対中投資制限

 9月27日(金)に報道された中国に対する投資制限は驚きのニュースです。トランプ米政権が米国の証券取引所に上場している中国株の上場廃止を検討していることが、複数の関係者の話で分かったと報じています。米国から中国企業への投資を制限するための方策の一環で、中国企業の動きに安全保障上の懸念を強めていることが背景にあるようです。ただ、政権内の議論は初期段階で詳細は不明とのことです。

 米中通商協議について楽観的な見方が広がりつつあったタイミングでこの報道が流れたため、マーケットは冷水を浴びせられました。NYダウ平均株価は、報道直前は120ドル近く上昇していましたが、結局、70ドル安で終えています。NY市場に上場する中国株では電子商取引大手のアリババ集団の株が一時7%安と大きく下落しました。ドル/円も1ドル=108.20円近辺まで上昇していましたが、報道後は107.80円近辺まで下落しました。

 その後、米財務省の報道官は電子メールで「政権として現時点で米株式市場での中国企業の上場を阻止することは考えていない」と述べ、ナバロ大統領補佐官も財務省の見解は正しいと報道を否定しましたが、中国企業への投資制限については具体的に触れませんでした。金融市場には安心感が広がりましたが、警戒心は残っているようです。

 米中衝突は、貿易戦争から、ハイテク戦争、そして遂に金融・資本市場への規制にまで及んできたのかと、警戒領域を広げざるを得なくなってきました。

 実際に規制に動けば、中国だけでなく世界の金融市場に大きな影響を及ぼすことを考えると、10月10~11日開催予定の米中通商協議を前にした駆け引きの域を出ないのではないかと思いたくなるニュースです。トランプ大統領もウクライナ疑惑を発端とした弾劾調査絡みで支持率が低迷する可能性があるため、10月の米中通商協議では何らかの成果を示したい意向は強いはずです。

 従って、対中投資規制について米国からこれ以上の言及がなければ、合意への期待が先行し、協議開催前から株高、金利高、ドル高に動くかもしれません。一方で、協議内容が期待外れの可能性も残っているため、実際に明らかになる11日のマーケットは警戒する必要があります。

中国の国慶節と米経済指標

 10月1日から中国は国慶節が始まり7連休となります。従って中国の金融市場は休場のため、対中投資制限についての中国からの反応は、中国当局者からの発言も含めて鈍いことが予想されます。

 従って今週は、中国が国慶節であるため、政治的要因よりも経済要因に左右される相場展開となりそうです。1日に発表された米国ISM製造業景況指数は、予想外の悪化によりドル/円は108円台前半から107円台半ばへと約70銭の円高となりました。

 今週は、まだまだ米国の重要指標が続きます。10月3日(木)にはISM非製造業指数、10月4日(金)には米雇用統計が発表されます。先月のISM景況指数は、製造業では景気の節目である50を割れてリセッション懸念が強まりましたが、非製造業では2008年2月以降で最大の伸びを示したことからリセッション懸念を払拭しました。

 ドル/円はこの2つの数字によって上下に振らされました。製造業景況指数で105円台に下落したドル/円は、非製造業景況指数の発表後は107円台に戻しています。米雇用統計も非農業部門雇用者数と賃金の伸び率が注目されますが、雇用者数の伸びが鈍くても賃金が順調に上昇していれば、ドルにとってはプラス材料となります。

108円台の重要ポイント

 ドル/円は、前回お話しした107~109円のレンジで今のところ動いています。今年の高安の半値水準である108円台半ばまで上昇しましたが、1日(火)のISM製造業景況指数の悪化によって円高に押し戻され、再び107円台にいます。108円台半ばの水準はこの2週間で2回跳ね返されたことから、ミニ・ダブル天井を付けた形になっているため、当面の節目として意識されそうです。

 さらに、その上には、1日に公表された日銀短観の2019年度想定為替レート108.68円があります。前回6月調査の109.35円から円高水準となったため、108.68円以上は本邦輸出企業からのドル売り圧力が強まることが予想されます。そのためこの108.68円も意識されるポイントとなります。

 107円割れ目前で107円の底堅さを示したドル/円は、この先108円を挟んだ展開が続くのか、先程お話した108円台のポイントをこなして109円方向に動くのかどうか、今週の米経済指標、国慶節明けの米中通商協議の動向に注目です。