※本記事は2011年5月2日に公開、改訂したものです。

金投資は現物だけでなくETFという選択肢も

 最近も史上最高値を更新するなど、金価格の高騰が続き、金投資に対する個人投資家の関心も高いようです。そこで、今回は金投資についての基本的事項についてご説明します。

 金投資にはいくつかの手法があります。金の地金(じがね)などを直接購入する現物投資、毎月一定額を積み立てて少しずつ金の現物を購入していく純金積立の他、金価格に連動したETF(上場投資信託)もいくつか設定され、人気を集めています。それ以外に、金先物への投資という方法もありますが、商品先物取引はリスクも高いため、上級者以外の方は無理に手を出さないのが無難です。

 現物を手元に置いておきたいならば、現物投資として金の地金を購入することになりますが、盗難や紛失のリスクがありますし、購入にはまとまった金額が必要です(現在は1キログラムだと500万円以上)。純金積立や金ETFへの投資であれば、手元に現物を持たずに投資できますし、数千~数万円と少額の資金で金投資ができるのが魅力です。

 そして、後述する税制面の点や、いつでも市場で売買できるという手軽さを考えると、金ETFはより使い勝手の良い投資手法といえます。

金ETFの選び方や注意点は?

 金ETFにはいくつかの種類がありますが、以下の観点から選んでいくとよいでしょう。

売買高

 これは株式の個別銘柄に投資する場合と同じですが、売買高が少ないと、好きな時に買ったり売ったりすることができません。最悪の場合は買い手がつかず売ることすらできないという恐れもあります。できるだけ売買高の多いものを選ぶようにしましょう。

金の現物を投資対象としているのかどうか

 ETFの中には、金の現物を投資対象にしているタイプのものと、金価格に連動した債券を投資対象にしているタイプのものがあります。

 後者の場合、債券を発行している会社が破たんした場合、金価格に関係なくETFの価値が大きく毀損されるという追加的なリスクを負っている点に注意が必要です。

価格の推移(チャート)

 金ETFは金価格に連動した価格形成がされますから、どのETFでも値動きはほぼ同じになるはずです。しかし、いくつかのETFの過去の値動きを比較してみると、結構バラツキがあることが分かります。各ETFのチャートを比較して、過去の運用成績が高いものを選ぶとよいのではないかと思います。

 一定の口数に達すると、実際の金の現物への交換が可能なETF[純金上場信託(1540)]もあります。交換は1キログラム単位で、ETFは1口約1グラムのため、2019年10月4日時点で1,042口以上(現在の時価で518万円ほど)保有している必要がありますが、少しずつETFを購入していき、やがてはそれを現物に交換できると思えば夢も広がりますね。

金投資の注意点

 金投資が株式投資と異なる最大の点は、「利息や配当金がつかない」ことです。金の価格が上昇しなければ、金投資で利益を得ることはできません。

 したがって、資産運用の中核として積極的に利益を狙うというよりは、万が一のときに備えて資産を守るために金投資するという位置づけになるのではないでしょうか。

 もし将来急激な円安になれば日本円の価値が大きく下がりますが、円の下落によって金価格は上昇します(金価格は米ドル建てのため)から、金の保有が円の価値の目減りを防いでくれます。

 なお、値上がり益しか利益が見込めないのですから、価格が高い時に一度にたくさん買わないようにしたいものです。現在のように金価格が高いときは、万が一のときの備えとしてまず必要最小限を買い、価格が大きく下がったら追加で買うという戦略も一法です。

金投資における税金の取り扱いは?

 手持ちの金地金や、純金積立で積み立てた金の現物を売却する際に生じた売却益は、総合課税の譲渡所得として課税対象となります。他の所得の状況によって税率が異なるため、人によっては数十%の税率となる場合もあります。純金積立の場合、頻繁に売買を繰り返している人は雑所得(総合課税の譲渡所得より不利)として取り扱われる可能性もあります。不明な点があれば税務署や税理士に相談するようにしてください。

 一方、ETFの売却益は上場株式と同じ扱い(分離課税の譲渡所得)となり、現在は税率20.315%です。このように、ETFは現物への金投資に比べて税金面でも有利といえます。