最近あまり聞かなくなった「PBR」を使った銘柄選び。しかし、ここ最近の割安株優位の状況で、再び評価される可能性があります。その時に向けて今から準備しておきましょう。

PBRとは何か?

 PBRとは、株の割安度を計る代表的な指標の1つ。「株価純資産倍率」という意味です。

 株価が1株当たり純資産の何倍の水準かを表したもので、「株価÷1株当たり純資産」で計算され、単位は「倍」です。

 純資産は株主の持ち分です。したがって、貸借対照表からみた企業価値といえます。これと株価を比べているのがPBRです。

 PBRが高いほど株価は割高、逆に低いほど株価は割安と判定されます。

 もし、PBRが1倍を割り込んでいるならば、株主の1株当たりの持ち分である1株当たり純資産を、株価が下回っていることになります。

 株主が有している価値よりも株価の方が安いわけですから、PBR 1倍割れというのは明らかに株価が割安である、と考えることができるのです。

現在はPBRでみた割安株の「大漁」状態

 このように、教科書的に言えば、PBR 1倍割れというのは、明らかに割安な状況といえます。

 現時点でPBRが1倍を割れている銘柄は、なんと1,750銘柄もあります(2019年10月25日時点)。上場銘柄は約3,700銘柄なので、実に半分近くの銘柄が、PBRからみて「明らかに割安」な状態にあるのです。

 PBR 1倍割れの銘柄がこれほどまでに多い状況、まさに現在はPBRからみれば割安株の大漁状態にあるといえます。

なぜ低PBR株が上がらないのか?

 低PBR株は割安なはずなのに株価がなかなか上昇しない、その理由は「収益力の低さ」です。

 企業の収益力を表す指標として代表的なものがROE(自己資本利益率)です。この数値が高いほど収益力が高いことを表します。

 実は低PBR株の大部分は、このROEが低いのです。ぜひ、低PBR株のROEをチェックしてみてください。

 この連載でもお伝えしてきたとおり、2013年後半から、成長株が圧倒的に強く、割安株があまり買われないという状況が続いてきました。

 成長株の多くはROEが高いです。だから企業成長のスピードも速く、株価も大きく反応しました。

 でも、低PBR株のROEはおしなべて低く、成長性という面からの魅力が乏しいため、株価上昇の蚊帳の外に置かれていたのです。

PBRを使った銘柄選びはどのようにして行う?

 ただ、業績の伸びやROEを重視した成長株が買われる展開に、2018年ごろから少しずつ陰りが見え始めているのも事実です。その代わりに、割安株が買われるという兆候が目立ってきました。

 したがって、今後PBRからみた割安株に注目が集まる可能性も十分にあります。

 それに備えて、どのようにPBRを使った銘柄選びを行えばよいか、筆者なりの考え方を示します。

 筆者が注目するのは、PBRが低く、かつ将来へ向けて企業価値の増加が見込まれるかどうかです。それにプラスして、倒産の可能性が低い銘柄を選びます。

 具体的には「毎年安定的に利益を出している」「配当金も毎年出している」「有利子負債が少ない」という点をチェックしています。

企業価値の増加が見込まれれば株価も上昇する可能性が高い

 例えば、現在PBR 0.4倍で、毎年しっかり利益も配当金も出し、このままの利益のペースだと、15年で純資産が現在の2倍にまで増えると計算される会社があるとします。

 この会社の株価が15年後も上昇していない場合には、株価は同じである一方、純資産が2倍になっているので、PBRは半分の0.2倍にまで低下します。

 さすがに利益も配当金も毎年コンスタントに上げている会社のPBRが0.2倍になるというのはあまり現実的ではありません。

 そのため、もともとのPBRである0.4倍になるまで株価は上昇する可能性が高いと推測されます。

 したがって、この会社の株価は、15年間で2倍になるポテンシャルを持っていると判断できるのです。

 そして、PBRからみた割安感に多くの投資家が注目すると、PBRが0.4倍であること自体にもフォーカスされ、例えば0.8倍くらいまで買われることも期待できます。そうなれば、株価は15年間で4倍になるという可能性もあります。

 くれぐれも、「PBRが低いから」、というだけで銘柄選びをするのではなく、将来の企業価値が増大しそうな銘柄を選ぶようにしましょう。