金額6万円以下」の条件を指定すると、663銘柄が出てきます。この663銘柄が、12月18日時点で、最小投資単位100株を6万円以下で買える銘柄です。言い換えると、株価が600円以下の銘柄ということです。

◆6万円以下で買える、予想配当利回りが3%以上の35銘柄を抽出

 さらに、「配当利回り(予想)が3%以上」という条件を加えると、銘柄数は、一気に35まで減ります。これが、6万円以下で買える高配当利回り株の候補となります。

◆さらに時価総額350億円以上に絞り込み、証券業を除外し、21銘柄を抽出

 時価総額が小さい銘柄は配当が安定しない場合もあるので、時価総額350億円以上に絞り込むと、25銘柄が得られます。この25銘柄には、証券会社が4社(野村HD・大和証券グループ本社・東海東京フィナンシャルHD・マネックスグループ)入っていますが、私は証券会社の投資判断を述べることはできませんので、この4社を除外します。

 すると、以下の21銘柄が抽出されます。

6万円以下で買える予想配当利回り3%以上、時価総額350億円以上の21銘柄(証券業は除外):2019年12月18日時点・時価総額の大きい順に表示

出所:楽天証券スーパースクリーナー。「現在値」は12月18日終値。「投資金額」は12月18日終値で最小投資単位(100株)を買うのに必要な金額

 配当利回り(予想)は高ければ高いほど良いというわけではありません。なぜならば、株の配当利回りは、確定利回りではないからです。業績が悪化して、減配(1株当たり配当金を減らすこと)になり、株価が下がることもあります。高配当利回りを選別する時は、なるべく減配リスクの低い銘柄を選ぶべきです。

私が投資したいと考える6銘柄で組んだポートフォリオの利回りは4.1%

 スクリーニングで選んだ銘柄に、機械的に投資するのは得策とは言えません。配当利回りが高めの銘柄には、将来、減配になるリスクもあるからです。ここから、さらに絞り込む必要があります。

 私は、1987~2013年まで、日本株ファンドマネージャーをやっていました。私がもし今、ファンドマネージャーならば買いたいと思う銘柄は、このリストの中に6銘柄あります。

 この6銘柄を、最低投資額(100株)ずつ組み入れて作ったポートフォリオを以下に示しています。6銘柄すべて買うと、投資金額は約25万円で、ポートフォリオの予想配当利回りは4.1%となります。

筆者がファンドマネージャーならば買ってみたい6銘柄

コード 銘柄名 配当利回り 業種 最低投資額
2768 双日 4.7% 商社 35,800
4005 住友化学 4.4% 化学 50,500
8306 三菱UFJフィナンシャル・グループ 4.2% 銀行 59,920
8410 セブン銀行 3.1% 銀行 35,800
8411 みずほフィナンシャルグループ 4.4% 銀行 17,070
9412 スカパーJSATホールディングス 3.8% 情報通信 47,600
合計 6銘柄に100株ずつ投資 4.1%   246,690
【金額単位:円】
出所:楽天証券スーパースクリーナーより楽天証券経済研究所が作成

 銀行が3銘柄も入っていますが、銀行ばかりたくさん投資すべきではありません。この中で1つだけ選ぶならば、三菱UFJ FGが良いと判断しています。

投資したいと考える6銘柄のコメント

双日(2768)

 新興国を中心に世界で稼ぐビジネスモデルを確立していると評価しています。2019年3月期の純利益は、前期比24%増の704億円と、2期連続で最高益を更新しました。石炭価格上昇で資源事業の利益が伸びました。資源事業への依存が高いことはリスクですが、近年、自動車や航空機・リテール生活産業などの非資源事業の利益も伸ばしてきたことが評価できます。今期(2020年3月期)の純利益について、会社は2%増の720億円と3期連続の最高益更新を予想しています。

住友化学(4005)

 高付加価値のスペシャリティ・ケミカルズで稼ぐビジネスモデルを確立していると評価しています。医薬品・電子材料・農薬・機能材料などスペシャリティ・ケミカルズがコア営業利益に占める比率が75%まで上昇しています。ただし、足元、中国景気悪化などの影響を受けて、業績は下降局面となっています。

 前々期(2018年3月期)の営業利益が2,509億円と最高益でしたが、前期(2019年3月期)の営業利益は27%減の1,829億円でした。今期(2020年3月期)の営業利益について、会社は7%減の1,700億円を予想しています。ただし、来期(2021年3月期)以降、有機EL部材や電池材料の拡販などで、利益は回復に向かうと予想しています。米中貿易戦争が緩和し、中国景気が持ち直せば、住友化学の利益も回復が加速すると考えています。

三菱UFJ FG(8306)および、みずほFG(8411)

 三菱UFJはPBR(株価純資産倍率)0.45倍、みずほFGはPBR0.48倍まで売り込まれています。日本が金融危機にあった1998~2002年の大手銀行株よりも低いバリュエーションとなっていますが、私は売られ過ぎと判断しています。

 両社とも、国内商業銀行業務の収益低下が懸念されますが、海外展開・ユニバーサルバンク経営(信託、証券、リースなどへの多角化)で安定的に高収益を稼いでいく力があると判断しています。海外展開で先行している三菱UFJの方がみずほより投資魅力が高いと考えています。

セブン銀行(8410)

 収益の大半を、提携金融機関からのATM利用手数料で稼ぎます。2018年3月期までは、セブンイレブンの出店拡大に伴う設置ATMの増加によって、安定的に最高益を更新してきました。ところが、国内でのコンビニ出店が飽和に近づき、ATM利用手数料の成長余地は縮小しています。代わって海外事業や決済口座事業の拡大によって、収益拡大をはかっています。米国では、ゼブンイレブン全店舗へのATM設置を完了。ところが、前期(2019年3月期)は、米国とインドネシア子会社の収益が想定以下で固定資産の減損が発生したため、純利益は48%減の132億円と落ち込みました。

 今期(2020年3月期)の純利益は、会社では前期比102%増の267億円と再び最高益更新を見込んでいます。米国でのATM利用拡大によって米国事業の黒字化が視野に入るなど、明るい兆しが出ています。米国で、セブンイレブンはさらに店舗拡大が期待され、セブン銀行も米国事業が黒字化すれば、セブンイレブンとともに利益を拡大していく余地が高まります。

スカパーJSAT HD(9412)

 有料多チャンネル放送「スカパー」と、衛星通信事業を行うJSATが統合してできた会社。スカパーは、競合激化で加入者が減少し、収益は低迷が続いています。一方、北米上空からインド洋上空まで計17機の人工衛星をも所有する衛星事業が安定収益源となっています。前期(2019年3月期)の営業利益156億円のうち、131億円を宇宙事業で稼いでいます。

 スカパーはこれからも収益低迷が続くと見ています。ただし、衛星事業の収益に依存した高配当利回り株として投資していくのは、問題ないと考えています。

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