1.成長する世界のゲーム市場
足元の米国株式相場は引き続き、米中貿易戦争の影響を懸念してもみ合う展開が続いています。そこで注目したいのが、長期的な視点で成長ストーリーが描ける市場です。今回はその中でも最近話題が増えている世界のゲーム市場を見ていきます。
世界のゲーム市場は堅調な拡大が予想されています。市場調査会社のnewzooによると、世界のゲーム市場は1,387億ドル(2018年。1ドル107円換算で約15兆円)。2018年から2022年にかけて年率9%で拡大する見通しです。
世界のゲーム売上高の推移
単位:億ドル
端末別ではスマートフォン(スマホ)向けゲームの構成比が、2018年の35%から2022年には41%に拡大する見通しです。世界的なスマートフォンの普及と、スマホゲーム自体の手軽さが需要拡大に寄与するとみられます。
2.伸びるスマホゲームを狙うアップルとアルファベット
スマホゲームを展開する代表的な企業といえば中国勢のテンセント(00700[香港株])やネットイース(NTES)ですが、最近はフェイスブック(FB)やネットフリックス(NFLX)といった非ゲーム発祥の巨大企業がこの分野を積極的に攻めようとしています。
特に注目したいのが、アップル(AAPL)とアルファベット(GOOGL)の動向です。アップルは2019年9月からサブスクリプション型のゲーム「アップル・アーケード」をスタートし、アルファベットも同じくサブスクリプション型の「スタディア」を同年11月から米国等で部分的にスタートする予定です。この大手2社のサービスは既存のゲーム市場に大きな刺激を与えるでしょう。
「アップル・アーケード」のターゲットは、ゲームを主にスマートフォンで楽しむライトユーザーとみられます。独自のゲーム約100タイトルを、「iPhone」等アップルのハードウェアから自由にプレイすることができ、利用料金は月額600円です。
ゲームの特徴は、基本的に追加課金が発生せず、広告表示もない点にあります。この2点があるために従来のゲームアプリから一定の距離を取っていた人々、特にファミリー層を取り込むチャンスを作りました。「アップル・アーケード」のファンが広がれば、アップルのハードウェアの売上げにもプラスの効果が期待できます。
「スタディア」のターゲットも、スマートフォンユーザーをターゲットにしていると考えられます。同サービスでは、同社のスマートフォン「ピクセル」や、ブラウザ「クローム」を搭載したPCから、月々9.99ドル(1ドル=107円換算で約1,070円)で高画質ゲームをプレイできる予定です。ただし、2019年11月時点では、映像配信用の端末「クロームキャスト」に対応したテレビ中心のサービスになる予定です。
特徴は、高画質のゲームが、インターネットのストリーミングを通じて手軽に遊べる点にあります。これまでは、専用のゲーム機を準備する必要があった本格的なゲームが、最終的には、PCやスマホ一つでプレイできるようになる見込みです。可能にしているのは、アルファベットのクラウド向けデータセンターです。ハイスペックなGPU(画像処理装置)を搭載したデータセンターが重いデータ処理を行うことで、ユーザーの端末には負荷がかかりにくい仕組みになっています。
なお、同社はゲーム動画などを展開する「ユーチューブ」も展開しているため、今後はその動画を活用して視聴者をプレイヤー側に変える施策にも期待が持てます。
3.クラウドと5Gでゲームはさらに進化か
将来的には、重いデータを処理できるハイスペックなクラウド機能と、5Gによるネット速度の上昇によって、ゲームの世界はさらに進化していくでしょう。例えば、多数のプレイヤーが一度に同じゲーム空間で遊ぶといった新しいタイプのゲームが実現される可能性があります。
「スタディア」以外でも、クラウドサービスに強みを持つマイクロソフト(MSFT)が、ストリーミング型のゲーム「Project xCloud」構想を立ち上げています。ゲームがクラウドベースの戦いとなれば、世界的にクラウドサービスを提供するアマゾン・ドット・コム(AMZN)、アップルにも商機があると考えられます。
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