1.最近の米国株市場まとめ

 足元の米国株式相場は堅調に推移していましたが、トランプ大統領が「香港人権・民主主義法」に署名したことが懸念材料となっています。ただ、これに対する中国の目立った対抗措置は現時点でも見受けられず(日本時間2019年11月30日時点)、この署名が米中貿易協議の進展に大きな影響を与える可能性は低いと考えられます。

 現在、投資家が求めているものは米中貿易協議のフェーズ1(第1段階)の内容確定と合意の文書化、それに伴う追加関税の発動回避です。米国は中国製品に対する追加関税を2019年12月15日に予定していますが、発動されなければ、追加関税に伴う経済への悪影響を回避できます。

 12月15日の追加関税の対象には、携帯電話、玩具、ノート型パソコンなどが含まれているため、発動されれば個人消費への影響が懸念されており、回避が望まれます。

 中国側もこれを避けるべく、影響の大きい対抗措置を発動しないのではないかと思います。フェーズ1ではさらに、米中の既存の関税についても撤廃されるチャンスが残されています。

年初来のS&P500の推移
※2019年11月29日まで(週足)。最新の情報はこちら
単位:ポイント

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2.今後の米国株式市場の見通し

 米中関税の問題が解決の方向に進めば、米国の株式市場は年末に向けて堅調に推移するでしょう。また、2020年についても株式市場はプラス圏で推移すると考えられます。貿易摩擦による経済影響が一巡に向かえば、企業業績にプラスの効果を及ぼすとみられます。

 ただし、2020年の株式市場で特に注意したい点が二つあります。一つ目は、米中貿易協議の進展次第で株価の上値が再び重くなる可能性があること、二つ目は、2020年11月に予定されている米大統領選挙が警戒され始める可能性があることです。

 米中貿易協議の進展については、フェーズ1が終了した後、フェーズ2に進みます。ただ、その協議内容はフェーズ1よりも複雑なものになり、交渉は難航が予想されます。特に米政権は年後半に大統領選挙を控える中、対中国強硬派が納得できる成果物をアピールしつつ株価も維持するという難しいコントロールをせまられそうです。

 米大統領選については、選挙まで誰が有力候補かという話題が飛び交います。社会福祉の改善に取り組む意向の候補者が有利と伝われば、企業の利益を圧迫する可能性があるため株式市場にとっては懸念材料になります。

3.高配当利回り株・ETFに注目

 米国株式市場の先行きは明るいですが、米中貿易協議と大統領選といった懸念材料を考慮すると、2020年に向けた株式相場は上値を試しながらも警戒感が根強く残るとみられます。上値の重い期間や調整局面も想定されます。こうした条件で注目したい銘柄は、配当利回りが相対的に高い銘柄か、株価に割安感が残っている企業です。

今回は配当利回りの高い銘柄をまとめました。関連銘柄として、コカ・コーラ(KO)シティグループ(C)iシェアーズ コア米国高配当株ETF(HDV)AT&T(T)フィリップ・モリス・インターナショナル(PM)を挙げています。

 AT&T、フィリップ・モリス・インターナショナルはそれぞれ投資家が気にするリスクを抱えている分、配当利回りは高い水準にあります。一方、コカ・コーラ、シティグループについてはビジネスモデルを揺るがす大きなリスクは感じられません。iシェアーズ コア米国高配当株ETFは、配当利回りの高い銘柄等に分散投資された上場投資信託です。

高配当利回り関連銘柄

※株価は2019年11月27日終値。
※EPS(1株当たり利益)はGAAP(米国会計基準)ベースの一株あたり利益を指す。単位はドル。
※予想はブルームバーグコンセンサス(データ取得日:日本時間2019年11月28日) 
※配当利回りは、今後4四半期の予想配当金額を株価で割って算出。ただしETFは、過去4四半期の実績配当金額から算出。

シティグループ年初来チャート
※2019年11月29日まで
単位:ドル

出所:楽天証券ウェブサイト

コカ・コーラ年初来チャート
※2019年11月29日まで
単位:ドル

出所:楽天証券ウェブサイト

iシェアーズ コア米国高配当株ETF年初来チャート
※2019年11月29日まで
単位:ドル

出所:楽天証券ウェブサイト

AT&T年初来チャート
※2019年11月29日まで
単位:ドル

出所:楽天証券ウェブサイト

フィリップ・モリス・インターナショナル年初来チャート
※2019年11月29日まで
単位:ドル

出所:楽天証券ウェブサイト