執筆:窪田真之

今日のポイント

・日経平均は、北朝鮮暴走、米景気減速、円高の3つの不安が緩和したために、急反発。

・安倍首相が来月にも衆議院解散総選挙を実施する方針と報道あり。総選挙で内閣支持率が上がると期待されるならば、外国人投資家は好感する。支持率が上がらないと、失望する。

北朝鮮暴走、米景気減速、円高への不安がやわらぎ、日経平均は急反発

 先週の日経平均は1週間で634円上昇し、1万9,909円となりました。先週の反発により、日経平均は5月以降続いていた2万円を中心とした狭いボックス圏(1万9,800-2万200円:グラフ内の上下、赤い線の範囲)に戻りました。

日経平均週足:2016年7月1日―2017年9月13日

注:楽天証券マーケットスピードより作成

 これら3つの「不安緩和」、北朝鮮の脅威、ハリケーン被害による米景気減速、および円高への不安が緩和したことが、日経平均急反発の要因となりました。いずれも、不安がなくなったわけではありませんが、マーケットではやや緩和したととらえられています。

 9月15日(金)は、早朝に北朝鮮が北海道上空を越えるミサイルを発射しましたが、この日の日経平均は前日比で102円上昇しました。国連安全保障理事会で、北朝鮮への制裁決議が決まり、暴走に一定の歯止めがかかるとの期待も少しだけ出てきたと考えられます。

 これまで北朝鮮をかばい続けてきた中国も、制裁にある程度協力する姿勢を見せており、北朝鮮は孤立を深めています。北朝鮮サイドから「ミサイルは中国全土を射程に入れている」と挑発的メッセージが出たこと、北朝鮮の核実験が中国にも環境被害をもたらすとの不安が出ていることなどを受け、中国も制裁に協力せざるを得なくなっているのでしょう。

 ハリケーンで重大な被害を受けた米経済について、一時不安が広がっていましたが、復興需要の期待も出てきており、景気にとってマイナスだけではないと見られるようになりました。

 日経平均に非常に大きな影響を及ぼすのが、為替です。9月8日(金)に一時1ドル107.30円まで円高が進んだことが、日本株の売り材料となっていましたが、9月18日(月)には、一時1ドル111.57円まで円安が進みました。米利上げのペースは遅くなるものの、引き締めは続くとの見方が出つつあることが、円安(ドル高)に戻った背景です。9月19・20日のFOMC(米連邦公開市場委員会)で、どのような政策方針が打ち出されるか、注目されます。

衆議院解散総選挙が、新たな波乱材料に

 安倍首相が、9月28日に始まる臨時国会の冒頭で衆議院を解散し、10月22日か29日投開票で総選挙を行う方針を固めたと、報道が出ました。日本株にとって重要な材料がもう1つ、急きょ加わることになるかもしれません。解散総選挙を決めるか否か、安倍首相は9月18-22日に行う米国訪問後に、最終判断を示す見込みです。

解散総選挙が行われることになると、為替、北朝鮮と並ぶ、新たな重要材料となります。本連載で繰り返しお伝えしている通り、日経平均を動かしているのは外国人です。外国人は、日本の政治ニュースに敏感に反応します。近年は、衆議院「解散総選挙」というイベントに反応して、積極的に売り買いすることが多くなりました。

「総選挙後に内閣支持率が上がり、強い政府ができる」イメージがあれば、外国人は日本株を積極的に買ってきます。解散総選挙を行っても内閣支持率が上がらないと、外国人は失望する可能性があります。

2005年、2009年、2012年、2014年の解散総選挙での日経平均の動き

それでは、過去4回の衆院解散総選挙と、日経平均の動きを振り返ってみましょう。

過去4回の解散総選挙と、前後の日経平均の動き:衆院解散日から総選挙の約3カ月後までを比較

出所:総選挙実施直後の日経平均を100として指数化、楽天証券経済研究所が作成

過去4回の解散総選挙日程と、前後の日経平均騰落率 

注:楽天証券経済研究所が作成

 

 過去4回の解散総選挙時の日経平均の動きを解説すると、次の通りです。

●2005年郵政解散

 構造改革に積極的な強い政権誕生と見て、外国人が積極的に買い。

●2009年民主党政権誕生

 強い政権復活を外国人は一時好感したが、民主党が経済成長よりも社会福祉充実を重視する政策を次々と打ち出したことから、外国人の評価は高まらず。

●2012年アベノミクス開始

 経済成長を重視する強い政権誕生と見て、外国人が積極的に買い。

●2014年消費増税延期

 争点がはっきりしない選挙で、当初外国人の評価は高くなかったが、内閣支持率の上昇につながったので、後から評価。

安倍首相が解散総選挙を本当に実施するかは、まだわかりませんが、実施しても、すぐに外国人が評価するとは考えられません。解散には、実施するだけの大義名分が必要です。これが、まだ発表されていません。

 憲法改正や、2019年10月予定の消費税再増税(8%→10%)のさらなる先送りなどが、解散の大義名分になると思われますが、外国人は、解散総選挙をするほどの重大なテーマとは見ていません。すでに衆議院で3分の2超の議席を有している与党が、これ以上の議席を増やすとは、考えられません。議席が減るリスクを冒してまで、やるべきとなる大義名分は今、見つかりません。

 結局、外国人は、内閣支持率の変化に注目するでしょう。選挙を経て、内閣支持率が上がれば、外国人の評価が高まるはずです。ただし、支持率を上げられない、あるいは、下げてしまう場合は、日経平均が売られる要因となるでしょう。

 解散総選挙の今後の動向について、本連載で引き続きレポートしていきます。