国民年金の未納部分はさかのぼって納められることは広く知られていることでしょう。

 しかし、どのくらい前までさかのぼって納めることができるのか? そこまでご存じの方は少ないと思われます。将来もらえる年金を少しでも増やしたい。だから今からさかのぼって納付したい。そう思った時にはすでに遅かった、というケースもあります。そこで今回は国民年金の未納部分についてのお話しをしておこうと思います。

国民年金の未納部分。さかのぼって納められることは知っているけど……

 公的年金がもらえる年齢に近くなった方から「年金を少しでも増やしたい」というようなお話をされることがよくあります。将来は年金だけで生活をすることになるかもしれないと考えると、今のうちに少しでも多くもらえるようにしておきたい、というお気持ちはよくわかります。ご相談の中には、国民年金の未納部分を今からさかのぼって納めて年金を増やしたい、というものがあります。

 皆さんの中にも、学生や就職する前の若い頃に国民年金を納めていなかった、一度退職し再就職するまでの間に免除手続きなどをせず国民年金を納めていなかった、などという方がいらっしゃるかもしれませんね。国民年金の保険料は納めないと未納という状態になります。未納ですからその期間は年金が増えません。

 ただし、国民年金の未納部分はさかのぼって納めることができます。この「未納部分はさかのぼって納めることができる」いうことをご存知の方は多いと思います。しかし、実際にお話を聞いてみると「ずっと昔まで納めることはできないのでしょうか?」や「確か5年前? いや10年前まででしたっけ?」などとあいまいな方が多いと感じます。ですが、公的年金も法律がよく変わるのでそれは仕方がないことだと思います。

未納部分は何年前までさかのぼって納付できるの?

 国民年金の保険料は納期限から2年で時効になります。これを言い換えると、今から2年1カ月前までの未納部分はさかのぼって納めることができますよ、ということです。もう少し具体的な数字で見てみましょう。

 例えば現在が2018年12月だったとします。そこから2年1カ月前までとは2016年11月。ここまでの未納部分はさかのぼって納付が可能です。2016年10月以前の部分は時効になってしまうので、さかのぼって納付できませんよ、ということになります。

 しかしこの2年1カ月という期間は長いようで短い。あっという間です。気づいた時には遅すぎて年金額が増やせなかった、年金をもらう権利を満たすためにもっと前まで納付したい、というニーズも確かにありました。そこで2012年10月1日から2015年9月30日までの間に限り、特別に2年の時効を10年に延ばすことにしました。

 つまり2015年9月30日までに納付を完了させる場合は10年1カ月前までさかのぼることができたのです。ちなみに今は2015年ではありませんから、もう10年1カ月前までさかのぼって納付することはできません。その後、2015年10月1日から2018年9月30日までの間は時効が5年に変更。そして2018年10月1日からは時効が2年になり本来の姿に戻りました。

 表からも分かる通り、現在は2年1カ月より前の未納部分は時効になってしまいます。仮にずっと昔に国民年金の未納部分があっても、さかのぼって未納部分を納めることはできません。未納のまま何もすることができない状態になってしまいます。

未納部分はさかのぼってでも納付したほうがよいのか?

 よくあるご質問の一つに、時効になっていない未納部分は納付したほうがよいのか? というものがあります。結論からいうと、納付できるなら納付したほうが望ましい、となります。

 その理由の一つは受け取れる公的年金の内訳にあります。公的年金のお金は、半分が保険料、半分が税金です。未納の期間は年金がもらえませんから、その期間分は税金の払い損となってしまいます。もう一つの理由は、最近事情が変わってきた、ということです。

 一昔前までは、国民年金の未納期間があっても国からあまりとやかく言われず、そのまま放っておかれることが多くありました。しかし、最近はちょっと違います。国民年金の保険料を未納のままにしておくと、催告状や督促状が届くようになりました。このような手紙が届くと保険料の2年の時効は停止に。無視し続けると延滞金が課されたり、最悪の場合は財産を差し押さえられてしまったりもします。

 ですので、最近は未納のまま放っておくこと自体が難しくなってきました。少しお話しが逸れてしまいますが、催告状などが届いた方は、無視せずに役所や年金事務所へ相談に行くようにしましょう。免除申請や猶予申請の相談もできます。

 最後になりますが、損得のお話しもよく出てくるので少し計算してみましょう。国民年金の保険料は1カ月当たり約16,000円(2018年度は16,340円)。1カ月納付すると将来もらえる年金(老齢基礎年金)は、年額で約1,600円増えます。支払う保険料をもらえる年金額で割り算すると16,000円÷1,600円=10年。ざっくりですが約10年で元が取れることになりそうです。65歳から老齢基礎年金をもらうとすると10年後は75歳です。厚生労働省によれば、男性の平均寿命は81.09年、女性の平均寿命は87.26年となっています。

参考:厚生労働省「平成29年簡易生命表の概況」

 もちろん自分が何歳まで生きられるかは誰にも分かりませんが、平均寿命まで生きられたとすると、払い損になる可能性は低いかもしれませんね。

 国民年金の未納部分は2年1カ月前までさかのぼって納付することができます。さかのぼって納付できるのであれば納付しておいたほうが望ましいでしょう。仮に納付が難しかった場合でも未納のままに放置しておかず、役所や年金事務所で免除や猶予の相談をしておきましょう。

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(浜田裕也)

※この記事は2018年12月23日にマネラボサイトで公開されたものです。

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