あと10日ほどで2019年も終わりを迎えます。年末といえば「節税対策」。自分が株式投資での節税ができるかどうか、急いで確かめてみましょう。

2019年の株式投資・成果

 読者の皆さんは2019年の株式投資の成果は、いかがだったでしょうか。

 筆者はといえば、2019年前半は買いと空売りの両方のポジションを持つロング・ショート戦略を行っていました。買いは多少の利益が出たものの空売りは逆に損失となり、トータルでみるとあまり利益を得ることができませんでした。

 その後、9月以降の株価上昇に乗ることはできましたが、筆者の主力である成長株の動きは鈍く、日経平均株価の上昇ほどは利益を上げることができませんでした。それでも、年末に向けて利益を出して終わることはできそうです。

税金計算上の利益は「実現損益」のみ

 上記に書いた利益とは、実現損益と含み損益を合算したものです。税金の計算上は、含み損益は関係なく、実現損益、つまり配当金と実際に売却した株の損益のみを計算することになります。

 まずは、ご自身の2019年の株式投資の実現損益、そして受け取った配当金がいくらかをチェックしてください。

 さらには、昨年以前から繰り越している株式投資の損失があれば、その金額も確認する必要があります。

 そして、保有している株の含み損益も調べましょう。その上で、状況に応じて節税が可能かどうかを検討していきます。

2016年の繰越損失は2019年の利益とぶつけて使いきるべし!

 株式投資で生じた損失の繰り越しができるのは最大3年間です。したがって、2016年に生じた損失を繰り越せるのは2019年までです。それ以降の損失は切り捨てとなり、利益との相殺はできなくなります。

 もし2016年からの繰越損失がまだ残っていて、現時点で実現している2019年中の利益だけでは損益通算がしきれない場合は、含み益のある保有株の売却(=益出し)により利益を計上させ、できるだけ2016年からの繰越損失と損益通算させるようにしましょう。

 これにより、売却した保有株については繰り越した損失の範囲内であれば税金(利益に対して20.315%)がかからなくなり、節税の効果が得られます。

 2017年、もしくは2018年からの繰越損失は2020年に繰り越しできるので慌てて益出しする必要もありませんが、可能であれば益出しをして損益通算をしておくのも一考です。

 益出しにより売却した株式を今後も保有をしたいのであれば買い戻せばよいでしょう。現時点での株価(当初買った時よりも高い株価)にて再取得することになります。

損出しすれば今年の利益を圧縮できる!

 過去の売却損の繰り越しがなく、2019年の実現損益プラスという方は、もし保有株に含み損を抱えているものがあれば、それを売却(=損出し)することで税金を減らすことができます。

 含み損を抱えている株を売却したのち、再び買い直すこともできますが、塩漬け株など大きな含み損が生じていた株であれば、その株への投資は見込み違いだった可能性が高いです。無理に買い直しをせず、他の有望な株に資金をシフトさせた方がよいと思います。

利益や損失を来年に先送りできる裏ワザとは?

 人によってはこんな要望もあるかもしれません。

「含み益がある株を売りたいけれど、今売ると実現益がさらに膨らんで税金が増えてしまう…」

 こんな場合は、株を売らずとも売ったことと同じ効果が期待できる方法があります。それは信用取引の「空売り」を用いる方法です。

 持ち株はそのまま保有を続け、持ち株と同じ株を同じ株数空売りするのです。これにより「買い」と「売り」が両建てとなり、結果として売ったのと同じ効果が得られます。

 それでいて、実際には持ち株は売っていないため、利益は含み益のまま実現しないことになります。そのため税金が課されることもありません。

 逆に、こんなリクエストもあるかもしれません。

「含み損のある株を売りたいけれど、これ以上損が膨らむと3年間損失の繰り越しができるといっても3年間で将来の利益と相殺できるか不安だ。一部は来年の損失としたい・・・」

 そんなときも、持ち株はそのままの状態で、同じ株を同じ数量だけ空売りすればよいのです。持ち株自体を売らなければ含み損は実現しませんから、来年以降売却すれば損失の実現を1年遅らせることができます。

 最優先で対応したいのが、2016年から繰り越している損失がまだ残っているケース。含み益のある持ち株があればそれをいったん売却し、利益を実現させて繰り越した損失と相殺すれば、節税につながります。

 特定口座の場合は、2019年の年内最終受渡日である12月26日までに売却をする必要があります。もう時間がありませんので、繰越損失や今年の利益の状況を把握して、必要な節税策を講じるようにしてください。