石炭価格の下落が火力発電各社の追い風、電力需要も回復へ

 中国の電力各社(IPP)の石炭在庫が積みあがる中、国内最大の石炭積み出し港・秦皇島における一般炭スポット価格は過去数カ月にわたって緩やかに下落し、ついに長期契約価格を下回る水準に沈んだ。BOCIは燃料コストの軽減と沿海地域における電力需要の回復傾向を理由に、電力各社の19年の好業績を予想。セクター全体に対する強気のレーティングを維持し、個別では引き続き、華潤電力控股(00836)、華能国際電力(00902)をトップピックとしている。

   沿海地域を拠点とする6大電力会社の石炭在庫は、18年10-12月以降、ほぼ一貫して20日分を超える水準にあり、これがスポット価格を段階的に下落させる要因となった。同じような状況にあった12-16年当時、一般炭スポット価格は1トン当たり800元から400元に半減した経緯があった。BOCIは長期契約メカニズムの影響で、スポット価格の変動に対する電力セクターの抵抗力が高まっていると指摘。その一方、スポット価格が年間契約価格の1トン当たり553元を下回ったことで、電力各社がスポット調達を増やす可能性があるとした。また、スポット価格の下落を受け、長期契約価格をめぐる交渉では、電力会社側が石炭生産者に対して優位に立つとみている。

 一方、米中摩擦や電力需要の内陸部へのシフトを背景に、沿海地域の電力各社の設備稼働時間数は19年年初からほぼ一貫して縮小してきたが、こうした中で、10-12月には一般炭消費量がプラス成長に転じた。うち華能国際電力と大唐国際発電(00991)の親会社、中国華能集団と中国大唐集団の消費量は10月から現在までに前年同期比14%増、32%増。過去のデータを見る限り、石炭消費量の変動は上場企業の電力販売量と密接な相関関係にあり、10月以降の販売回復が期待できる状況にある。個別に見ると、華潤電力控股の子会社、華潤電力投資は7-9月期に減収率が縮小。粗利益率は16年10-12月以来の高水準を記録し、純利益は79%の増益だった。過去の事例では、華潤電力控股の石炭火力部門の利益に占める華潤電力投資の割合は約6割に上る。

 中国政府は電力価格の浮動メカニズムを導入する方針。すでに地方政府に対し、11月15日までに同メカニズムに関する報告を提出するよう求めており、まもなくその影響がより明確化する見込み。BOCIは現時点で、マイナス影響は限定的とみている。

 燃料コストと稼働時間数という2つの主要業務指標が改善傾向にある中、市場は10-12月期の利益成長回復を予想している。電力各社の高配当(配当性向40-70%)を理由に、BOCIは向こう数週間にわたるバリュエーションの回復を見込む。一方、レーティング見直しにつながる可能性がある潜在リスク要因としては、設備稼働時間数の低迷、予想以上のコスト増、予想外の多額の減損損失発生などの可能性を挙げている。