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 10月10~11日にワシントンで米中閣僚級貿易協議が開催されました。米中貿易摩擦の長期化から世界経済減速への懸念が高まる中、双方が歩み寄りを見せて合意に至るかが注目されましたが、中国側が(1)米国産農産物の輸入拡大、(2)為替制度の透明性向上、(3)金融サービスの市場開放拡大を実施することと引き換えに、米国の10月15日発動予定の対中追加関税引き上げが見送られることとなりました。

【ポイント1】米国からの農産物輸入拡大などで『部分合意』

10月15日の対中追加関税引き上げは見送り

 10~11日に開催された米中閣僚級会議では、中国が米国から大豆や豚肉などの農産物輸入を拡大することと引き換えに、米国が10月15日に予定していた2,500億ドル分の中国からの輸入品への追加関税引き上げを見送ることで合意しました。協議を3段階に分割し、まずは第1段階の『部分合意』に至った形となります。また、中国国内で既定路線となっていた為替取引の透明性向上、金融サービスの開放についても合意しました。

 一方、12月15日に予定されるスマートフォンやパソコンなどを対象にした1,600億ドル分に対する対中追加関税引き上げについては今回での合意には至らず、今後検討されることになりました。

【ポイント2】本質的な議論は先送り

『部分合意』に至ったのは、来年の大統領選挙に向けて実績を作りたいトランプ米大統領と、景気減速による成長率低下に歯止めをかけたい中国側双方の思惑が一致したためです。中国は加えて、国内で品薄のため価格が上昇している豚肉の輸入拡大をはかりたい意図があったとみられます。

 一方で、企業や産業への補助金を含めた中国の産業政策など、米中が互いに鋭く対立する構造問題に関する議論は第2弾以降へと先送りされることになりました。

【今後の展開】正式署名後、協議継続へ

 今回の合意内容は、11月に開かれるアジア太平洋経済協力(APEC)首脳会議でトランプ米大統領と習近平中国国家主席による首脳会談の場で正式に署名される見込みです。

 米中交渉が決裂し関税がエスカレートするという最悪の事態は避けられることとなり、金融市場では、協議の進展はおおむね好意的に受け止められています。ただし、第2弾で協議される企業や産業への補助金を含めた中国の産業政策などは中国が容易に妥協できない分野であり、交渉はスムーズに進まないと予想されるため、米中対立が解消に向かうかは依然として不透明です。そのため、引き続き協議の動向が注目されます。