魔性の通貨、トルコリラ
その高金利ゆえに、多くのキャリートレーダーを惹きつけるトルコリラ。金利で誘惑しておきながら、突如として暴落して恐怖のどん底に突き落とすことも平気でしてしまう、魔性の通貨です。
トルコの政策金利は12.00%。米国は1.50~1.75%、NZは1.00%、豪は0.75%、欧州は0.00%、そして日本は▲0.10%。南アは6.50%、メキシコは7.50%。新興国仲間と比べても、金利の高さは群を抜いて高いのがはっきりしています。(金利はいずれも2019年12月現在)
世界的な低金利が続くなかで、トルコリラを取引しないのはもったいない。しかし、だからといって、「トルコリラの外貨預金を寝かせておいたら、いつの間にかお金が増えている」みたいな宣伝記事を安易に信じてはダメです。金利は高いけれど、それ以上にトルコリラが安くなったら損が発生します。トルコリラは買うタイミングが大事なのです。
「トルコリラ急落」はなぜ起きたのか
では、どこで買うべきか? その前に「トルコリラ急落」はなぜ起きたのかを見てみましょう。それを知っているか、いないかでは大きな違いがあります。
2018年8月。それまで23円台後半で取引されていたトルコリラ/円は15円台半ばまで大暴落。いわゆる「トルコショック」と呼ばれる事件が発生しました。背景は、米国人牧師を拘束するトルコに対して、トランプ大統領が経済制裁を発動したこと。
2019年には、米軍がシリアから撤退したことに乗じてトルコ軍がクルド人攻撃を目的に同地域に軍事侵攻。トルコにとっては、クルド人はテロ組織という位置づけですが、欧米にとってはイスラム国と最前線で戦った味方。トルコの行動は各国から批判を浴び、トランプ大統領は、またもトルコに対して経済制裁を発動しました。この時トルコリラ/円は18円台後半から前半まで下落。
つまり、トルコリラの急落は、対米関係と密接にからんでいるのです。米国の経済制裁がトルコ経済をさらに悪化させるという思惑で投資マネーが流出、トルコリラ急落となってあらわれているのです。
米国とトルコの関係は修復したとはいえず、2020年も、いずれかの時点で暴発するリスクがあります。トルコ軍がクルド人を再攻撃する可能性は高いといわれています。さらにトルコは、NATO(北大西洋条約機構)のメンバーでありながら、NATOの「仮想敵国」であるロシアからミサイル防衛システムを購入するなど、欧米同盟国の神経を逆なでするような行動をとっています。
もうひとつのリスク「トルコ中央銀行」
トルコの物価はこのところ落ち着いています。今年前半には20%近くもあった消費者物価指数が11月にはほぼ半分の10%台まで下落。トルコ中央銀行にとっては利下げする余地が生まれたわけで、実際この1年でトルコの政策金利は24%から12%まで半分になりました。
適度な利下げは、トルコ経済にとって歓迎すべきことです。では問題は何かというと「利下げやり過ぎ」。政策金利はすでに適正水準まで下がっているのですが、エルドアン大統領は満足していないようで「もっともっと下げろ」と圧力をかけています。トルコは来年初めに債券のロールオーバーが集中していて、投資リスクに見合わない低金利や不透明な金融政策や借り換えを困難にさせることが予想されます。2020年は、行き過ぎた利下げがトルコ急落の引き金になるでしょう。
2020年トルコリラ、買いのポイント
トルコリラ/円のキャリートレードをするなら、1分足や5分足を見てもイメージが湧きませんので、日足や週足などでトレンドをつかむと良いでしょう。週足チャートを眺めてみると、右肩下がりのトレンドが明らかです。つまりトルコリラ安が続いている。「トルコリラの外貨預金を寝かせておくだけで、いつの間にかお金が増えている」ことはないことがわかります。
トルコリラ/円の動きは、「横ばい」、突然「急落」、その後「徐々に回復」した後、しばらく「横ばい」というパターンです。気をつけるのは急落です。2019年のトルコリラ/円の1日値幅は平均すると0.29円しかありませんが、1月のフラッシュクラッシュの時には、その10倍の2.26円も一気に下がっています。(2019年トルコリラ/円データ参照)しかしこれも、今見てきたように、対米外交関係とトルコの金融政策に注意していれば、ある程度備えることも可能です。
トルコリラはいわゆるコツコツ★ドカーンをできるだけ避けることがポイントです。では、トルコリラはどのタイミングで買えばいいのかということですが、それは、高値近辺で横ばい状態のときではなく、(もちろんキャンペーンのときでもなく)大きく下がったときまで待つことがポイントです。チャートやトルコリラ/円の位置情報などを参考に、2020年の買いポイントを探して準備しましょう。もちろん、下落が次の下落を呼ぶリスクはありますので、その点は注意が必要です。
Swim at your own risk!(投資は自己責任、自分の責任で泳ぎましょう)。
トルコリラ/円:2020年のレンジ予想:14.05円から25.90円
32.36円 : 2017年 高値
32.28円 : 2018年 高値
25.90円 : 第3レジスタンス
23.53円 : 第2レジスタンス
21.15円 : 2019年 高値
18.79円 : ピボット
18.78円 : 2019年 中心値
17.76円 : 2019年1月 安値(フラッシュクラッシュ)
16.42円 : 第1サポート
16.41円 : 2019年 安値
15.56円 : 2018年 安値(トルコショック)
14.05円 : 第2サポート
11.68円 : 第3サポート
2020年 トルコリラ/円データ
本コンテンツは情報の提供を目的としており、投資その他の行動を勧誘する目的で、作成したものではありません。銘柄の選択、売買価格等の投資の最終決定は、お客様ご自身でご判断いただきますようお願いいたします。本コンテンツの情報は、弊社が信頼できると判断した情報源から入手したものですが、その情報源の確実性を保証したものではありません。本コンテンツの記載内容に関するご質問・ご照会等には一切お答え致しかねますので予めご了承お願い致します。また、本コンテンツの記載内容は、予告なしに変更することがあります。