カネの切れ目は縁の切れ目。愛情豊かな家庭でも、うまくいかない家計には不幸が忍び寄るものです。このシリーズでは、本当にあった家計の事件を取り上げ、やってはいけなかった行動と、解決の手段を紹介します。

お悩み

共働き夫婦に待望の子ども誕生! 幸せの絶頂のはずが…

吉田雄介さん(仮名)会社員・36歳(家族:妻30歳、子1歳)

「これまでもぜいたくなどせず無理のない生活をしていたつもりなので、お金の心配は特にしていなかったんです。計画的に貯蓄もできていたはずなのに……」

 そう言って頭を悩ませているのは、会社員の吉田雄介さんです。

 夫婦共働きで余裕のある暮らし、将来のために毎月少しずつですが貯蓄をしており、そろそろ本格的に資産形成も始めようと考えていました。

 そんな矢先に、待望の長男誕生。このことで家族の絆も深まるばかりでしたが、予想もしなかったことが起こります。

 妻(30歳)が育児休暇に入ると、すぐに家計が赤字体質に。なんと毎月7万円の赤字を計上するまで行き着きました。長男はまだ1歳になったばかり。妻もすぐに職場復帰はできそうにない状況。このままでは「幸せはほど遠い、ジリ貧」だと、雄介さんは戦慄しています。

原因1

将来の家計のシミュレーションが甘かった!

 吉田さんご夫婦は、結婚を機にライフプランを考え、当時の合算収入から、住居費・日常生活費・生命保険料などのバランスを設計したシミュレーションを元に、生活をしていました。

 それなのに、なぜ赤字家計に陥ったのでしょうか。

 実は、以前に立てたシミュレーションが、夫婦共働き時代をベースにしていたもので、現在の収入や支出が変化することを考慮しないまま、生活を続けていたのです。「将来、子どもは欲しい」と考えながらも、出産による収支の変化を想定していませんでした。

原因2

家計の理想と現実のギャップが見えていなかった!

 雄介さんは、節約好きではありませんが、意味のない無駄遣いには目を光らせていました。その半面、将来のためと、住まいや習い事などにお金を出すことは惜しまず、自己研さんにも力を注いでいました。

 そして、子どもが生まれても毎月の固定費は高いままで、余裕のない家計となっていたのです。さらに、貯蓄しながら保険で万が一に備えようと、貯蓄型保険に加入していたため、毎月の支払いが家計を大きく圧迫していたのです。

家計の救済策

固定費と変動費を分けて見直す!

「家計の見直しをしようにも何から手をつけたらいいんでしょうか? これから子ども関連の支出が増えていくと思いますが…」

 家計の見直しの第一歩のコツがあります。固定費と変動費に分けて考えることです。固定費を削減することで、支出を継続的に抑えられるのです。もちろん、金額が大きい支出ほど削減できれば、大きな見直しになりますので、住宅費や基本の生活費を最初にチェックすることになります。

 その中でも、できるだけ生活水準が変わらないものから変えていくことを優先しましょう。理屈では分かっていても、生活水準や習慣を変えることは難しいものがあります。

 また、将来に必要な備えまでなくしてしまうことは、家計見直しの目的自体が本末転倒になることもあり、注意しましょう。

どう変えた?家計のビフォー・アフターチェック

引っ越しで、住居費を大幅削減

 職場へのアクセスや通勤時間を考えて駅近に住んでいましたが、子どもの生活環境を重視し、通勤時間は伸びるものの、乗り換えのない郊外の駅に引っ越すことに。一時的な費用はあるものの、固定費で一番大きい費用なので数カ月で元が取れます。

隠れ支出の整理で、メタボ家計脱出

 週2~3回の外食を1回に減らして、ほとんど使っていないポケットWi-Fiを解約。車も子どもが生まれてから使う頻度が減ったため、売却することにしました。

保険を見直して、運用で資産づくり

 生命保険は、付き合いで加入した二人分の米ドル建終身保険を、思い切って払い済みにして、保険契約内容を切り替えました。解約返戻率が100%を超えるまでは様子を見ることにし、代わりに大黒柱の雄介さんに万が一のことがあったときのため、掛け捨ての死亡保険に加入することに。子どもが大きくなるにつれて、減額、更新をしない方向で備えることにしました。

 そして、もともと生命保険は貯蓄の目的もあったので、差額はつみたてNISA(ニーサ:少額投資非課税制度)で節税メリットを狙いながら運用して、資産形成をしていくように切り替え。余裕ができれば、iDeCo(イデコ:個人型確定拠出年金)も検討に入れることになりました。しかし現状は、老後資金よりも目先のライフイベントへの対策を優先することにしました。

毎月7万円の赤字家計から、4万円超の黒字化に成功!

これからの健全家計維持のコツ

 これから子どもが大きくなるにつれて、支出も増えていくことが予想されるので、少しずつ「被服・美容費」「交際費」の削減や、妻が復職して収入が増えることも視野に入れると良いでしょう。

 無駄のない家計とは交際費や嗜好(しこう)品が少ないことではありません。趣味嗜好は人それぞれですが、ストレス解消や健康維持、自己研さん、家族との思い出づくりのためなど、支出の理由はさまざまだからです。収入に見合った支出は大目に見てあげることも大切ですが、決して背伸びはし過ぎないようにしましょう。