通信キャリアの5Gネットワーク共有計画、長期リターンの決定要因に

 中国の3大通信キャリアは8月末までに19年6月中間決算を発表したが、この際に最も注目を集めたのは、キャリア間で5Gネットワークの共有を計画しているという点だった。様々な方法が検討されているが、BOCIは実際に共有できれば、各社の利益見通しが大きく変化すると指摘。そればかりか、長期のフリーキャッシュフローや株主利益といった点でも大きなインパクトがあるとした。「全国規模で2つの5Gネットワークが建設される」との想定の下、20-24年の設備投資総額がほぼ3G、4G並みの8,000億-1兆元になるとしながらも、設備投資の対サービス収入比率や対営業キャッシュフロー比率は、3G免許が交付された09年以降、最も低い数字になると指摘している。こうした費用負担の軽減見通しから、BOCIは通信設備・インフラ銘柄より、キャリアを有力視し、3大キャリアの株価の先行きに対していずれも強気見通しを付与している。

 過去のモバイルネットワーク向け設備投資を見ると、3G向けは09-14年に総額1兆1,420億元、4G向けは14-19年に1兆3,280億元。BOCIの分析では、対5G設備投資は20-24年に8,000億元(キャリア各社の計画に基づく数字)から1兆元(4Gの足跡をあてはめた試算値)の範囲となる可能性が高い。

 半面、5G設備投資の対サービス収入比率は20-22年に60-63%。その後は段階的に縮小し、24年には41%と、09年以来最も低い比率になるという。設備投資の低減効果で、通信キャリアのフリーキャッシュフロー(企業が自由に使える現金)は大きく改善する可能性が高い。一方、キャリア間でのネットワークの共有は、通信設備ベンダーやインフラサービス・プロバイダーとっては不利。受注増の余地が限定的となり、両セクターの収益見通しの再調整が必要となる可能性も出てきた。

 実際のところ、共有計画はまだ初期段階にあるが、主に検討されている案は、チャイナ・ユニコム(00762)とチャイナ・テレコム(00728)の2社による共同開発および共有。ほかに、地方部や遠隔地を対象に、チャイナ・モバイル(00941)を含めた3大キャリアが一つの5Gネットワークを共同開発・共有するという方法も検討されている。

 BOCIは3大通信キャリアに対していずれも強気だが、個別では配当面で魅力の高いチャイナ・モバイルをトップピックとし、以下、チャイナ・ユニコム、チャイナ・テレコムの優先順位になるとした。ただ、5G網の共有案が主に、ユニコム、テレコムの2社間であることから、計画の先行きが明確になれば、2社に対する再評価が進むとみている。

 通信キャリア各社の支援材料としては、5Gネットワークの建設計画の明確化を指摘。一方、潜在リスク要因としては、ベンチマークとなる先例がないために、ネットワーク共有に伴う技術面、商業面の手続きが予想以上に複雑化する可能性を挙げている。