バリュー投資・グロース投資、どっちが魅力的?高配当株5選

 株式投資の代表的スタイルは、2つあります。1つはグロース(成長株)投資、もう1つはバリュー(割安株)投資です。読者の皆様は、どちらのスタイルに近い方ですか?

 私には、25年の日本株ファンドマネージャー経験があります。投資信託・年金などで、20代は1,000億円、40代には2,000億円以上の日本株ファンドを運用していました。

 私は、主に割安株への投資で、ベンチマーク(競争相手)であるTOPIX(東証株価指数)を大きく上回るパフォーマンスを上げてきました。割安株をコアとして長期保有しながら、成長株で短期売買を繰り返しつつ、サヤをかせぐことを目指していました。

 株式投資の初心者は、まず割安株投資から開始した方が良いと思っています。配当利回りの高い大型株が、最初の候補となります。

 小型成長株も面白いのですが、小型成長株には値動きの荒いものが多く、注意を要します。

高配当株、投資の参考銘柄

 日本を代表する大型株で、財務内容が良好で予想配当利回りが4%前後、あるいはそれ以上の銘柄が、最初の投資候補銘柄となります。たとえば、以下のような銘柄です。

<高配当利回り株、5選>

【金額単位:円】

コード 銘柄名 配当
利回り
1株当り
予想
配当金
12月17日
株価
最小
投資金額
2914 日本たばこ産業 6.2% 154 2,499.0 249,900
8058 三菱商事 4.5% 132 2,947.5 294,750
8306 三菱UFJ FG 4.2% 25 600.0 60,000
8591 オリックス 4.1% 76 1,847.5 184,750
9437 NTTドコモ 3.9% 120 3,060.0 306,000
注:配当利回りは、今期1株当たり年間配当金(会社予想)を12月17日の株価で割って算出。今期とは日本たばこ産業では2019年12月期、その他は2020年3月期のこと。最小投資金額は、2019年12月17日終値で、最小投資単位(100株)を買うのに必要な金額。

 上記銘柄についての詳しい説明は、以下のレポートをご参照ください。

2019年12月12日:配当利回り4%超も!大手総合商社の投資判断。原油底打ちの影響は?
2019年8月29日:配当利回り6.9%、株主優待でも人気のJT。投資価値を再評価
2019年7月31日:配当利回り4.7%!三菱UFJの投資価値を見直す。3大メガバンクの最新評価

株価が割安な銘柄を選ぶことで、投資リスクをある程度抑えられる

 割安株は、言葉をかえれば「不人気株」です。人気がないから株価があまり上がらず、結果として、配当利回りが高く、PER(株価収益率)が低く、株価指標でみて割安になります。それでも、積極的な買いは入りにくいのです。

 一方、成長株は「人気株」です。成長ストーリーにひかれて多くの投資家が熱狂的に買うので、株価指標で見ると割高な銘柄が多くなります。

 初心者はまず割安株からと私が考えるのは、将来のパフォーマンスに、一般的に以下の関係があるからです。

 ここで、一番避けたいのは、割高な人気成長株を買ったのに、成長ストーリーが崩壊し、株価が大きく下落するケースです。初心者が、このパターンにおちいると、損切りができずに、ずるずると損失を拡大させることになりやすいので、注意が必要です。

 私は、割高な成長株は短期勝負と割り切って売り買いしていました。みんなが熱狂する株を一緒に買いに行く時は、「株価が下がったらすばやく損切り」を念頭においていました。

 それに対して、割安株に投資する時は、じっくりと長期に持ち、価値が見直されるのを待つ戦略でした。堅実経営の割安株は、投資家の期待が低いので、業績がたいしたことなくても急落することは、あまりありません。人気の成長株とは違って、バタバタと短期で売り買いする必要はあまりないと言えます。

「成長株優位」と「割安株優位」は循環する

 近年は、成長株優位の相場が長期化しています。割安株を買っても、なかなか報われない展開が続いています。ただし、歴史的に見ると、日本株市場では、割安株優位の期間が長かったことがわかります。

 いずれにしろ、成長株優位と割安株優位は、交互に繰り返します。成長株優位の相場では、成長性の高い銘柄のパフォーマンスが良く、成長性の低い銘柄のパフォーマンスが低くなります。わかりやすい相場です。

<成長株優位・割安株優位は循環する(イメージ図)>

(出所:筆者作成)

 成長株相場が行き過ぎると、割安株相場が始まります。買われ過ぎた成長株が値下がりし、堅実経営の割安株が買われます。成長性の低い銘柄の方がパフォーマンスが良いので、一般的にわかりにくい相場と見られます。

 これから、日本株はどうなるでしょうか? 私は、長期的には、成長株優位が続くと思いますが、短期的には、割安株が盛り返す局面があると考えています。大型割安株に、配当利回りが4~6%に達するものが増えており、いくら成長性が低いといっても、売られ過ぎと考えられるからです。

割安な成長株はなかなか存在しない

 もし、成長性が高く、株価が割安な銘柄があれば、それは、成長株投資家も、割安株投資家も、どちらも投資したいと思うでしょう。ところが、割安な成長株はなかなか存在しません。成長性の高い株は、往々にして人気が高く、株価の割安度をはかる代表的な指標であるPERが30~40倍など、高い水準にあることが多くなります。

 一方、PERで10倍前後など割安な銘柄には、成長性が低い、業績になんらかの不安があるなど問題を抱えている銘柄が多くなっています。

 そこで、良い投資銘柄を見つける方法は、2つあります。

(1)成長株投資を重視するファンドマネージャー

 まず、成長性の高い銘柄を探し、その中から株価がなるべく割安なものを選別します。

(2)割安株投資を重視するファンドマネ-ジャー

 まず、株価が割安な銘柄を探し、その中から、なるべく成長性の高いものを選びます。

 割安な成長株がなかなか見つけられないことから、成長株投資マネージャーのポートフォリオには、PERが高い、配当利回りが低い銘柄が多くなります。一方、割安株投資マネージャーのポートフォリオには、あまり成長性の高くない割安な銘柄が多くなります。

小型成長株は値動きが荒い 

 株式投資の醍醐味は、なんといっても、成長株だと思います。割安株をコアにしつつ、小型成長株投資にもトライしてみていいと思います。

 ただし、小型成長株は当たれば大きく上昇しますが、失敗すると大きく下がることに注意が必要です。以下は、典型的な小型成長株の値動き(イメージ図)です。

<小型成長株の株価変動(イメージ図)>

出所:筆者作成

 上のグラフでは、成長株の株価変動イメージを、3つの時期に分けて描きました。

(1)黎明期:成長期待があるがまだ利益がほとんど出ない時期
(2)急成長期:利益が大きく成長する時期
(3)成熟期:最高益更新が続くものの、増益率が大幅に鈍化する時期

 このグラフは、成長株の成功事例をイメージして描きました。黎明期から成熟期まで長く持っていれば、高いリターンが得られます。ただし、それでも、投資タイミングが悪いと、短期的に大きな損失をこうむることがあります。それが、グラフで赤い矢印をつけたところです。