会社員とその扶養家族は健康保険に加入し、公務員とその扶養家族は共済に加入します。
一方、自営業者とその扶養家族等は国民健康保険に加入します。
健康保険と国民健康保険は、名前だけで見れば「国民」が入るか入らないかだけの違いですが、会社を辞めて国民健康保険に加入した人は、「保険料が高い」とびっくりする人が多い。今回は国民健康保険の保険料について健康保険と比較検討してみたいと思います。
国民健康保険は無収入の家族も保険料がかかる
会社員が加入する健康保険には被扶養者という制度があります。
収入130万円未満(60歳以上の者や一定の障害者は180万円未満)の扶養家族は、被扶養者として保険料負担なしで加入できますので、無収入の赤ちゃん、子どもや専業主婦には保険料はかかりません。
一方、国民健康保険には被扶養者という制度はなく、無収入の赤ちゃん、子どもや専業主婦にも保険料がかかります。
国民健康保険の保険料は市(区)町村によって異なりますが、概ね均等割、所得割に応じて計算されます。
均等割とは「頭数」のことをいい、被保険者が1人であれば1人分、4人であれば4人分の保険料がかかります。
たとえば、2019年度の東京都世田谷区の国民健康保険の均等割は5.22万円(40歳以上65歳未満は6.78万円)ですので、40歳代の夫婦と子ども2人である場合、均等割は24万円となります。
国民健康保険の所得割は住民税以上の負担感
所得割は所得(もうけ)、一般的には「旧ただし書き所得(総所得金額等-33万円)」をもとに計算されます。
東京都世田谷区の国民健康保険の所得割の保険料率は9.49%(40歳以上65歳未満である場合、11.25%)。
ちなみに、住民税の所得割は所得控除後の課税所得の10%。
国民健康保険の保険料は所得控除前の金額に課されるため、住民税よりも国民健康保険のほうが負担が重いと感じられます。
事業所得が273万円(旧但し書き所得が240万円)である場合の保険料は240万円×11.25%=270,000円。1カ月換算で22,500円。
事業所得273万円を月額換算すると約22万円。国民健康保険料の負担が重く感じられます。
以上のケースで、均等割と所得割を合計すると被保険者が40代1人のみでも337,800円、40代夫婦と子ども2人の4人家族であれば51万円となります。
一方、東京都の健康保険の保険料率は9.9%(40歳以上65歳未満は11.63%)で自己負担は半分。
東京都の健康保険に加入する事業所に勤める40歳代の会社員で、
給与(標準報酬月額)が36万円、
ボーナス(標準賞与額)1回あたり54万円、年2回支給、
年収540万円である場合、保険料は以下のとおり。
月給分 36万円×11.63%÷2×12=251,208円
ボーナス分 54万円×11.63%÷2×2=62,802円
合計314,010円となります。
なお、健康保険に加入する場合、被扶養者がいるいないにかかわらず保険料は変わりません。
年収540万円の会社員の健康保険の保険料は被扶養者の人数にかかわらず314,010円
事業所得273万円の自営業者の国民健康保険の保険料は、本人のみが被保険者の場合で337,800円、40歳代夫婦と子ども2人の4人家族であれば510,000円。
自営業者の所得が会社員の給与の半分の場合でも、保険料は国民健康保険のほうが高くなっています。
国民健康保険は高齢者が加入する保険だから保険料が安いというイメージを持つ人が多いようですが、会社員を辞めて、国民健康保険に加入すると、保険料が高いことに驚く方が多いのです。
なお、国民健康保険の保険料には上限額が設定されています。
2019年度は80万円(40歳以上65歳未満は96万円)が上限とされていますが、この上限額を負担している自営業者も少なくありません。
筆者は会社員を辞めた後、自営業として国民健康保険に加入し続けていますが、損得でいえば、会社を起こして健康保険に加入したほうがよいと感じます。
言い換えれば、会社員として働き続ければ国民健康保険に加入することはありません。
また、健康保険の保険料は報酬(月給・ボーナス)をもとに計算され、投資、年金収入は保険料に影響しません。
したがって、投資・年金等の収入が多い人ほど、健康保険の保険料の計算方法は魅力的に映るのではないでしょうか?
年間で数万円~10万円単位の保険料の違いであっても、5年、10年で考えるとその差は決して小さくありません。人生100年時代、働き方改革、老後の資産形成等が取り上げられていますが、その一環として、健康保険と国民健康保険の違いも頭の片隅に入れて、今後の人生設計を検討してみてはいかがでしょうか?
(益山真一)
※この記事は2019年7月7日にマネラボサイトで公開されたものです。
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