泉佐野市VS総務省が勃発

 大阪府泉佐野市が豪華な返礼品を提供して、ふるさと納税の寄附を集めていたことが話題となりました。

 実は、私も泉佐野市の豪華な返礼品やアマゾンギフトカードにそそられて、何回か泉佐野市に対してふるさと納税を行いました。

 しかしながら、ふるさと納税集めを問題視した総務大臣により、地方税法が改正され今年6月1日からは、返礼品を3割以下とすることや地場産品以外を提供しないことが決定しました。

 泉佐野市は6月1日以降もふるさと納税の対象団体となるべく、総務大臣に申請を出していましたが、総務省は泉佐野市をふるさと納税の対象団体として指定しませんでした。

 これを不服として泉佐野市が国地方係争処理委員会に審査の申出を行いました。

 そして国地方係争処理委員会は9月3日付で泉佐野市の申立てを一部認め、総務大臣に対し、泉佐野市に対する不指定について再度の検討を行うよう勧告したのです。

※国地方係争処理委員会とは
 国地方係争処理委員会とは、国と地方公共団体との間にトラブルが生じたときにそのトラブルを解決することを目的として総務省に設置されている合議制の第三者機関。
 国地方係争処理委員会は、国会の同意を得て、総務大臣が任命した5人の委員で構成される(顔ぶれを見ると学者が中心)。国地方係争処理委員会は総務省内に設置されていますが、一応、組織上は独立しており公正中立な判断ができるように担保されている。

 国地方係争処理委員会の審査結果に不満がある場合や、国が委員会の勧告に沿って行った措置に不満がある場合には、地方公共団体は高等裁判所に訴訟提起できる。

泉佐野市の言い分

(1)地方自治法247条違反か?

 今回、泉佐野市は30ページ以上にもなる審査申出書をはじめとして、合計5通もの書面を提出。いろいろな角度から総務大臣による不指定が違法ないし不当であると主張しました。

 泉佐野市の主張を分かりやすく整理すると、おおむね以下の主張になります。

総務大臣の不指定が地方自治法247条に違反するのではないか

 地方自治法は地方自治について定めた法律です。法律ですから総務大臣もこれに従う必要があります。

 地方自治法247条3項は「国又は都道府県の職員は普通地方公共団体が国の行政機関又は都道府県の機関が行った助言等に従わなかったことを理由として不利益な取り扱いをしてはならない」と規定しています。

 この点、総務大臣は平成30年4月までに全国の自治体あてにふるさと納税の返礼品について3割以下とすることや地場産品とすることを求めた通知を何回か出していました。ただし、この通知は法的拘束力のあるものではなく、技術的な助言に過ぎなかったのです。

 時系列で見ると地方税法が改正され新制度が適用される今年6月1日以前は、この総務大臣による法的拘束力のない技術的助言しかなく、6月1日以降に初めて法的拘束力のある規制が敷かれたという流れになります。

 そうすると総務大臣の不指定は泉佐野市が法的拘束力のない技術的助言に違反したことを理由になされたものといえ、上記地方自治法の規定に違反するのではないかということです。

(2)法律の委任の範囲を超えた基準となっている?

 次に泉佐野市が主張しているのは、改正後の地方税法が総務大臣に対し「ふるさと納税の募集の適正な実施に係る基準(適正募集基準)」を定めることを委任している(任せている)ところ、総務大臣が定めたこの基準が過度に広範な規制となっており、委任の範囲を超えるものとして認められないのではないかということです。

 すなわち、総務大臣はこの基準の中で平成30年11月から新制度申請までの間に、過度な返礼品を用いて著しく多額の寄付金を受領した団体は除外するとしています。これに対して泉佐野市は新制度の申請に際して、今後は、返礼品を一切提供しないと申し出ていました。それにもかかわらず総務大臣は泉佐野市が過去において過度な返礼品を用いて多額の寄付金を集めていたことから、この過去の実績を重視して、泉佐野市を指定から除外したのです。

 泉佐野市が主張したのは「この総務大臣の対応は、要は過去の時点での実績を基準として判断しており、改正後の法を過去に遡って適用するのと結果的に同じではないか」ということです。分かりやすく例えると過去に前科前歴がある人が、もう絶対に罪を犯しませんと誓っているのにもかかわらず、過去にやったからまた今後もやるだろうという推定で将来に向かって一切信じてあげないイメージです。

 泉佐野市としては、この過去の実績まで含めて評価する適正募集基準が改正後の地方税法が総務大臣に委任した範囲を逸脱し厳しくやり過ぎだと主張したのです。

国地方係争処理委員会の審査結果はどう読めばいい?

 国地方係争処理委員会は9月3日付で勧告を出しましたが、さすが学者さんが書いただけあってなかなか難解な内容になっています。

 国地方係争処理委員会の審査結果を分かりやすく要約すると以下のとおりとなります。

 泉佐野市が主張した1つ目の点、すなわち総務大臣の行為は地方自治法247条違反ではないかということについて、委員会は「外形的には技術的助言に従わなかったことを理由とする不利益な取扱いがなされたものと評価される余地が生じ」と判断しました。

 地方自治法247条違反と断定まではしませんでしたが、違反と評価される余地が生じているよと判断したのです。
 したがって、委員会の勧告はこの限度で泉佐野市の主張を認めたものと評価できます。

 泉佐野市が主張した2つ目の点、すなわち総務大臣の定めた適正募集基準が法律の委任の範囲を超えるものとして認められないのではないかということについて、委員会は「法律の委任する募集適正実施基準の範囲を超えるおそれがある」と判断しました。

 したがって、委員会の勧告は2つ目の点でも一定限度で泉佐野市の主張を認めたものと評価できます。

 上記のとおり国地方係争処理委員会の審査結果は泉佐野市の主張に沿うものでしたが、この勧告を受けた総務大臣の判断は変わりませんでした。
 国地方係争処理委員会は「本決定の趣旨に従い、再度の検討を行う」ことを勧告したのですが、総務大臣は、再度検討したが泉佐野市をやはり不指定としたのです。

 泉佐野市としてはこの総務大臣の決定を不服と考え、今後は東京高等裁判所に訴訟提起。この件は裁判所の判断が下されることになります。 

 仮に裁判で泉佐野市の請求が認められると、ふるさと納税の対象団体に不指定とした総務大臣の処分が取消されますので、泉佐野市はふるさと納税の対象団体となることができます。

 しかしながら、改正地方税法は、返礼品を3割以下とすることや地場産品以外を提供しないとされているため、泉佐野市もそのルールに従わなければなりません。

今後のふるさと納税

 今後は、アマゾンギフトカードなどの換金性の高いものは返礼品から外されてしまうので、ふるさと納税をお得に利用するためにはお米などの生活必需品を狙うのがよいと考えます。

 返礼品の選び方のコツは、株主優待と同じ。優待でも自分で使いやすいものを選ぶこと。私は優待でもお米や食事券を狙うことが多いので、今後のふるさと納税でも同じ路線でいこうと今探しているところです。