「香港人権・民主主義法案」めぐり米中対立が再びエスカレートする不安生じる
先週の日経平均株価は1週間で191円下落し、2万3,112円となりました。NYダウは、1週間で129ドル下がり、2万7,875ドルとなりました。
米国議会(上下院)が20日までに香港での人権尊重や民主主義を支援する「香港人権・民主主義法案」(以下「人権法案」と表記)を可決、トランプ米大統領が署名すれば発効する状態となったことが不安視されました。中国は、同法案が発効すれば、内政干渉として、米国に報復すると宣言しています。そうなると、年内の米中通商交渉「部分合意」は絶望的となり、12月15日に予定されている米国による「対中制裁関税第4弾」も撤回されず、発動されることになります。米中の報復合戦がさらにエスカレートし、世界景気に一段と悪影響を及ぼすことになります。
11月は、「米中部分合意が近い」「米中対立が緩和すれば、抑えられていたハイテク投資が復活し、来年にも世界景気は回復に向かう」との期待で世界株高が進んできました。それが先週は一転して、米中対立がエスカレートする不安が出たため、日経平均・NYダウともに反落しました。
日経平均株価週足:2018年初~2019年11月22日
NYダウ週足:2018年初~2019年11月22日
トランプ大統領は「人権法案」署名を躊躇
人権法案をめぐって米中対立が先鋭化する不安が出た割には、先週の日経平均・NYダウともに大きく下げることはなく、しっかりしていたとの見方もできます。トランプ大統領が、人権法案に署名することを明言していないからです。
トランプ大統領は「我々は香港を支持しなければならないが、私は習近平国家主席も支持している」と発言し、「米中合意がきわめて近い」との見方を維持しました。米上下院で与野党問わず圧倒的多数の賛成で可決された人権法案にトランプ大統領が署名しなければ、大統領への批判が高まり、議会との溝が深まる可能性があります。それでも、トランプ大統領は、米中対立を先鋭化させないことを優先する可能性もあります。
トランプ大統領が米中対立を緩和する道を残していることに、株式市場は期待している形です。
韓国がGSOMIA破棄を撤回、WTO提訴中断も発表
韓国大統領府は22日、11月23日に失効期限が迫っていたGSOMIA(ジーソミア)(日本との軍事情報包括保護協定)を破棄せず、継続すると発表しました。これまで破棄を宣言していましたが、土壇場で回避しました。また、日本がとった半導体材料など3品目の韓国向け輸出規制強化に対するWTO(世界貿易機構)への提訴手続きを停止するとも、発表しました。
これを受けて、日韓で貿易交渉を再開すること、12月に日韓首脳会談を開催する方向で、調整が始まりました。日韓関係がさらに悪化するのを、なんとか食い止めた形です。 今回、韓国が日本に対する強硬路線を変更した裏には、米国の強い圧力があったと言われています。
日韓関係の悪化は、韓国向け輸出の大きい日本企業や、韓国からの訪日観光客からメリットを受けていた日本企業の業績に、悪影響を及ぼし始めていました。さらなる悪化が避けられたことはポジティブです。ただし、これで直ちに、日韓が改善に向かうとは考えられません。日韓には、解決のメドがたたない問題が山積しているからです。今後の交渉の行方が注目されます。
参考:訪日外国人観光客数、上位8カ国:2019年10月
「人権法案」の行方に注目
今週の日経平均は、人権法案にトランプ大統領が署名するかしないかに関して、出てくるニュースに神経質に反応する展開と思われます。大統領が署名し、中国が報復する展開が予想されると、下げが大きくなる可能性があります。何らかの方法で、米中部分合意を年内に実現する方向で話しが進めば、日経平均はさらに高値を取っていくことになると、考えます。
なお、毎週述べているように、いずれの場合でも、日本株は割安で長期的に「買い場」との判断は変わりません。
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