特化型ETFとは?

 特化型ETF(上場投資信託)とは、S&P500指数に代表される主要株価指数をなぞることを通じて広く市場全体の動きに投資するタイプのETFを除いた、その他一切のETFを指します。具体的にはセクターETF、債券ETF、不動産ETF、カントリーETF、コモディティETFなどです。

 特化型ETFは、その特徴からポートフォリオの中核に据(す)えるのは不適切と私は考えています。あくまでも補助的な使い方をすべきだと思います。その理由は下記の通りです。

(1)往々にして費用比率が高い

(2)それだけでは十分な分散が得られない

(3)ETFの値動きが荒っぽい

 このように特化型ETFの使い道は限られているものの、工夫をすれば有効な活用ができると思います。

 特に債券、不動産、コモディティなどは株式とは違うため、単にセクター分散や国際分散投資をする以上の、アセットクラスの分散を可能にします。

 選び方のポイントは、出来高が少ないETFを避けるという点です。

 出来高が少ないETFはNAV(純資産)とETF価格の乖離(かいり)が大きいまま放置されるリスクがありますし、そもそもビットとアスクのスプレッドが広く、思い通りの値段でトレードできないリスクがあるからです。また、市場環境の急変などの突発的なことが起こった際も、そのようなETFはこっぴどく売られるリスクがあります。

セクターETFとは?

 セクターETFは特定の業種だけに投資する際に用いられます。ETFによって、米国のセクターだけに投資するETFと、グローバルのセクターに投資するETFがあります。

 米国のセクターだけに投資するETFとしてはステートストリートのセクターSPDRファンドが有名です。

銘柄名 コード 費用比率
一般消費財セレクト・セクターSPDRファンド XLY 0.13%
生活必需品セレクト・セクターSPDRファンド XLP 0.13%
エネルギー・セレクト・セクターSPDRファンド XLE 0.13%
金融セレクト・セクターSPDRファンド XLF 0.13%
ヘルスケア・セレクト・セクターSPDRファンド XLV 0.13%
資本財セレクト・セクターSPDRファンド XLI 0.13%
素材セレクト・セクターSPDRファンド XLB 0.13%
テクノロジー・セレクト・セクターSPDRファンド XLK 0.13%
公益事業セレクト・セクターSPDRファンド XLU 0.13%

 一方、米国だけでなく世界のセクターに投資できるETFはブラックロックが出しています。

銘柄名 コード 費用比率
iシェアーズ・グローバル一般消費財ETF RXI 0.46%
iシェアーズ・グローバル・エネルギーETF IXC 0.46%
iシェアーズ・グローバル金融ETF IXG 0.46%
iシェアーズ・グローバル・ヘルスケアETF IXJ 0.46%
iシェアーズ・グローバル資本財ETF EXI 0.46%
iシェアーズ・グローバル素材ETF MXI 0.46%
iシェアーズ・グローバル・テクノロジーETF IXN 0.46%
iシェアーズ・グローバル公益事業ETF JXI 0.46%
iシェアーズ・グローバル電気通信ETF IXP 0.46%

 なぜセクター別のETFが存在するか? というと、景気の局面に応じてその時々で人気化するセクターが変遷していくことが知られているからです。

 一例として景気が悪くなりつつあるときはヘルスケアや生活必需品などが相対的に良いパフォーマンスを示すことが知られています。セクターETFは、そのようなメリハリをつけた投資を可能にするわけです。

債券ETFとは?

 債券ETFは文字通り債券に投資するETFです。代表的なものには下のような債券ETFがあります。

銘柄名 コード 費用比率
バンガード米国トータル債券市場ETF BND 0.04%
iシェアーズ・コア米国総合債券ETF AGG 0.06%
iシェアーズiBoxx米ドル建て投資適格社債ETF LQD 0.15%
iシェアーズiBoxx米ドル建てハイイールド社債ETF HYG 0.49%
iシェアーズ米国物価連動国債ETF TIP 0.19%
SPDRブルームバーグ・バークレイズ・ハイイールド債券ETF JNK 0.40%

 一般に社債のETFは景気拡大局面では国債のETFよりパフォーマンスが良いですが、逆に景気見通しが不透明なときは国債のETFの方が選好される傾向があります。

 ハイイールド社債のETFには大企業以外の信用力に劣る企業の出す社債が組み込まれています。経営環境が不透明な局面ではそのような企業はデフォルト・リスクが高まると考えられるため、アンダー・パフォームしやすいです。

不動産ETFとは?

 代表的な不動産ETFには次のような銘柄があります。

銘柄名 コード 費用比率
iシェアーズ米国不動産ETF IYR 0.42%
SPDRダウ・ジョーンズREIT ETF RWR 0.25%
SPDRダウ・ジョーンズ・インターナショナル・リアルエステートETF RWX 0.59%
iシェアーズ先進国<除く米国>REIT ETF IFGL 0.48%

 REIT(不動産投資信託)は集合住宅やショッピングモール、さらに倉庫などの家賃収入を生む不動産物件に小口から分散投資できる仕組みです。

 家賃収入の大部分を投資家にペイアウトすることが制度上決められているため、高い利回りになりやすいのです。

 そういう良い点がある半面、家賃収入の大部分を投資家にすぐ還元するということは留保を積み上げられないことを意味し、景気後退局面で空室や家賃の滞納が起こると、それに対する備えがぜい弱になるリスクもあります。

コモディティETFとは?

 コモディティETFは原油や金などのコモディティに投資できるETFです。代表的な銘柄は下表の通りです。

銘柄名 コード 費用比率
SPDRゴールドシェア GLD 0.40%
iシェアーズ・ゴールド・トラスト IAU 0.25%
iシェアーズ・シルバー・トラスト SLV 0.50%
インベスコDBコモディティ・インデックス・トラッキング・ファンド DBC 0.85%
インベスコDBアグリカルチャー・ファンド DBA 0.89%
iシェアーズS&P GSCIコモディティ・インデックス・トラスト GSG 0.75%

 このうちSPDRゴールドシェアは、金に投資するETFとして草分け的存在であり、このETFから初めてETF投資を開始したという投資家も多いです。その理由は金の延べ棒は保管する場所に困るため、ETFのように証券口座で買える投資商品で金価格の値動きに投資できてしまうというのは、極めて画期的なことだったからです。

 iシェアーズ・シルバー・トラストは銀価格に投資できるETFです。これもポピュラーなETFです。

 インベスコDBコモディティ・インデックス・トラッキング・ファンドは、コモディティ全般に投資できるETFです。ヒーティング・オイル(組み入れ比率11.32%)、ブレント原油(11.21%)、ライト・クルード(11.05%)、ゴールド(9%)、小麦(6.86%)、トウモロコシ(6.21%)、大豆(6.20%)などが組み込まれています。

 なお、インベスコDBアグリカルチャー・ファンドは、農産物だけのETFです。

第6章「カントリーETFとは?」はこちら