日経平均は10月中旬に年初来高値を更新し、2万3,000円に迫る勢いを見せています。しかしながら、個人投資家の体感温度は2万1,000円程度ではないかという解説がよく聞かれます。その理由は、日経平均とTOPIXの乖離が広がり、NT倍率(日経平均÷TOPIXで算出)が27年ぶりの高水準に達しているからです。

一握りの銘柄が日経平均を動かしている

 実をいえば、日経平均はおかしな指数です。たとえば、メガバンクの一角であるみずほフィナンシャルグループ(10月24日の終値166.4円)が破綻して紙くずになったとしても、日経平均への下落寄与度は5円~6円程度にしかなりません。同じように、りそなホールディングス(同472.8円)の株価が1円になったとしても、日経平均は1円程度しか下がらないのです。

 その一方で、ファーストリテイリング(同6万8,440円)がたった1回でもストップ高するようなことがあれば、上昇寄与度は350円~400円にも達します。近年の日経平均に寄与する比率で見ると、ファーストリテイリング、ファナック、ソフトバンク、KDDIの上位4銘柄だけで20%超を占めているのです。上位10銘柄で見ると、その比率は30%超にまで達してしまいます。

 このような状況は、業種別で見るといっそう浮き彫りになります。たとえば、日本経済の屋台骨を支える自動車メーカーでは、トヨタとホンダは1.2%程度、日産は0.2%程度しか寄与度がありません。銀行にいたっては、三菱UFJフィナンシャルグループや三井住友フィナンシャルグループが0.1%程度、みずほフィナンシャルグループが0.05%にも満たないという有様なのです。

世界の主要な株価指数の中で日経平均が特殊である理由

 S&P500指数やナスダック指数、独DAX指数など、世界の主要な株価指数の大半は「時価総額加重平均型指数」です。これに対して、日経平均は時価総額を考慮しない「単純平均指数」であり、NYダウ平均と同じ算出方法となっています。ただし、大きな問題なのは、ダウ採用30銘柄の寄与度格差は数倍以内に収まっているのに対して、日経平均では700倍を超えているという異常な水準にあるということです。

日経平均が上がっても個人投資家の体感温度は低い?

 日経平均と個人投資家の体感温度に隔たりがあるのは、NT倍率(日経平均÷TOPIXで算出)が27年ぶりの高水準に拡大していることが原因です。日経平均採用の一部の値がさ株が買われる一方で、個人投資家が買いやすい株価水準が低い銘柄の多くがそれほど上がっていないのです。10月24日時点のNT倍率は13.81倍と、1992年以来の水準で推移しています。

 NT倍率に上昇傾向が表れる時は、株価が上昇しても個人の体感温度はそれほど高まらないことが多いのですが、今回も例外なくそのような展開になっています。これは、個人投資家がファーストリテイリングなどの値がさ株を持っているケースが非常に少ないことに起因しているのです。おまけに、個人投資家が好む新興市場では、マザーズ指数が2018年の2月に天井を付けて以来、右肩下がりで推移し低迷を続けています。個人投資家の懐具合はそれほど良くないと思われます。

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(中原圭介)

※この記事は2019年10月29日にマネラボサイトで公開されたものです。

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