政治的ストレス増加は資産市場にマイナス影響か?

 2019年もマーケットはトランプ米大統領に振り回されたが、これだけ政治的な不安やストレスが増加する中でも世界の株式相場はびくともしていない。マーク・ファーバーのレポート『The Gloom, Boom & Doom Report(マーク・ファーバー博士の月刊マーケットレポート)』によると、「デモ参加者・暴動者が経済にあからさまな悪影響を与えている香港でさえ、2019年の株式相場は、これまでのところ7%高(2019年11月20日現在)だ。ただし、注目すべきことがあり、ほとんどの不動産会社が(膨らませた)純資産価値の50%安で売られている」という。不動産が半値になっているのに株が下がっていないとは、驚くべき現象だ。

香港ハンセン指数(日足)

出所:石原順

 NYダウ(日足)

出所:マルチチャート

日経平均(日足)

 出所:マルチチャート

政治的ストレス指数と幸福度指数

出所:Peter Turchin・マーク・ファーバー博士の月刊マーケットレポート

 現状は、「投資家が量的緩和の再開を織り込み始めたのかもしれない。それはFRB(米連邦準備制度理事会)のレポ市場介入で事実上すでに進行中である。あるいは、何かしらMMT(現代貨幣理論)的介入を織り込み始めたのかもしない。IMFC(国際通貨金融委員会)は世界中の経済活動を後押しするため、さらに多くの財政措置をとる姿勢だ。したがって、財政赤字の増加が金融緩和策(QE4[量的緩和第4弾]が静かに始まった)に加わることになる」(マーク・ファーバー)という状況であり、国家に管理された好景気が今後も演出される予定となっている。

FEDの総資産とS&P500の推移

出所:セントルイス地区連銀

世界の債務残高(兆ドル)と対GDP比

(金融市場は、米連邦準備制度、欧州中央銀行、中国人民銀行等、主要中央銀行によるさらなる金融緩和政策と世界的なテールリスクの削減に対してポジティブな反応を示している。しかし、世界規模での公的および私的債務の蓄積により、何らかのショックが新たな不況を引き起こし、恐らくその後に金融危機が起こるのは時間の問題であろう)
出所:マーク・ファーバー博士の月刊マーケットレポート

米国での政治的ストレスの高まりから、逆風を受ける公算が最も大きな資産は米ドルである

 隠れQEや今後予想される財政措置の増加で株式市場はバブル延命となっているが、「米国での政治的ストレスの高まりから逆風を受ける公算が最も大きな資産は、米ドルである(図11)」というのが、マーク・ファーバーの見方だ。

ドル指数と「インサイダー」である「コマーシャルズ」の建玉(2016~2019)

 ドル指数売り越し買い越し ドル指数先物 当業者正味建玉(対比)当業者が米ドルを大きく売り越している

出所:Tom McClellan ・出所:マーク・ファーバー博士の月刊マーケットレポート

 マーク・ファーバーは、「実際、英国のEU離脱交渉(ブレグジット)が激化するにつれて、米ドルは突如として、いくつかの通貨に対して安くなった。年初来でドルに対して高くなっている。しかも、今や当業者が米ドルを大きく売り越している。通常、この動きはドルの天井と関連がある(図11の破線)」と述べ、有料レポートなのでこれ以上は書けないが、ドルは天井圏に近いとみているようだ。

英ポンドと「インサイダー」である「コマーシャルズ」の建玉

出所:Tom McClellan ・出所:マーク・ファーバー博士の月刊マーケットレポート

ポンド/ドル(日足)順張りの標準偏差ボラティリティモデル

出所:石原順

当面の日米株価の見通し

 2019年11月20日(水)のラジオNIKKEI『楽天証券PRESENTS先取りマーケットレビュー』は、ゲストに楽天証券経済研究所チーフアナリスト今中能夫氏と楽天証券経済研究所シニアマーケットアナリスト土信田雅之氏をお招きして、日米株価の見通しについて議論してみた。

ドル建て日経平均先物(日足)

出所:パンローリングカスタムチャート

 番組ホームページから今中能夫氏と筆者の資料がダウンロード出来るので、投資の参考にしていただきたい。

11月20日:楽天証券PRESENTS 先取りマーケットレビュー

出所:YouTube