10月1日、消費税率が2%引き上げられ、消費税が「10%」になった。

 今回の増税は、酒類を除く飲食料品の税率を8%に据え置く「軽減税率」とキャッシュレス決済による「ポイント還元」が導入される。ここで注目したいのは「キャッシュレス決済」というキーワード。

楽天ペイメント株式会社 ペイメント戦略室長 小山幸宏 

 楽天カード、楽天Edy、楽天ペイでキャッシュレスを牽引している楽天グループ。

 今回は、楽天ペイメント株式会社ペイメント戦略室長小山幸宏に、国を挙げて取り組むキャッシュレス決済は、利用者、店舗にとってどのようなメリットがあるのか聞いた。

 

 

 

コンビニ大手では2%のポイント即時充当が受けられる

 キャッシュレス決済による「ポイント還元」は、10月1日から2020年6月末までの間、対象店舗(ポスターやステッカーが掲示されている)で買い物や飲食をしてキャッシュレス決済により支払うと、小売・飲食・サービスなどの一般の中小店舗では5%、中小・小規模事業者に該当するフランチャイズチェーンやガソリンスタンドでは2%の還元を受けることができる。

 楽天市場のようなECサイト上の中小店舗も対象だ。

※キャッシュレス決済とは現金を使わず、クレジットカード、デビットカード、電子マネー、QRコード決済で支払うこと。ポイントはカード会社などから付与され、3,000億円と見積もられている費用は国が負担する。

ポイント還元について話す小山

 経済産業省によると加盟店登録申請数は約58万件(9月5日時点)という。対象となる中小事業者は約200万店といわれているので、現時点では4分の1の店舗でポイント還元が受けられる見通しだ。

 ポイント還元の計算はこう。5%還元となる中小規模の店で商品価格1,000円の商品を買うと、消費税は10%相当の100円なので、税込価格は1,100円となる。ここから5%還元が受けられるので、ポイントは55円分となる。2%還元となる中小・小規模事業者に該当するフランチャイズチェーン店舗、ガソリンスタンドでは、税込価格は1,100円に対して2%相当の22円が還元される。

 セブン-イレブン、ファミリーマート、ローソン、ミニストップの大手コンビニは、会計時に2%分のポイントを即時充当する方式を採るため、税込価格1,100円の商品を買うと、2%に相当する22円のポイントが即時充当され支払いは1,078円になる。

 なお、先日楽天ペイは10月以降、全店舗で5%還元となるキャンペーンを発表した。これによって、10月以降は大手コンビニで楽天ペイを使って商品を購入する場合、コンビニの即時充当2%に加え、楽天ペイのキャンペーンによる5%還元、さらに楽天ペイに楽天カードを紐づけるとプラス1%のポイント還元を受けることができ、約8%の還元になるというから驚きだ。

消費者も事業者も約8割がキャッシュレス化を望む

 キャッシュレスの利用率を高めるため、キャンペーンを各社こぞって行っているが、消費者や加盟店のキャッシュレス決済に対する関心は高まっているのだろうか。

 楽天ペイメントの小山によると、「世の中のキャッシュレス決済に対する理解の高まりとともに関心も高まっていると感じています。消費者の方からも、加盟店様からも、『キャッシュレス決済は現金支払いよりも便利』という声が届いています」

 その声は上記のようにデータに裏付けされている。

 また、店舗の会計担当者が「キャッシュレス決済があった方がいい」と考えている割合はコンビニ83%、居酒屋79%、タクシー75%というように業態を問わず高かった。

「なぜ便利なのかというと、現金の受け渡しがなくなることで会計に時間がかからなくなり、お客さまがレジで待つ時間が短縮されるからです。しかしキャッシュレス決済のメリットはレジの効率化だけではありません。加盟店様にはマーケティング的な効果が期待できます。レジの効率化+本業の商売に役立てることができるのです」

 キャッシュレス決済の比率が高いほどレジの効率化が高まるが、完全キャッシュレス化にしてしまうと、逆にお客は不便に感じて離れてしまうのではないだろうか。

 楽天ペイメントでは2019シーズンから東北楽天ゴールデンイーグルスの本拠地「楽天生命パーク宮城」とサッカーの「ノエビアスタジアム神戸」で完全キャッシュレス化の実験を行っている。

 「ここでは現金は使えませんが、楽天グループが提供している全てのペイメントサービスと、指定の各社クレジットカードやデビットカードが使えます」と小山。

キャッシュレスはますます進むだろう

 当初は現金が使えないと売上が減るのではないかという懸念もあったが、小銭を持ち歩く必要がなくなる、会計時のお釣りの間違いがなくなる、会計時の待ち時間が短縮される、飲食店では衛生面の安全性が高まるというメリットの方が大きく、開幕戦から2カ月の売上は、飲食店で前年比19.8%増、グッズショップ20.1%増と好調だという。

 利用者に対する聞き取りでも、キャッシュレスになれていない高年齢層には戸惑いがあったようだが、「分からないことは(スタジアム内に設置された)キャッシュレスデスクで親切に教えてくれた」と、かえって好印象を抱いたようだ。

国は2025年にキャッシュレス決済比率40%を目指す

 PR合戦が繰り広げられていることもあり、キャッシュレス決済と聞くとスマートフォンにQRコードを表示させたり、QRコードを読み込ませたりすることで支払いをするQRコード決済をイメージする。

 しかし「今の段階では、お客さまにとって便利なサービスということでスマートフォンというデバイスを軸にしたQRコード決済というサービスを積極的に展開していますが、これが最終形というわけではありません。導入コストとお客さまの手軽さのバランスが取れているのが、今の時点ではQRコード決済というわけです」と小山。

「楽天グループには、誰もが安心して持てる『楽天ID』があり、これに決済をひも付ける。ひも付ける先はお客さまがいろいろ選べた方がいいので、銀行口座でもいいし、クレジットカードでもいいし、ポイントでもいい。将来は仮想通貨なども含まれるかもしれません。決済時の認証の部分はQRコードでも、フェリカ(非接触ICカード技術)でもいい。もっとセキュアで簡単な方式が開発されればそれでもいい。私たちは今後も改善を重ねて、より良いプロダクトを提供していくことが重要だと考えています」

 改善には利用者の声が欠かせないという。一例を挙げると、利用者の現在地近くで楽天ペイが使える店が地図上で探せるようになったのも、利用者の声を反映させた結果だという。

 経済産業省が2018 年に公表した「キャッシュレス・ビジョン」では、キャッシュレス決済比率を、日本国際博覧会 (大阪・関西万博)が開催される25年までに40%、将来的には世界最高水準の80%を目指すとしている。

「キャッシュレス決済の9割以上がクレジットカードです。楽天カードはカード業界で単体としてはナンバーワンになり、2018年の取扱高はおよそ7.5兆円に達していますが、それでも毎年25%程度の伸び率を示しています。ポジションが大きいクレジットカードでさえ2割を超える成長が望める業界だし、競争も激しく、国のバックアップがあるので、他の決済手段も含めて40%の目標達成は難しくありません。個人的には80%もそう遠くない時期に達成できると思います」

 キャッシュレス決済と聞くと難しく思えるが、クレジットカードや電子マネーなどは、多くの人が日常生活の中で当たり前に使っているはずだ。今はそれにQRコード決済が加わっただけのこと。消費税引き上げのショックを和らげるために導入されたポイント還元をきっかけに、本格的なキャッシュレス生活を目指してみてはいかがだろう。

楽天ペイでは、消費増税が始まる10月1日から、楽天ペイで支払うと全加盟店で5%ポイント還元が受けられるキャンペーンを実施(要エントリー)>>!

教えてくれた人:小山幸宏