株取引の方法の1つである「信用取引」。ネット証券の普及により個人投資家にとっても身近になってきましたが、まだまだ抵抗感がある方も多いようです。信用取引の魅力と注意点についてお話したいと思います。
「現物取引」と「信用取引」
通常、株式に投資する際には、株を買うためのお金を準備し、そのお金で株を買う、という流れになります。1株1,000円の株を1,000株買うためには、証券会社の口座に100万円のお金を入れておく必要があります。この取引のことを「現物取引」といいます。
一方、「信用取引」とは、証券会社から借金をして株を買うことです。例えば100万円分の株を買いたいのであれば、100万円をまるまる持っていなくても、証券会社に保証金30万円を差し入れれば買うことができます(必要な保証金の額は証券会社により異なります)。
なお、信用取引を使えば、株を買うだけでなく、持っていない株を売る(これを「空売り」といいます)こともできます。
信用取引を用いる2つの理由とは
筆者も信用取引を多用していますが、その理由は[1]純粋に利益を求めるため、[2]保有株の株価下落に備えたヘッジをするための二つです。
[1]純粋に利益を求めるとは
例えば、30万円の資金を使って現物取引により30万円分の株を買い、50%値上がりすれば15万円の利益になります。30万円の資金に対する利益率は50%です。
これを、信用取引を用いて30万円の資金で100万円分の株を買い、これが50%値上がりすれば利益は50万円となります。元本30万円に対し50万円の利益ですから、利益率は166%となります。
信用取引を用いると、およそ3倍のレバレッジをかけることができます。そのため、元本が小さくても大きな利益を狙うことが可能となるのです。
[2]保有株のリスクヘッジとは
例えば、保有している株の株価が下降トレンドになり、さらなる下落が懸念されるような場合に用います。
保有株自体を売却してもよいのですが、含み益がたくさんあるので売却すると多額の課税がされてしまう、せっかく安く買ったので、できればそのまま持っておきたいというニーズもあります。
そんなとき、持ち株はそのまま保有をする一方で、同じ株数の空売りを実行すれば、いわゆる「両建て」となり、その後株価が上昇しても下落しても損益は変動しません。つまり利益の実現をさせずに、売却したのと同じ効果を得られることになります。
信用取引のメリットとリスク
信用取引のメリットといえば、上でお話しした通り、レバレッジを利かせることで、少額の資金で大きな利益を目指すことができるという点です。
相場環境がよければ、1年で資産3倍、5倍、10倍にすることも夢ではありません。
もう1つのメリットは、空売りができることです。株価は常に上昇するわけではありません。下落することも当然ありますし、マーケットの環境が悪ければ、何年もの間株価が下げ続けることもあります。
こんなとき、株を買って利益を得ようとしても物理的に極めて困難ですが、株を売って安くなったところで買い戻すことで利益を得るのは十分可能です。
この、持っていない株を売って安く買い戻して差額の利益を得ようとすることを「空売り」と呼び、信用取引を用いないと行うことができません。
一方で、信用取引にはリスクがあります。最大のリスクは、レバレッジがかかることにより利益だけではなく損失も増幅してしまうことです。
上の例で、30万円の資金で30万円の株を買い、それが30%下落したとします。すると30万円×30%=9万円の損失となり、これは投資資金30万円のうちの30%にあたります。
これが信用取引を使って30万円の資金で100万円分の株を買い、これが30%下落したらどうなるでしょうか?
損失は100万円×30%=30万円です。資金は30万円しか持っていませんから、買った株の株価が30%下落すると、投資資金の全額を失ってしまうことになります。
信用取引でこれだけは注意すべき点とは?
このように、信用取引でレバレッジをかけた取引をすると、うまく行った場合は大きな利益を得られますが、想定と逆方向に株価が動いた場合、大きな損失を被ることになります。場合によっては投資資金の全額、最悪の場合はそれでもカバーできず、証券会社に対して借金が残ることもあります。
こうならないようにするためには、「レバレッジをかけすぎないこと」「損切りをしっかりと実行すること」の2点が重要です。
レバレッジをかけすぎなければ、もし株価が下がったとしてもダメージは小さくなります。また、上のケースでは30%の株価下落で投資資金がゼロになってしまいましたが、10%の株価下落で損切りをしていたら、投資資金の目減りは33%にとどまります。
最悪の事態を避けるためには適切なタイミングでの損切りが絶対に必要になります。「私は損切りに自信がない…」という方は、信用取引は控えた方がよいでしょう。
信用取引については、別の回で詳細をお伝えします。
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