「クイズで学ぶテクニカル指標(6):売買シグナルの使い方」をお届けします。

(1)まず、クイズです。

<クイズ>以下のA社チャートは、売り・買い、どっち?

(注:筆者作成)

 私は、2013年まで25年間、日本株ファンドマネージャーをやってきました。その大部分が、年金や投資信託での長期投資でした。2-3年の運用期間を想定し、投資価値を高めていく銘柄の選別に注力していました。

 ただし、私のファンドマネージャー経験の中で、銘柄選別なんか一生懸命やっても意味がない時期がありました。1990年代前半です。バブル崩壊後の日本では、何を買っても、下がるのが当たり前でした。その頃の私は、銘柄選別より、日経平均先物やオプションの売買に熱中していました。先物やオプションの短期売買しか、安定的に利益を積み上げていく方法はありませんでした。

 先物の短期売買で重要なのは、テクニカル分析です。チャートや出来高の変化を見ながら、投機筋の買いポジションや売りポジションがどう変動していくか、1日中考えていました。私は、オプション取引は得したり損したりであまりうまくいきませんでしたが、先物の短期売買では、安定して利益を稼ぎ続けることができました。

 今日、お伝えしたいことは、売買シグナルの意味と使い方です。

 さて、冒頭のクイズの答えですが、「買い」が正解です。A社チャートは、「二番底」(英語では、ダブル・ボトムといいます)という買いパターンになっています。直近の高値を抜けて、ここから上昇に弾みがつきそうです。

 売買高が急増していることも重要です。何か好材料が出て、積極的に買ってきている投資家がいると考えられます。株価が下がってきている時の売買高より、今の売買高の方が大きいので、ここから戻り売りをこなして上値を追っていく可能性が高いと考えます。

(2)100%当たる売買シグナルはない

 こういうクイズを出すと、「チャートだけでは今後の株価はわかりません」とお答えになる方もいます。その通りです。チャートに基づく投資判断は、100%当たるものではありません。

 ただし、チャートのパターンを見ることで、統計的に今後上がる可能性が高いか低いか判断することはできます。統計的に、7割の確率で上昇するチャート・パターンがあれば、それは立派な買いシグナルです。

(3)買いシグナルで買ったら、下がってしまった!

 次のクイズです。

<クイズ>冒頭のクイズで買いシグナルが出ていたA社株を買ったら、いきなり下がってしまいました。さて、ここでの投資判断は、売り・買い増し、どっち?

(注:筆者作成)

 売買シグナルは、天気予報のようなものです。明日、晴れるといっても、雨が降ることもあります。買いシグナルが出ていると言っても、下がってしまうこともあるわけです。

「当たる可能性が70%」であれば、立派な買いシグナルと言えます。それでも、30%の確率で、買いシグナルは外れるわけです。

 以下に、70%の確率で当たるシグナルで2回続けて売買した時の結果を示します。

 7割の確率で当たるシグナルで2回売買した場合

  1回目 2回目 確 率
ケース1 49%
ケース2 × 21%
ケース3 × 21%
ケース4 × × 9%

(注:◎は当たり、×は外れを示す、筆者作成)

 2回連続でシグナルが当たる可能性は49%(約半分)しかありません。つまり、7割当たるシグナルで売買しても、2回売買すれば、2回に1回は外れると考えるべきです。

 さて、クイズの答えですが、ここでの買い増しは厳禁です。「売り」が正解です。一旦買いシグナルが出て、出来高が急増して上昇した直後に、悪材料が出て、ドスンと下がったわけですから、ここからは「三十六計、逃げるにしかず」。ぐずぐずしていると、悪材料を見て、高値で買いついた人がどんどん投げ売りしてきます。

 肝に銘じていただきたいことは、以下の法則です。

「いかなる買いシグナルも、直後に大陰線が出れば、強い売りシグナルに変わる」

「いかなる売りシグナルも、直後に大陽線が出れば、強い買いシグナルに変わる」

 チャートを使った売買で一番重要なことは、以下です。「買いシグナルで買っても、外れたら、すぐに損切りすること」

 100%当たる訳でなくても、チャートのシグナルを見て売買するのは意味があることです。7割の確率で上昇するパターンが出たら買いを実行、上昇すれば利益が得られます。もし3割の確率で外れて下がったら、その時はさっさと損切りするだけです。

 7割当たるパターンのチャートで何回も何回も勝負を繰り返せば、長期的には利益を積み上げることができるはずです。デイ・トレーディングで利益を積み上げていく人は、それがわかっていて、実行できる人です。

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