今年最後のヤマ場に注目

 10月1日からの中国の国慶節の間、ドル/円はやはり、米国の経済指標に揺さぶられる展開となりました。軒並み数字が悪化(下記詳細【10月1~4日の米経済指標とドル/円の動き】)したことから、NYダウ平均株価は10月1日、2日の2日間で約840ドル下落。米長期金利は1.6%台前半から1.5%台前半へと約0.1%下がり、ドル/円は10月1日の108円台半ばから、3日には106円台半ばまで下落しました。

 ところが、これら指標の悪化を受けて、10月の利下げ期待が高まり、さらに年内2回利下げとの思惑も浮上し、NYダウは3日、4日の2日間で約500ドル上昇。しかし、米長期金利は1.5%台前半でとどまっていたため、ドル/円も106円台後半で先週を終えました。

【10月1~4日の米経済指標とドル/円の動き】

10月1日:9月ISM製造業景況指数は47.8と前月より低下し、2009年6月以来10年3カ月振りの低水準。景気拡大・縮小の判断の境目となる50を2カ月連続で割り込んだことから、米金利の低下とともにドル売りが強まり、1ドル=108円を割り、107円台半ばに下落。NYダウも343ドルの下落

10月2日:民間調査会社の9月ADP民間雇用者数が予想を下回り、8月分も下方修正されたため、米景気後退への懸念が台頭。NYダウは一時600ドル近く下げ、米長期金利が1.60%を割り込む動きにドル/円は107円割れ寸前まで下落。NYダウは494ドルの下落

10月3日:9月ISM非製造業景況指数が2016年8月以来の水準に低下し、米金利の低下とともにドル売りが強まり、106円台半ばまで急落。しかし、米短期金利の低下に伴い、年内の追加利下げ観測が強まると、一時300ドル超安となっていたNYダウがプラス圏まで反発し、ドル/円も107円手前まで買い戻された。NYダウは122ドルの上昇

10月4日:米雇用統計は、非農業部門雇用者数が予想より低く、賃金上昇率も伸びが鈍かったが、失業率は3.5%と約50年ぶりの水準であり、雇用者数の過去2カ月分が上方修正されたことから、雇用統計は「思ったほど悪くない」と受け止められ、株に買い安心感が広がり、NYダウは372ドルの上昇となった。株は週前半の下落の6割近くを取り戻したが、ドル/円は、米長期金利が1.5%台前半でとどまっていたため107円に回復せず先週を終えた

 上記で説明したこれら一連の経済指標は、毎月初めに公表され、注目度が高い指標です。指標発表後は相場が乱高下することが多いことから、今後の参考になると考え、詳細に書きました。

 例えば、先月のISM業況指数は、製造業は悪化したが非製造業は良かったため、ドル/円は円高から円安へと戻す相場となりました。今月は、先月と同じパターンとの見方が大勢でしたが、両方とも悪かったため、景気減速懸念が高まり、ドル/円は急落しました。

 ドル/円は、106~108円のレンジから107~109円のレンジに入るかと思えば、これら一連の経済指標の悪化によって、再び106~108円のレンジに入りました。しかも、108円台半ばでダブルトップの痕跡を残して、レンジが下がりました。

最大の注目材料である米中閣僚級通商協議の進展は?

 今週、最大の注目材料である米中閣僚級通商協議が10~11日に開催されます。協議の結果次第ではFRB(米連邦準備制度理事会)の金融政策にも影響を及ぼす可能性があるため、今年最後のヤマ場になるかもしれません。そしてレンジの上限である109円方向に上抜ける、あるいは下限である106円方向に下抜けるきっかけとなるかもしれません。

 トランプ米大統領の支持率は、ウクライナゲートに絡む弾劾調査で下がってきています。

 また、株も一時より勢いがないため、協議開催前のトランプ大統領は強気ですが、通商協議では強い姿勢で臨まないのではないかとも言われています。従って協議開催前から期待が高まるかもしれませんが、11日の結果を見るまではどのような状況になるのか分からず、注意してマーケットに臨む必要があります。

 もし、通商協議が合意に達すれば、世界経済のリスク要因が後退するため、今月末のFOMC(米連邦公開市場委員会)の利下げは見送られるのではないかとの見方が強くなり、「合意」と「利下げ期待の後退」によってドル高に勢いがつく可能性があります。

 一方で、部分合意や暫定合意は認めないとのスタンスも示しているため、物別れの可能性もあります。また、通商協議で香港の問題について「人権カード」を切ってくる可能性もあり、その場合、協議自体が進まないというシナリオも想定されます。協議物別れの場合、世界経済のリスク要因が払拭されず、不透明感が増したとの見方からFOMCでの利下げ期待は高まり、ドル売りが強まる可能性があります。

 つまり、10~11日の米中通商協議の結果次第では、米国金融政策の思惑が加わり、「合意と利下げ期待後退」によるドル高で109円を抜ける、あるいは、「協議決裂と利下げ期待」でドル安に動き、106円割れを目指す動きになるかもしれません。

 また、もし、制裁関税引き上げの先送りを含め、部分合意や暫定合意となれば、マーケットは中途半端な結果と捉え、一時的にポジティブに反応しても消化不良になる可能性があります。その場合、今年のドル/円はこのままレンジの中で動意の乏しい地合いで終わり、その場合はドル/円もユーロも史上最低の年間値幅になるかもしれません。