5G開始まで穏やかな競争環境持続、7-9月にはサービス収入がプラス成長回復へ

 中国の通信サービス市場では向こう2-3四半期にわたり、相対的に穏やかな競争環境が続く可能性が高い。通信キャリア間で5Gネットワークを共有するとの計画が市場のダイナミクスを大きく変えるとみられ、キャリア各社はこれまでより、収益重視の姿勢を強める見込み。BOCIはキャリア3社の株価の先行きに対していずれも強気の見通しを付与し、うちチャイナ・モバイル(00941)をトップピック銘柄とした。同社に関しては、短期的には収益減速圧力が続くとしながらも、香港ドル建ての高配当期待が大きいとしている。

 中国本土の通信キャリア3社は、向こう2週間以内に19年7-9月期決算を発表する予定。BOCIは緩やかな競争環境を背景に、各社が5Gサービスの始動に先立って収益重視の姿勢を強めるとし、7-9月の通信サービス業界全体の売上高がプラス成長を回復するとみている。売上高に関する予想値は前年同期比2.3%増の3,225億元。データローミング料廃止の影響で19年上期にマイナス成長となったモバイルサービス収入が、7-9月に同1%の伸びを確保するとみられることが全体の増収に寄与する見通しという。また、7-9月の固定サービス収入については同6.0%増を見込む。

 一方、BOCIは5Gネットワークの始動時期がさらに先送りされる可能性に言及している。ネットワーク共有を計画しているキャリア側の要求を受け、設備ベンダーがシステムの設計や試験により多くの時間を費やしているためで、これが短期的に、キャリア各社の採算性にプラスに作用する可能性がある。

 BOCIはキャリア3社の7-9月期決算を以下のように予想している。◇チャイナ・ユニコム(00762):前年同期比182%の大幅なコア増益を達成する見込み。「混合所有制改革」(民間資本の受け入れ)から2年を経て、モバイル事業が大きく改善したことが背景。◇チャイナ・モバイル(00941):モバイル収入のシェア後退で、コア利益は前年同期比横ばいとなる見込み。◇チャイナ・テレコム(00728):コア利益が同5%減の44億元となる見込み。サービス収入伸び率は1.2%に減速する可能性が高い。

 BOCIは通信キャリア3社のほか、設備・通信サービスプロバイダーの中国鉄塔(00788)、中国通信服務(00552)、中信国際電訊(01883)の株価の先行きに関しても強気であり、通信セクター全体に対し、強気のレーティングを付与している。一方、レーティング見直しにつながる可能性がある通信キャリアの潜在リスク要因としては、年内にも予定される「携帯電話の番号ポータビリティの全面実施」を挙げ、これが価格競争を誘発する可能性に言及している(番号ポータビリティは今のところ一部エリア限定で導入されている)。