読者の方から、「やってみたいが何をしたらいいかわからない」との質問が今でもあります。今日は改めて「ふるさと納税」の基礎を解説いたします。

 その前に、まず、6月1日にスタートした新制度の概要を説明します。

行き過ぎた高額返礼品に規制。6月1日より新制度スタート

 ふるさと納税を利用する人は、どんどん増加しています。応援したい自治体に寄付するというよりは、返礼品が魅力的な自治体を選んで寄付するのが、普通となっています。そのため、一部でふるさと納税の趣旨に反する、行き過ぎた高額返礼品競争が起こっていました。

 これを是正するために6月1日にスタートした新制度では、自治体が寄付者に贈る返礼品で、以下は禁止されることになりました。

○寄付額の3割を越える、高額返礼品
○地元産品でない返礼品

 このルールを守らない自治体は、「ふるさと納税」の対象から除外されることになりました。6月以降、除外されることになったのは、以下の4つの市町村です。

○大阪府泉佐野市、○静岡県小山町、○和歌山県高野町、○佐賀県みやき町

 この4自治体に寄付しても、「ふるさと納税」で認められる税額控除は受けられません。

 このほか、過去にふるさと納税ガイドラインに違反した43の市町村は、2019年7~9月の間、仮免許としてふるさと納税の対象に入っていましたが、10月以降、正式に加えられました。7~9月の審査で「問題なし」と判断されたためです。

「ふるさと納税」とは

 ふるさと納税は、自分が応援したい市町村に、実質2,000円の負担で、寄付ができる制度のことです。寄付した自治体から、返礼品が贈られてくる魅力もあります。年収などの条件によって決まる上限額の範囲内で寄付をすれば、寄付額から2,000円を差し引いた金額だけ、ご自身の納税額(所得税および住民税)が減ります。

 たとえば、実質2,000円の負担で5万円まで寄付できる方の場合、5万円を応援したい市区町村に寄付し、寄付金控除の手続きをすると、2,000円を差し引いた4万8,000円【注】だけ、ご自身が納めるべき税金が減ります。5万円寄付すると、4万8,000円分、納税額が減るわけですから、実質2,000円の負担で5万円の寄付を行ったことになります。

【注】「ふるさと納税」を実施し、確定申告を行うと、所得税、住民税(都道府県民税および市町村民税)の納税額が減ります。5万円を寄付した場合、(1)所得税・(2)都道府県民税・(3)市町村民税の納付額の減少額を合計すると、ちょうど4万8,000円となります。確定申告なしで、税額控除を受ける方法もあります。

ふるさと納税で寄付を行う自治体の数が5つ以内ならば、ワンストップ特例制度が使える

「確定申告で寄付金控除の手続きをしてください」と言われても、確定申告した経験の無い方には、とても難しいことです。でも、あきらめる必要はありません。確定申告しなくても、ふるさと納税の寄付金控除を受ける方法があるからです。それが、「ワンストップ特例制度」です。

 1年間に「ふるさと納税」で寄付する自治体の数が5つ以内ならば、確定申告をしなくても、ふるさと納税の寄付金控除を受けることができます。それが、「ふるさと納税ワンストップ特例制度」です。ふるさと納税を行う際に、寄付を行う自治体に、「ワンストップ特例の適用を受ける申請書」を提出する必要があります。

 ワンストップ特例を使う場合は、所得税は減りません。住民税だけで、「ふるさと納税額-2,000円」分、納税額が減ります。先に例に挙げた、5万円まで実質2,000円負担で寄付できる方の場合、5万円をワンストップ特例で寄付すると、確定申告しなくても、4万8,000円だけ、ご自身が納める住民税が減ることになります。

「楽天ふるさと納税サイト」などを通じて、ふるさと納税(寄付)を行う際、「ワンストップ特例申請書の送付」について、「希望する」を選択すれば、後で、寄付をした自治体から、申請書が送付されてきます。

 送付方法は、自治体により異なります。封筒に入れて送ってくることが多いのですが、返礼品の中に一緒に入っていることもあります。送られてきた申請書に必要事項を書き込み、「マイナンバー」関連の必要書類や免許証、パスポートなどの必要書類を添付して返送すれば手続き完了です。返送用封筒は、入っている場合と入っていない場合があります(それも自治体により異なります)。入っていない場合は、自分で返送用封筒を作成して、返送してください。

 寄付した翌年の1月10日までに、申請書が自治体に着かなければならないことに注意してください。2019年のふるさと納税ならば、2020年1月10日までに提出してください。間に合いそうにない場合は、寄付する自治体に相談してください。

 締め切りに間に合わなかったときは、「確定申告」すれば寄付金控除を受けることができます。「ワンストップ特例申請書」の提出が間に合わなかったとき、忘れたときは、「確定申告」しましょう。

 確定申告で寄付金控除を受けるときは、寄付する自治体が何件でも(5件を超えても)問題ありません。

「ふるさと納税」最初の一歩!何はともあれ、まず、ご自身の「寄付上限額」を知ろう

 年収、家族構成、扶養家族の人数などの条件により、ふるさと納税で自己負担額が2,000円を超えずに寄付できる「寄付上限額」が決まります。その上限額を知らないことには、ふるさと納税は始められません。

 まず、以下の楽天ふるさと納税サイトの「かんたんシミュレーター」から、ご自身がふるさと納税の寄付金控除を受けられる「寄付上限額」の目安を、調べる必要があります。

 楽天ふるさと納税「かんたんシミュレーター」

 ここで、「年収(2019年の見込み額)」「家族構成」「扶養家族」に関する情報を入力していただくと、寄付上限額(目安)が表示されます。

 そこで表示される金額の上限いっぱいではなく、まず一部を使って、ふるさと納税を始めるのが、良いと思います。たとえば、「あなたの寄付上限額(目安)は6万550円」と表示された方でしたら、そのうち、4万円くらい10~11月にやってみても良いと思います。

 確定申告する予定ならば、何件に寄付してもOKです。5,000円の寄付を3つの自治体に行っても良いと思います。ワンストップ特例制度を使うならば、寄付する自治体の数が年間で5件以内となるように考えて、1自治体への寄付額を決める必要があります。

 12月が近づき、2019年の年収額もほぼわかるようになり、寄付上限いっぱいまでふるさと納税を行う際には、「かんたんシミュレーター」ではなく、「詳細版シミュレーター」で、正確に計算する必要があります。

 楽天ふるさと納税「詳細版シミュレーター」

次に、寄付する自治体を選びましょう。ワンストップ特例を使うならば5自治体まで。

 返礼品が魅力的な自治体、応援したい自治体から選ぶのが良いと思います。楽天ふるさと納税サイトを使えば、気に入った返礼品を、自由自在に検索できます。

 同時に、ふるさと納税の寄付金控除を受ける方法を、決める必要もあります。確定申告を行うか、確定申告不要の「ワンストップ特例制度」を利用するか、どちらかです。

 確定申告をしたことがない人は、確定申告が不要の「ワンストップ特例制度」を利用したらいいと思います。そのためには、1年間に寄付する自治体を5件以内にする必要があります。

 医療費控除や寄付金控除などを受けるために、確定申告をしたことがある人は、確定申告によって、ふるさと納税の寄付金控除を受ければ良いと思います。確定申告するならば、寄付する自治体の件数はいくつでも問題ありません。今年は、確定申告する予定がなく、「わざわざ確定申告するのは面倒」ならば、ワンストップ特例から始めたら良いと思います。

次に、寄付する時期を考えましょう。

 次に考えるべきは、寄付する時期です。理想的には、1~3月、4~6月、7~9月、10~12月に分散して寄付する方が良いです。なぜならば、寄付する時期によって、もらえる返礼品が異なるからです。季節に応じた、さまざまな特産品を楽しむことができます。

 多数の自治体に、時期を分散しないで寄付すると、返礼品が一時期に集中する問題もあります。お米のように、保存の効くものならばいいですが、生鮮食料品などは、冷蔵庫に入りきらなくなることもあります。旬のものを、旬のときにいただくには、時期の分散が望ましいと言えます。

 とは言っても、ふるさと納税は、1年単位(1月から12月まで)で、寄付上限額を使わなければなりません。まだ、ふるさと納税をやっていない方は、今年は10~12月に集中してやらざるを得ません。

 10~12月は、ふるさと納税が集中する時期です。寄付上限までの枠を残したままの人が、駆け込みでふるさと納税をするからです。そのため、人気の返礼品は、早めに品切れになってしまいます。10~12月にふるさと納税をするならば、早めにやったほうが得策です。

 複数の自治体に寄付するならば、12月の返礼品ばかりにならないように、せめて、10月・11月・12月に分散して寄付したほうが良いと思います。

 今年、ふるさと納税を10~12月に集中させてしまうことになる人は、来年からは、ぜひ1~3月、4~6月、7~9月、10~12月に分散して、寄付するように計画しましょう。